遊子水荷浦の段畑とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 文化 > 国指定文化財等データベース > 遊子水荷浦の段畑の意味・解説 

遊子水荷浦の段畑

名称: 遊子水荷浦の段畑
ふりがな ゆすみずがうらのだんばた
種別 重要文化的景観
都道府県 愛媛県
市区町村 宇和島市
管理団体
選定年月日 2007.07.26(平成19.07.26)
選定基準 選1
追加選定年月日
解説文: 四国島西端位置する宇和島市遊子荷浦は、豊後水道向かって延び三浦半島北岸から、さらに宇和海及び宇和島湾向かって分岐する今一つ小さな岬の小集落である。岬の東南側に当たる集落背後急傾斜面には、等高線沿って小さな石を積み上げて壮大な雛段状の畑地形成され、特に荷浦では「段畑」と呼ばれている。近世から近現代通じてサツマイモジャガイモ栽培により形成された「段畑」は、宇和海沿岸風土とも調和してイワシ漁やハマチ養殖業とも深く関連しつつ、農耕継続的に営むことにより緩やかな発展遂げた特色のある文化的景観である。
荷浦が位置する三浦半島周辺多島海溺れ谷などから成る顕著なリアス式海岸で、急峻な丘陵斜面と深い海域から成る独特の地形を持つ。年間通じて小雨であり、特に冬季には西から季節風強く吹き付ける地質砂岩頁岩互層から成り乾燥性酸性強く腐植土層の薄い土壌である。このような自然環境に基づき荷浦を中心とする岬とその周辺構成する丘陵及び海域では、農業と漁業安定的な生態系維持貢献してきた。特に、現在ジャガイモ栽培が行われている「段畑」では、周囲二次林海域比較すると、棲息する生物の多様性低くなっているのが特徴である。
段畑」は平均勾配が約40度で、畑地縁辺を成す石積平均高さは1m以上にも及ぶ。石積随所には登降用の石段があるほか、左右両端には耕作者が登降するための通路大雨時の排水路兼ねた石組の溝が設けられている。乾燥した土質に基づき全体として精巧な構造維持しており、耕作者による除草等の管理状況極めて良好である。
段畑」を含む周辺地域は、地域発展の歴史に関する土地利用変遷示している。江戸時代後期にムギ・サツマイモの栽培始まり明治時代養蚕興隆によりクワ栽培へと変化したが、食料アルコール製造目的として大規模なサツマイモの栽培へと発展し第二次世界大戦後柑橘類栽培へと大転換した。その後多くの「段畑」は耕作放棄地となったが、現在、集落接してわずかに残された「段畑」では主としてジャガイモ栽培が行われ、地域住民による「段畑」の再生事業進められている。
昭和30年代まで沿岸海域で行われてきたイワシのみならずイワシ不漁伴って宇和島湾内で展開したアコヤ貝養殖による真珠生産その後転換したハマチ養殖業は、それぞれ段畑」における農業とも緊密な関係の下に、地域生業相互補完的に維持するのに寄与してきた。
上のように、「荷浦の段畑」は、宇和海沿岸急峻な地形や強い季節風など地域風土とも調和しつつ、近世から近現代に至るまで継続的に営まれてきた半農半漁土地利用在り方を示す独特の文化的景観であり、我が国民の生活又は生業理解する上で欠くことのできないのであることから、重要文化的景観選定して保護図ろうとするものである
「国指定文化財等データベース」の他の用語
重要文化的景観:  小鹿田焼の里  蕨野の棚田  近江八幡の水郷  通潤用水と白糸台地の棚田景観  遊子水荷浦の段畑  遠野  高島市海津・西浜・知内の水辺景観

遊子水荷浦の段畑

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/30 04:15 UTC 版)

上から見た段畑
 
駐車場より見る段畑
地図
遊子水荷浦の段畑
愛媛県地図

遊子水荷浦の段畑(ゆすみずがうらのだんばた[1])は、愛媛県宇和島市遊子に位置する、急斜面に石垣を積み上げ作られた階段状の畑地である。

2004年平成16年)の文化財保護法改正により創設された重要文化的景観選定制度により、四国地方で初めて2007年(平成19年)7月26日に重要文化的景観選定基準の「水田・畑地などの農耕に関する景観地」として、遊子水荷浦の段畑の名称で選定を受けた。かつて合計30ヘクタール程度あった段畑は高度経済成長期以降の耕作放棄により約2ヘクタールへ激減していたが、選定を機に「段畑を守ろう会」が結成されるなど保存運動が興り、6ヘクタールに増えた[1]

古代遺跡のような景観から「宇和海ピラミッド」とも言われ[1]四国八十八景に45番で入っている。

概要

遊子の水荷浦は南予地方にあり、三浦半島の北岸から、宇和海及び宇和島湾に向かって分岐する岬の小さい集落である。岬の急傾斜面には、小さな石を積み上げて形成された雛段状の畑地が形成されている。この畑地を水荷浦では「段畑(だんばた)」と呼んでいる。この段畑を含む風景は、宇和海沿岸のリアス式海岸で営まれてきた半農半漁のくらしを示す独自の景観を形成している。

平均40の傾斜つけて築かれた高さ1メートル以上の石段[1]の間に幅幅1~2メートル程度の畑を造っている。石段は60段以上あり[1]、最も高い箇所では海抜90メートルの山上まで連なっている。約3.4ヘクタールに1000近い段畑がある。

宇和島地方は山が海に迫る地域が多く、耕地が元々少ない。江戸時代に当地を治めた宇和島藩伊達氏)の3代目藩主が、領民にイワシ漁を強制する代わりに、山の開墾は勝手次第としたことが始まりと伝わる。幕末に豊漁が続いて人口が増え、明治にかけて斜面のほとんどを開墾し、養蚕が盛んになるとカイコの餌となる桑畑も必要となって大正時代にかけて石垣を築いた[1]

かつては他の浦にも段畑が広がり、サツマイモも作られ、サツマイモは焼酎の原料として豊後水道対岸の九州にも出荷された。農業には元来厳しい地形であることから、昭和30年代以降に相次ぎ耕作放棄地となって森に戻った。

水荷浦のみで約20戸の農家がジャガイモを育てつつ保全している。水荷浦の地名も、生活に必要な水を荷として担ぎ上げる苦労があったことが由来とされる[2]

現状

重要文化的景観を守るため、NPO法人「段畑を守ろう会」を中心として多様な活動が行われている。

ふる里だんだんまつり
4月から5月のうち1日間だけ開催される、初掘りジャガイモの即売会をメインにする収穫祭[3]
段畑ライトアップ
8月から9月のうち1日間だけ開催される、竹とロウソクによる行灯で段畑を照らす夕涼みの会[3]
だんだん茶屋・だんだん屋
NPO法人「段畑を守ろう会」が運営する地産地消のレストランと直売所、直売所では段畑で収穫されたジャガイモを原料にしたオリジナル焼酎「段酎」が販売されている。営業時間は9時から16時、定休日は月・木曜日[3]

交通アクセス

耕作物

近世・近代はサツマイモの栽培が行われ、現在は早掘りジャガイモ栽培が行われている[3]

風景

出典

  1. ^ a b c d e f g 【いいね!探訪記】遊子水荷浦の段畑 ゆすみずがうらのだんばた:漁民の汗 天空に重ねた実り朝日新聞』夕刊2022年8月27日3面(2022年8月30日閲覧)
  2. ^ 【仰天ゴハン】カメノテ(愛媛県宇和島市)岩にびっしり 旨みぎっしり読売新聞』朝刊2019年4月14日別刷り<よみほっと>1面(2019年4月16日閲覧)の関連記事「天にも至る労苦の跡」(3面)。
  3. ^ a b c d e 遊子水荷浦の段畑パンフレット第8版(宇和島市教育委員会編集、2012年5月)

関連項目

外部リンク

座標: 北緯33度12分24.3秒 東経132度27分19.5秒 / 北緯33.206750度 東経132.455417度 / 33.206750; 132.455417



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「遊子水荷浦の段畑」の関連用語

遊子水荷浦の段畑のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



遊子水荷浦の段畑のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
文化庁文化庁
Copyright (c) 1997-2025 The Agency for Cultural Affairs, All Rights Reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの遊子水荷浦の段畑 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS