西表石垣国立公園
[マングローブ林]
マスクとスノーケルをつけて海に入ると、豊穣の世界が眼前に展開する。造礁サンゴはテーブル状、鹿角状、半球状などさまざまな形態をとり、水平に広がり、礁斜面では折り重なり、その間を信じられないほど種類の多い魚が泳ぎ回る。どれも赤、紫、青、黄など、鮮やかな色彩を組み合わせ、意表をつく配色を凝らしている。そうして、視界の果ては、ものみなが吸い込まれるように青い帷に溶け込んで消えてゆく。
西表島と石垣島
[川平湾]
日本の最南西端、八重山(やえやま)列島のうち、西表島・石垣島の主要部と周辺の島々、及び両島間に広がる広大なサンゴ礁海域からなる、亜熱帯の国立公園である。沖縄が米国の施政権下にあった昭和47年4月に琉球政府立公園に指定され、同年5月、日本復帰と同時に西表国立公園に移行、平成19年8月、新たに石垣島地域を加えて名称が変更された。
西表島は面積289km2あり、沖縄県の島では沖縄本島に次いで大きい。中央部は標高400〜500mの山地で、平地は南側を除く海岸沿いにわずかに分布するだけである。島の80%が厚い照葉樹林で覆われており、高い原始性と貴重な学術的価値を併せ持つ島である。
主な河川の下流部は川幅が広く、浦内(うらうち)川や仲間川は河口から数km上流まで観光船が運行している。浦内川の軍艦岩から約3km上流のマリュドゥ・カンピレー両滝までは探勝路が整備されていて、亜熱帯林の探勝が容易にできる。内湾や河口にはマングローブ群落が発達する。仲間川下流のマングローブ群落は日本では最も規模が大きなもので、面積約105haある。その後背地にはサキシマスオウノキなどの湿性林が続き、中央部の山地はスダジイやオキナワウラジロガシ、タブなどが陽光をさえぎり、林内にはヒカゲヘゴやツルアダンが繁茂して熱帯的雰囲気を色濃く醸し出している。また、仲間川中流と西部の星立にはヤエヤマヤシの群落も見られる。
石垣島は面積229km2、八重山における経済・交通の中心地である。海岸に近い平野部は開発が進んでいるが、中央部から北部にかけての山地にはスダジイなどの自然林が残り、また、沿岸にはサンゴ礁が発達している。公園区域は沖縄県最高峰の於茂(おもと)登岳(526m)、桴海(ふかい)於茂登岳などの山地、名蔵湾アンパルの干潟とマングローブ群落、川平(かびら)湾、御神(おがん)崎、平久保崎周辺など中・北部の景勝地及び米原(よねはら)や白保(しらほ)をはじめとするサンゴ礁海域を含む。米原にはヤエヤマヤシ、荒川にはカンヒザクラ、平久保にはヤエヤマシタンの自生地がある。
特色ある動物と華麗なサンゴ礁
イリオモテヤマネコは西表島の固有種として知られる。鳥類ではカンムリワシなど、日本では八重山地方にしか生息しない種類があり、両生爬虫類や昆虫にも固有種や国内では八重山のみに分布する種類が多い。
石垣島と西表島の間に広がる海は石西礁湖(せきせいしょうこ)と呼ばれる浅く波静かな海域である。この中にある竹富(たけとみ)島、黒島、小浜(こはま)島などは、ほとんどが隆起サンゴ礁からなる小さく平坦な島々である。どの島も隅々まで開発され西表島のような原始性はないが、周囲を美しい砂浜やサンゴ礁に囲まれている。竹富島は民俗芸能の宝庫として知られ、また、伝統的集落景観の保存にも努めている。
この海域に生息するサンゴは360種以上が知られる。かつて絢爛華麗な海中景観を展開していたサンゴ礁は、昭和50年代に大発生したオニヒトデの食害を受けて壊滅的な打撃を受けた。その後一部は回復したが、なお開発による土砂の流入や白化現象、さらに最近では感染症とみられる病気などによる影響を受け、往時に比べると大きく衰退している。そのため、サンゴ礁の再生に向けての取り組みが始まっている。
イリオモテヤマネコ
昭和42年に新属新種として学会に発表されたが、現在では、アジアに広く分布するベンガルヤマネコと同属の独立種で、西表島の固有種とされている(環境省)。大きさはイエネコよりわずかに大きい。
主に低地の沢沿いにすみ、鳥やトカゲ類、昆虫などを捕食する。泳ぐのも巧みである。約100頭が生息すると推定されているが、低湿地の開発や交通事故、ノネコとの接触による病気の感染などが心配される。
関連リンク
- 西表石垣国立公園 (環境省ホームページ)
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