1969年式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/12 03:50 UTC 版)
1969年式フェアレーン/トリノは内外装の改装は僅かであったが、性能面での改良が顕著に行われた。フォードは典型的なマイナーチェンジとしての小改装を施したが、1969年式の全般的なフォルムは1968年式とそう大きくは変わらなかった。フロントグリルが若干の修正を受け、グリルを上下に分割する横棒がより強調されたデザインとなった。テールライトも1968年式よりも角張った形状に改められた。フェアレーンの全モデルにはリアパネルを上下に分割するアルミニウム製の横棒がデザインに取り入れられた。特にスポーツルーフでは左右のテールライトの後退灯の間を連結するような形でこの横棒が設けられていた。 1969年にフォードが製造した車種は14車種から16車種に増加した。1968年モデルから引き継がれた車種に加え、新たにコブラという名称の2ドアスポーツルーフ(ファストバック)と2ドアハードトップの2車種が追加された。この新しいモデルについて、フォードが当時発行した資料では単にコブラと称するのみで、トリノの名称もフェアレーンの名称も与えてはいなかったが、多くの自動車に関する文献ではトリノのラインナップのサブネームとしてトリノ・コブラと記載される。あるいは、コブラの車体番号にはフェアレーン500と共通のものが割り当てられたため、フェアレーン・コブラと呼ばれる場合もある。車体にもフェアレーンやトリノのネームプレートは付けられてはいなかったが、1969年にNASCARに出走した車両にはトリノ・コブラと書かれていた。 1969年式のエンジンラインナップは僅かに改定された。トリノGTとコブラを除く全てのモデルでは新たにボアアップされた250 cu in (4.1 L)直列6気筒エンジンが標準搭載され、排気量が拡大されたことで前年の200 cu in (3.3 L)エンジンよりも高い最高出力と大きな最大トルクを発生した。オプションエンジンはトリノGT標準エンジンでもある302V8、1969年式の新エンジンである351V8の2Vと4V、そしてコブラの標準エンジンでもある428コブラジェットV8 (CJ) であった。このにはラムエアインテークをオプションで装備できたが、広告上はどちらも同じ出力で掲載されていた。ラムエアー無しの428コブラジェットV8は、80アンペアの高容量バッテリー、3.25:1のオープンデフ、高容量冷却系統、55アンペアオルタネータ、クロームメッキ仕上げバルブカバーとデュアルマフラーなどの装備を含んでいた。ラムエアー付きの428CJはこれらの装備に加えて、オープンデフが3.50:1の最終減速比に変更され、機能的なボンネットエアスクープを装備していた。ラムエアー付きは428 Cobra Jetのエンブレムがエアスクープの両側面に取り付けられ、ラムエアーなしの場合には428のエンブレムがフロントフェンダーに取り付けられた。 428CJのさらに上位のエンジンオプションとして428・4バレルスーパーコブラジェット (SCJ) エンジンが存在した。このエンジンはドラッグレース向けの設定がされており、オプションパッケージはドラッグ・パックと呼ばれ、車台番号Qの428・4バレルまたは車台番号Rのラムエアー付き428・4バレルエンジンと同時に注文することができた。428SCJには、鋳造ピストン、バランサー裏のスナウトに追加ウェイトが付けられた鋳造番号が1UAもしくは1UA Bのダクタイル鋳鉄製クランクシャフト、427ル・マンコンロッドと呼ばれるコネクティングロッド、エンジンオイルクーラー、9インチ (230 mm)外径で3.91:1の最終減速比を持つオープンデフまたは4.30:1の最終減速比を持つデフロック機能付きDetroit Lockerデファレンシャルが装備された。オイルクーラーとデトロイト・ロッカーはフォード独自のものであった。このパッケージを装備してもフォードの広告上では通常の428 CJと同じ出力の335馬力 (250キロワット)として表記していた。 コブラは標準で428・4バレルCJエンジンを搭載し、競技向けサスペンション、4速MTとF70-14サイズのタイヤも装着された。コブラには黒一色のグリルが装備され、ボンネットはボンネットピンで固定された。そしてCobraエンブレムが車体に装着された。初期型のコブラは大きな"Cobra"デカールがフロントフェンダーに貼付されたが、後期には金属製のエンブレムに変更された。フォードはコブラを、低価格な高性能車として成功したプリムス・ロードランナーに対する競合車種として送り出した。このような理由から、コブラは製造コストを低く抑えるためにフェアレーン500よりも低い水準のグレードがラインナップされた。Road Test誌はラムエアー付き428CJと4速M、3.50:1デフを搭載した1969年型コブラのテストで「大排気量エンジンと強力なトルクを獲得したコブラジェットエンジンは、タイヤから白煙を上げて発進する。」と述べた。同誌は、1/4マイル15.07秒、最終地点速度95.74 mph (154.08 km/h)を計時したが、タコメーターが装着されていないことや、純正シフトレバーの操作の難しさも報告しており、「ハースト・シフター(en:Hurst Performance製シフトレバー)さえ装備されていれば、より良いタイムが出せたであろう。」とも述べている。 一方、トリノGTは1968年式からの変更はあまりなく、エンジンは302V8基本型が標準搭載のままであった。フロントグリルは中段の分割バーの形状変更や、GTエンブレムがグリル左下の隅に移動されるなどの小さな変更を受けた。Cストライプは形状変更となり、1968年式のようにボディラインに沿ったものではなく、直線状の形状となった。1969年式の全てのトリノGTにはボンネットにファイバーグラス製のダミーエアスクープが装着された。これは後端にウインカーインジゲータが内蔵されたもので、元々は非ラムエア仕様のコブラのオプション部品でもあった。このダミーエアスクープは428立方インチ・4バルブラムエアー仕様V8を選択することでラムエアインテークとして機能させることができた。ダミーエアスクープを持たないボンネットを選択することも可能であった。トリノGTはコブラ性能上の機能をオプション装備できたが、GTは高級グレードで内装のトリムの品質も高かった。 フォードは更に中型車ラインナップにフォード・トリノ・タラデガという特別な高性能車を加えた。詳細は該当項目とフォード・トリノ#NASCAR参戦車両を参照されたい。 1969年式の生産台数は減少し、129,054台であった。フェアレーンの生産台数を含めると366,911台が製造され、1968年と比べて若干減少した。トリノGTはトリノの中でも最も多くの販売台数で、81,822台だった。コブラを別に計上した生産台数については、フォードは発表していない。
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