被害の概要と負傷・救急医療
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/26 08:46 UTC 版)
「福岡県西方沖地震」の記事における「被害の概要と負傷・救急医療」の解説
住宅被害や負傷者の大半は福岡県内で発生しており、特に福岡市が大きな割合を占めた。負傷者の8割、全壊・半壊棟数の9割、一部損壊の5割が福岡市となっている。ただ、福岡市内では全区で人的・物的被害が生じたものの、被害は限られた地域に集中し、その他では散発的な被害が見られた。 住宅の全半壊を伴うような被害が目立ったのは、福岡市西区の玄界島や能古島、同じく西区北西端の西浦地区・宮浦地区、東区の志賀島など、沿岸の漁村・農村地域だった。特に、玄界島では住宅の半数が全壊するなど大きな被害となり、約1か月間にわたって全島避難を行った。また、福岡市街地の中でも一部地域、中央区の警固断層東縁でマンションや古いビルの半壊・一部損壊が集中的に発生した。 ライフラインや交通などの都市機能にも被害は生じたが、おおむね半日から2日間程度で復旧している。 福岡市消防局のまとめによると、福岡市内で地震に伴う傷病により救急搬送された人数は地震当日の3月20日に87人、翌3月21日に6人など、4月6日までの18日間で計109人となっている。なお、このうち地震当日に玄界島から6人がヘリコプターで災害拠点病院である九州医療センターまたは済生会福岡総合病院に搬送されているほか、翌日以降の搬送人数には熱傷患者の転院による搬送なども含まれる。受傷要因別の内訳は、転倒による負傷が31人(28%)、鍋等の転倒による熱傷が19人(17%)、落下物による負傷が同じく19人(17%)、建物等の倒壊による負傷が12人(11%)などとなっている。また、年齢別では60代以上が約6割を占めた。 唯一の直接死者となった70代女性は、博多区吉塚の自宅付近にて清掃作業を終えて近所の住民と談話中、倒壊したブロック塀の下敷きとなり出血性ショックなどが原因で死亡した。このほか、福岡市で80代女性、筑紫野市で50代男性がそれぞれ飛んできた瓦で頭を打つなどして重体となった。 福岡市消防局では地震直後から119番通報が殺到し、11時30分までの40分間に約700件を超えた。建物被害への対応、救急・救助、ガス漏れなど、地震による消防車両の出動台数は延べ台数で735台に上った。福岡市内の各消防団も避難誘導や崖崩れへの対応など174件の活動を行っている。 通報が殺到して救急車の配車指示が充分とはいえなかったことに加えて、通信規制により病院間の連絡が困難となり、さらに災害時優先電話のトラブル(後述)により救急から病院への連絡にも支障が生じたため、救急患者を近くの病院から順次飛び込みで搬送する事態が発生した。唯一の死者となった女性についても、こうした背景により手当てが遅れた可能性が指摘された。のちに対策として、福岡県の救急医療情報システムの活用促進、通信支障や人手不足を前提とした受け入れ体制の分散化などのほか、福岡市医師会で携帯メールとウェブを活用した連絡システムを導入するなどしている。さらに、一つの病院に負傷者が集まり偏ってしまった教訓から、NHKテレビのデータ放送で救急医療機関の連絡先と診療状況(可否)を伝える取り組みを開始した。 被害集計 平成18年版『消防白書』より(2006年9月30日時点)地域 負傷者数 住宅被害棟数 火災 死亡 負傷 全壊 半壊 一部破損 福岡県1 1,186 143 352 9,190 1 佐賀県― 15 ― 1 136 ― 長崎県― 2 1 ― 14 1 山口県― 1 ― ― ― ― 合計1 1,204 144 353 9,340 2 負傷者合計の内訳:重傷198人、軽傷1,006人。 福岡県内市町村別の主な被害集計 福岡県『平成17年災害年報』より市町村 負傷者数 住宅被害棟数 道路被害箇所 港湾被害箇所 崖崩れ箇所 罹災証明書発行世帯数 死亡 重傷 軽傷 全壊 半壊 一部破損 福岡市 1 163 875 141 323 4756 136 96 19 1116 大野城市 1 3 217 春日市 10 3 1 236 那珂川町 1 196 1 筑紫野市 54 2 太宰府市 1 1 1 174 3 2 宇美町 1 1 53 4 篠栗町 1 4 28 2 志免町 1 13 55 3 須恵町 2 108 7 粕屋町 1 6 11 久山町 3 13 5 新宮町 2 216 72 1 古賀市 1 6 235 22 1 宗像市 1 1 67 1 福津市 1 2 33 3 *1 前原市 9 44 1 1407 29 26 *1 二丈町 1 107 6 16 *1 志摩町 5 1 16 920 53 大川市 1 5 1 柳川市 5 岡垣町 1 71 4 久留米市 9 1 1 飯塚市 75 1 *2 若宮町 1 107 2 重傷1名以上、軽傷5名以上または一部損壊10棟以上の市町のみ掲載。*1:現糸島市。*2:現宮若市。 なお、4月20日朝の余震でも人的・物的被害が出ている。福岡市を中心として福岡県と佐賀県で合わせて58人の負傷者が出たほか、新たに200棟以上の住宅で一部損壊の被害が発生した。
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