被害の発生
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 06:38 UTC 版)
2019年(令和元年)10月上旬、東日本台風(台風19号)の接近に伴い日本各地120か所で半日あたりの雨量が観測史上最大を記録するなど大量の降雨があった。北陸新幹線も台風接近前の12日夕方までに計画運休していた。気象庁は東日本を中心とする13都県に大雨特別警報を発表し、長野県に対しては12日午後3時半に発表した。降雨の影響で千曲川の水位は12日昼頃から上がり始め、13日午前0時に氾濫危険水位を超えたのち同日午前3時から5時半の間に長野市穂保地区において堤防が決壊した。 千曲川から1キロほどの距離にある長野新幹線車両センターが位置する赤沼地区では、最大約4.3メートル浸水したと推定されている。長野駅 - 飯山駅間の本線の一部や車両センターに併設されていた信号関係の電源設備、臨時修繕庫、車輪研削庫、確認車車庫、変電所(地下電源室、事務所含む)、センター向かい側の新赤沼き電区分所などでも冠水した。同地区は13日午前0時45分に緊急の避難指示が出されており、車両センターにいた社員などの36人は建物の高い場所に避難した。 長野市のハザードマップでは付近の浸水を最大10メートル以上であると予想していた。また国土交通省北陸地方整備局千曲川河川事務所が2016年に、想定される最大の豪雨の場合10メートル以上浸水する「浸水想定区域」と認定しており、JR東日本も建設を行った鉄道・運輸機構もこれを把握していたものの多大な費用が掛かるとして浸水対策は行っていなかった。日本鉄道建設公団は建設当時の1982年に、県が1982年に作成した浸水被害実績図を参考に、それ以前の水害より90cm高い位置にするため車両センターに2mの盛り土をしたとしており、公団の後継団体となる鉄道・運輸機構も「建設当時は必要な設計をした」との考えを示している。 これらの結果、車両センターに留置されていた車両であるE7系8編成とW7系2編成、場所別では屋外の留置線で7編成、屋内の仕業検査・交番検査庫で3編成の計10編成が座席の肘掛けの高さまで浸水した。また、このうちの2編成78軸に脱線が発生しており、うち1編成は10 - 15メートル移動していた。車両センターから車両を退避させる場所や基準を定めたマニュアルなどがなかったことや台風の進路から避難を計画するには至らないと判断していたこともあって、車両の退避は行われなかった。当時、北陸新幹線では全30編成を運用しており、平常時は24編成を使用していたが、被害編成は全体のうち3分の1を占めていた。11月6日、JR東日本とJR西日本は全車両を廃車にし、一部の部品は転用するものの帳簿上の損失は最大で148億円になると発表した。また、JR東日本は、2020年春までに、上越新幹線に導入予定だった新造E7系車両5編成を北陸新幹線に転用し、かつ上越・北陸兼用の1編成を北陸専用にして北陸用に26編成を用意すると発表した。JR西日本も被害を受けた2編成の補充の方針を明らかにしている。
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