録音産業でのキャリア
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「メイナード・ソロモン」の記事における「録音産業でのキャリア」の解説
ソロモンは兄のセイモア・ソロモンと共同で1950年にヴァンガード・レコードを立ち上げた。2人の父から10,000ドルを借り入れて事業を始め、セイモアが会社の社長、メイナードが副社長に就いた。このレーベルは続く15年で訪れるフォークとブルースのブームを牽引する原動力のひとつであった。ソロモンは多くのアルバムを世に出すだけでなく、ライナーノーツ作家としても多くを執筆した。 彼の最初の会社が出した初めてのディクスは、バッハの21番目のカンタータ『わがうちに憂いは満ちぬ』 BWV 21、ジョナサン・スターンバーグ指揮、ユグ・キュエノーら他の歌唱、演奏であった。『ビルボード』誌のジャーナリストは1966年11月に次のように書いている。「その趣味と仕事におけるソロモン兄弟の確固不動たるところを代弁するのは、このレコードがいまだにカタログ内で生きているということである(SC-501)。セイモアが述べるように、容易ではないことだが、頂点を取るのはやはりよい演奏だったである。約480の品目を擁するヴァンガード/バッハ・ギルドのカタログ全体で、30枚がバッハのレコードである(略)」 ヴァンガードのクラシック音楽以外の最初の歌手はウィーバーズであった。このグループの1955年のカーネギー・ホールでのコンサートにより、ヴァンガードは初めて商業的に大きな成功を収めることになった。また、ソロモンはニューポート・フォーク・フェスティバル(英語版)の素材を録音、発売する権利を獲得、これはヴァンガードとは契約を結んでいないアーティストの録音も販売できるということを意味していた。この当時、フォークのアーティストに関してはエレクトラ・レコードが主な競合であった。ニューポート・フェスティバルではフィル・オークス(英語版)、ジュディ・コリンズ、そしてコロムビア・レコード所属の精力的な若きボブ・ディランの録音が行われた。ソロモン兄弟は1980年代になるまでフォークのアーティストとの仕事を継続した。 1959年、ヴァンガードはジョーン・バエズとの契約を締結、彼女は以降の20年間を同社と共にした。2年後に『Odetta at Town Hall』が録音されている。ルーフトップ・シンガーズ(英語版)が『Walk Right In』を録音したのは1963年のことで、これはソロモンのプロデュースにより大西洋を挟み洋の東西を問わずヒットした彼らの楽曲のひとつとなった。不運にも、続くシングルであった『Tom Cat』は若干示唆的であるという理由で販売差し止めとなったが、現代のスタンダードから見れば大人しいものであった。バエズがヴィラ=ロボスの『ブラジル風バッハ』 第5番を録音したのは、おそらくソロモンの影響がそうさせたのではないかと思われる。 ソロモンは当時の大衆の意見に沿ったものの見方をしており、舞台には整った出で立ちで上がること、綺麗な言葉遣いをするよう念押ししていた。勇敢にも、彼はマッカーシズムの最盛期にポール・ロブスンをヴァンガードへ迎える契約にサインしている。 こうした初期の時代からマルクス主義を信奉したことが駆動力になっていたが、ソロモンが書き仕事の中にその影響をはっきりと打ち出したのは1973年のことだった。同年の著作『Marxism and Art』は以来重版を重ねている。 60年代終盤にはヴァンガードはカントリー・ジョー・アンド・ザ・フィッシュ(今日では一般にカントリー・ジョー・マクドナルドと呼ばれる)を筆頭とするロックのアーティスト、他にもジャズやブルース、ディスコの音盤で一定の成功を収めた。ソロモンが交わした契約で最も驚くべきものは、1969年の電子音楽の作曲家Michael Czajkowskiとのものだった。Czajkowskiは素材をヘンデルから借用しつつも、シンセサイザーに乗せたその音はクラシック音楽からは程遠いものだった。とはいっても、兄のセイモアも1965年にユーモラスな電子音楽のアーティストだったジャン=ジャック・ペリー、ガーション・キングスレイと契約している。 ソロモンが1950年から1966年にかけてヴァンガードとバッハ・ギルドでリリースした多様な有名クラシック音楽のシリーズには、22曲のバッハのカンタータに加え、デラー・コンソートが演奏するイングリッシュ・マドリガル楽派の作品、イタリアやフランスのマドリガルの傑作、エリザベス1世やジェームズ1世の時代の音楽、ヘンリー・パーセルやトランペット、フルート、オーボエのヴィルトゥオーソ作品があった。またエーリッヒ・クンツを起用したドイツの大学歌、オーヴェルニュの歌、ヴィリー・ボスコフスキーによるウィーンの舞曲、ローランド・ヘイズによる伝承歌、ザグレブ・ソロイスツのヴィヴァルディ『四季』やその他協奏曲、レイフ・ヴォーン・ウィリアムズの音楽、エステルハージ管弦楽団が演奏するハイドンの交響曲集、チャールズ・マッケラス率いるウィーン国立歌劇場によるイタリア語歌唱でのグルックの『オルフェオとエウリディーチェ』の2枚組LP、そしてモーリス・アブラヴァネル指揮ユタ交響楽団演奏の有力なマーラーサイクルもある。
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