軍艦間の水上衝突
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 09:16 UTC 版)
軍民を問わず、衝突事故は多くの場合、船舶間での錯誤などに起因する。 軍艦の場合は商船などより緊密な隊形を組む = 相互の間隔が狭いことが多く、事故が発生し易い。また1910年代頃までは衝角を装備した艦が少なからず存在し、これが被害を拡大させた。 代表的な事例 ヴィクトリア(イギリス・戦艦)とキャンパーダウン(イギリス・戦艦) - 1893年6月22日、死者358名東地中海での演習で2列縦陣で航行中、司令官が左列に右回頭、右列に左回頭を命じたため両列の先頭艦同士が衝突。「ヴィクトリア」は「キャンパーダウン」の衝角に船腹を破られて沈没した。生存者357名。 沈没する「ヴィクトリア」(右)。左の艦は戦艦「ナイル」 衝突した「キャンパーダウン」艦首 春日(日本・装甲巡洋艦)と吉野(日本・防護巡洋艦) - 1904年5月15日、死者300名超濃霧の黄海で「吉野」の左舷中央部に「春日」が衝突し、「吉野」は「春日」の衝角に船腹を破られて沈没。日露戦争中の情報統制により、事故は戦後まで公表されなかった。 本件は以後の日本海軍の新造艦における衝角廃止のきっかけとなった。 美保関事件(日本) - 1927年8月24日、死者119名島根県美保関町(現・松江市)沖で、艦隊の夜間演習中に発生した多重衝突事故。軽巡洋艦「神通」と駆逐艦「蕨」、軽巡洋艦「那珂」と駆逐艦「葦」がそれぞれ衝突し、「蕨」「葦」が船体を切断され、「蕨」は沈没し「葦」は大破した。 北上(日本・軽巡洋艦)と阿武隈(日本・軽巡洋艦) - 1930年10月20日特別大演習における夜間演習で「北上」の後方に「阿武隈」が続航中、「阿武隈」が「北上」の左舷中央部に衝突。「阿武隈」は1番主砲塔より前部の艦首を喪失。 電(日本・駆逐艦)と深雪(日本・駆逐艦) - 1934年6月29日済州島南方で演習中に「深雪」艦中央部に衝突、「深雪」の船体は断裂し後部はその場で沈没、前部は軽巡洋艦「那珂」が曳航しようとするも途中で断念し放棄、「電」は艦首部を喪失し、軽巡洋艦「那珂」に曳航され、後進で佐世保に帰投、修理は呉で約三ヶ月間かけて行われた。この事故により死者3名、行方不明者2名が出た。尚、この事故により「深雪」は戦前に沈没した唯一の特型駆逐艦となった。 ワスプ(アメリカ・航空母艦)とホブソン(アメリカ・掃海駆逐艦)1952年にアメラダへ帰港する際、進路変更をした「ワスプ」が掃海駆逐艦「ホブソン」の左舷に衝突。 「ワスプ」は艦首下部を喪失「ホブソン」は船体を両断され艦長以下170名以上の死者を出し沈没した。 あけぼの(日本・警備艦)といなづま(日本・警備艦) - 1960年6月4日、死者2名津軽海峡東方で夜間対潜訓練中、「あけぼの」が「いなづま」の右舷艦橋直下に衝突。「あけぼの」は艦首を折損、「いなづま」は11室が全壊。 原因は「あけぼの」側の命令誤認。 メルボルン(オーストラリア・軽空母)とヴォイジャー(オーストラリア・駆逐艦) - 1964年2月10日、死者82名 フランク・E・エヴァンズ(アメリカ海軍・駆逐艦) - 1964年6月3日、死者74名夜間、併走していた両艦は右転するも針路が錯綜し衝突、「ヴォイジャー」が沈没 同年6月に南シナ海においてアメリカ海軍駆逐艦「フランク・E・エヴァンズ」と衝突、「フランク・E・エヴァンズ」は艦首切断の損傷を負い7月1日に除籍となった。こちらの事故も夜間に「メルボルン」艦首に向け横切り駆逐艦の操艦ミスが事故に繋がった。 ジョン・F・ケネディ(アメリカ・正規空母)とベルナップ(アメリカ・ミサイル巡洋艦) - 1975年11月22日、死者7名シチリア島東方のイオニア海で荒天下の夜間演習中、「ジョン・F・ケネディ」左舷のアングルド・デッキ張出部に「ベルナップ」の艦橋が衝突。「ベルナップ」は火災を生じ、上部構造物が完全に溶解焼失して2時間半後に鎮火。搭載していた核弾頭への延焼は無かった。 同巡洋艦の修理期間は翌年初めから1980年5月まで51ヶ月余に及んだ。 本件はフォークランド紛争における英21型フリゲートの被爆火災と並び、戦闘艦の上部構造物へのアルミニウム合金使用の火災脆弱性を世に知らしめることとなった。 「ベルナップ」は衝突による火災でアルミニウム合金製の上部構造物がすっかり熔け落ちた。 あまぎり(日本・護衛艦)とはまぎり(日本・護衛艦)- 1992年8月28日房総半島南東約550Kmの太平洋上で夜間訓練中に「あまぎり」の右舷後部に「はまぎり」の艦首が衝突した。双方ともけが人なし。「あまぎり」には右舷後部に約4mの亀裂、「はまぎり」の前部に約3mの亀裂。 セオドア・ルーズベルト(アメリカ・原子力空母)とレイテ・ガルフ(アメリカ・イージス巡洋艦) - 1996年10月14日ノースカロライナ州沖で「セオドア・ルーズベルト」の試運転中、後続してきた「レイテ・ガルフ」が後進をかけた同空母の艦尾に追突。 空母は700万ドル、巡洋艦は900万ドルの修理費を要した。 デンバー(アメリカ・ドック型揚陸艦)とユーコン(アメリカ・給油艦) - 2000年7月13日オアフ島西方沖で、洋上給油のために「ユーコン」の右につこうと同給油艦の後方より接近した「デンバー」が「ユーコン」の右舷後部に衝突。給油艦の油槽破損および燃料油漏出は無かった。 衝突した「デンバー」の艦首 衝突された「ユーコン」の右舷後部
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