B-29搭乗員の取り扱い
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「B-29 (航空機)」の記事における「B-29搭乗員の取り扱い」の解説
日本国内で捕らわれた連合軍搭乗員総数545名 うち遺体で発見29名 爆撃・事故による死亡94名 軍事裁判などによる処刑132名 終戦時に解放290名 B-29の搭乗員に対しては、救出前に日本人に見つかったとしても「万一日本国内に不時着した場合でも、日本の市民の捕虜に対する扱いは至極人道的なものなので抵抗しないように」と説明して不安を和らげようとしていた。しかし、ブリーフィングなどで非公式には「日本上空でパラシュート脱出する場合、軍隊に拾われるように祈るしかない。民間人では、殴り殺される可能性がある」とうわさされていた。1945年3月10日の東京大空襲以後、非戦闘員への無差別爆撃が激化すると、B-29搭乗員は日本の一般市民の憎しみを一身に受けることとなり、まずは、発見した一般市民から私刑で暴虐な扱いを受けることが多かった。なかには能崎事件のように、一般市民によるリンチの末にB-29搭乗員が死亡してしまうこともあった。このため憲兵隊や警察は第一にB-29搭乗員の身柄確保に努めた。しかし身柄確保されても暴行を受けることもあり、軍人や軍関係者が関与し殺されたB-29搭乗員もいた。 日本側はドーリットル空襲ののち、1942年7月28日に陸軍大臣補佐官名で、国際交戦規約に違反した者は戦争犯罪人として扱われるという通達を出している。実際にドーリットル空襲における軍事裁判では、捕虜となった8名全員に「人道に反する行為を犯した罪」で死刑判決が出ている(処刑されたのは3名、あと5名は減刑)。その後、B-29による日本本土空襲が始まった1944年9月8日には、無差別爆撃は戦争犯罪であるので死刑に処せられるべきとの通達が出ている。無差別爆撃をおこなったB-29搭乗員は戦時国際法上の捕虜の扱いを受けず、人道に対する戦争犯罪者とされて略式裁判にかけられ戦時重要犯として処刑されたが、裁判を行うこともなく処刑されることも多かった。B-29搭乗員の取り扱いは、各軍管区に判断を委ねており、中部軍管区や西部軍管区といった日本の中西部の軍管区のほうが、東部軍管区よりもB-29搭乗員に厳しく、多数の搭乗員が裁判内外で処刑されている。処刑されずとも、戦争犯罪人として通常の捕虜とは異なる「特別な扱い」を受けていたB-29搭乗員は、日常的な尋問や暴行に加えて、食事も1日におにぎり3個とコップ1杯の水しか支給されないものもいた。なかには1945年1月27日に東京上空で日本軍によって撃墜されて捕らわれたレイ・F・ハローラン少尉のように、上野動物園の猿の檻に裸で猿の代わりに入れられて見世物にされるといった屈辱的な扱いを受けた搭乗員もいた。一方で、機雷散布任務中に対空砲火で撃墜され福岡県直方市の遠賀川河川敷にパラシュート降下したが、殺気立った市民に囲まれたところを警官2名に救助されて、そののち民間の医師にケガの治療を受けて東京の捕虜収容所に送られ、そのまま終戦を迎えたフィスク・ハンレイのように日本側に手厚い対応をされたことを感謝している捕虜もいる。 1945年5月、福岡県太刀洗陸軍飛行場を爆撃するために飛来したB-29が第三四三海軍航空隊戦闘四〇七飛行隊の紫電改による攻撃によって撃墜された。その時の搭乗員11人中7人が捕らわれ、うち6人は死刑とされ、同年5月17日~6月2日にかけ九州帝国大学医学部において、彼らに対する生体解剖実験が行われた。(九州大学生体解剖事件(相川事件)) 5月26日のB-29による東京への夜間無差別爆撃で収容されていた東京陸軍刑務所で焼死した62名や(東京陸軍刑務所飛行士焼死事件)、8月6日の広島への原爆投下により拘留されていた中国憲兵隊本部で死亡した11名など、B-29の空爆やアメリカ軍艦隊による艦砲射撃など友軍の攻撃で死亡した捕虜も多数にのぼった。 終戦後、B-29搭乗員を含む連合軍捕虜を殺害や虐待した関係者は、横浜に開廷された連合軍裁判所でB・C級戦犯として裁かれた。なかでも、第13方面軍司令官兼東海軍管区司令官であった岡田資中将は、1945年5月14日の名古屋大空襲とそれ以後の空襲をおこなったB-29搭乗員38人を処刑した責任を問われ、B級戦犯として裁かれた。岡田はB-29による無差別爆撃を「米軍による民間人を狙った無差別爆撃は国際法違反である」「搭乗員はハーグ条約違反の戦犯であり、捕虜ではない」と自分の判断の正当性を主張し、裁判を「法戦」と呼んで戦ったが、絞首刑の判決を受けて翌1949年9月17日に処刑された。
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