GCOMCとは? わかりやすく解説

ジーコム‐シー【GCOM-C】


しきさい

(GCOMC から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/04 18:00 UTC 版)

気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)
所属 JAXA
主製造業者 NEC
公式ページ 気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)
日本
国際標識番号 2017-082A
カタログ番号 43065
状態 運用中
目的 地球観測
設計寿命 5年
打上げ場所 種子島宇宙センター
打上げ機 H-IIAロケット 37号機
打上げ日時 2017年12月23日
10時26分22秒(JST
軌道投入日 2017年12月23日
本体寸法 2.5 m x 2.5 m x 4.6 m
最大寸法 太陽電池パドル展開時:16.5m
質量 2090 kg (推薬含む)
発生電力 4,000 W以上(EOL)
軌道要素
周回対象 地球
軌道 太陽同期準回帰軌道
高度 (h) 798km
軌道傾斜角 (i) 98.6度
降交点通過
地方時
10:30±00:15
搭載機器
SGLI 多波長光学放射計
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しきさいGCOM-C気候変動観測衛星)は、地球の気候変動を光学センサにより観測する日本の人工衛星。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2017年から運用し、地球環境変動観測ミッションGCOMにおいて計画された2機のうちの1機。

2017年12月23日にH-IIAロケット37号機で超低高度技術試験機つばめ(SLATS)と共に打ち上げられた。愛称の「しきさい」は「つばめ」と共に公募を元に決定した。プロジェクト総開発費は322億円[1]日本電気が製造した。

2022年12月に設計寿命の5年を経過したことを受け後期利用に移行、2023年7月にプロジェクト終了が判断され[1]、8月末にGCOMプロジェクトチームは解散[2]、運用主体はしきさい後期利用チームとして再編された[1]。プロジェクト終了審査時点で衛星全体が正常に稼働しており、運用終了後の軌道降下を考慮しても11.5年運用できる燃料が残っている[1][注釈 1]

植生、雲、エアロゾルなどの分布を継続的に観測することで、観測データを気象や水産分野へ利用したり、地球全球の放射収支・炭素循環の正確なモデル化に貢献し将来の気候変動を予測し、政府政策の根拠となる役割が期待されている[1]

観測機器

SGLI

多波長光学放射計SGLISecond-generation Global Imager)は、2つの放射計VNRIRSから構成される。

観測幅はSGLI-VNRで1,150 km、SGLI-IRSで1,400 kmであり、日本付近(緯度 35度)において2 日に1回の観測が可能である。SGLI-VNRに新たに追加された偏光観測機能により、エアロゾルの粒子の大きさが判別できるため、エアロゾルの発生源が推測可能になる。

SGLIはみどりIIに搭載されたGLIの後継センサである。GLIに比べ、地表面分解能が1kmから250mに改善、陸上エアロゾル等を観測するための偏光・多方向観測機能を持つこと等の改善を行っている[3]。GLIセンサが機械走査で大型化・複雑化しすぎた反省から[要出典]観測装置を2系統に分割し、かつ観測チャンネルを絞ることで信頼性と耐障害性を向上させている。SGLI-VNRはもも1号のMESSR、ふよう1号のOPS/VNIR、みどりのAVNIR、だいちのAVNIR-2センサの技術を継承している。

SGLI-VNR

可視・近赤外放射計部SGLI-VNRVisible and Near Infrared Radiometer)は, 直下方向を観測する非偏光観測センサ(NPサブユニット; 11チャンネル)と、+45°方向から-45°方向の範囲で切り替え、多方向観測ができる偏光観測センサ(PLサブユニット; 2チャンネル)から構成されている。検出器にはCCDを用いており、機械走査が不要な電子走査方式(プッシュブルーム方式)の放射計である。非偏光観測センサ(NP)は観測方向の異なる3 本の鏡筒で構成され, それぞれが画角24°で, あわせて合計70°(約1,150 km)の走査幅をもつ。陸域・沿岸では250 mの分解能、外洋域では1 kmの分解能で観測する。偏光観測センサ(PL)は、673.5 nm 用と868.5 nm 用の2 本の鏡筒を用いて、0°, +60°, -60°の3つの方向の偏光面について偏光観測を行う。また、衛星進行方向に対して前後45°の範囲内で任意の角度に設定が可能なチルト機構が実装されている。約1,150km の幅を1 km の分解能で観測する。[3]

SGLI-IRS

赤外走査放射計部SGLI-IRSInfraRed Scanning radiometer)は、地上から受けた光を短波長赤外(SWIR:1.05µm - 2.21µm、4 チャンネル)と熱赤外(TIR:10.8µm、12.0µm、2 チャンネル)に分光し、各々の検出器へ導入する。IRS の走査方式は、走査鏡による機械走査方式(ウイスクブルーム方式)である。0.74 秒間に1 回、地表面を走査し、1 回の走査で観測幅80°(約1,400km)を観測する。[3]

SGLI 観測チャンネル[3]
機器 チャンネル 中心波長 バンド幅 飽和輝度
W/(m2 sr um)
分解能 観測対象
SGLI-
VNR
非偏光
観測
VN1 379.9 nm 10.6 nm 240 - 241 250 m 陸上エアロゾル・大気補正・海色・雪氷
VN2 412.3 nm 10.3 nm 305 - 318 植生・陸上エアロゾル・大気補正・海上エアロゾル・光合成有効放射量・雪氷
VN3 443.3 nm 10.1 nm 457 - 467 植生・海上エアロゾル・大気補正・光合成有効放射量・海色・雪氷
VN4 490.0 nm 10.3 nm 147 - 150 海色(クロロフィル濃度・懸濁物質濃度)
VN5 529.7 nm 19.1 nm 361 - 364 光合成有効放射量・海色(クロロフィル濃度)
VN6 566.1 nm 19.8 nm 95 - 96 海色(クロロフィル濃度・懸濁物質濃度・有色溶存有機物)
VN7 672.3 nm 22 nm 69 - 70 植生・陸上エアロゾル・大気補正・海色
VN8 672.4 nm 21.9 nm 213 - 217
VN9 763.1 nm 11.4 nm 351 - 359 1000 m 水雲幾何学的厚さ
VN10 867.1 nm 20.9 nm 37 - 38 250 m 植生・陸上エアロゾル・大気補正・海色・雪氷
VN11 867.4 nm 20.8 nm 305 - 306
偏光
観測
P1 672.2 nm 20.6 nm 295, 315, 293 1000 m 植生・陸上エアロゾル・大気補正・海色
P2 866.3 nm 20.3 nm 396, 424, 400 植生・陸上エアロゾル・大気補正・海色・雪氷
SGLI-
IRS
近赤外
(SWIR)
SW1 1050 nm 21.1 nm 289.2 1000 m 水雲光学的厚さ・粒径
SW2 1390 nm 20.1 nm 118.9 雪氷面上雲検知
SW3 1630 nm 195 nm 50.6 250 m
SW4 2210 nm 50.4 nm 21.7 1000 m 水雲光学的厚さ・粒径
熱赤外
(TIR)
T1 10.785 µm 0.756 µm 340 250 m 地表・海面・雪氷面温度・火災検知・植生水ストレス等
T2 11.975 µm 0.759 µm 340

脚注

注釈

  1. ^ 観測対象としている気候変動は太陽活動に影響を受け、太陽活動周期が10年から15年であることから、同程度の長期連続観測が重要と考えられている

出典

関連項目

外部リンク



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