時制(テンス)と相(アスペクト)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/19 08:40 UTC 版)
「秋田弁」の記事における「時制(テンス)と相(アスペクト)」の解説
出来事が起こった時間を発話時を基準として表す形式を時制(テンス)といい、出来事の完成度を表す形式を相(アスペクト)という。共通語では例えば動詞においては「する」と「した」、「している」と「していた」のように非過去と過去の時制が対立し、「する」と「している」、「した」と「していた」のように完成相と非完成相(継続相)が対立する。時制の対立のみを持つ形容詞述語、形容動詞述語、名詞述語、存在動詞を状態述語といい、時制と相の対立を持つ動詞述語を動態述語という。 秋田方言では、状態述語のうち、状態動詞「エル」(居る)と、「カゲル」(書ける)のような可能動詞において、現在の時制を表す場合に「エダ」「カゲダ」のように共通語の過去の形式にあたるものが用いられるのが特徴的である。未来の時制では共通語の非過去の形式が用いられる。また、これらの動詞で過去を表す場合、「エダ」「カゲダ」のような形式も用いられるが、過去であることを明示する場合に「エデアッタ」「カゲデアッタ」(県南部では「エダッタ」「カゲダッタ」)のような形式が用いられる。名詞述語や形容動詞述語で共通語の「-だった」にあたる語尾は、「-ンデアッタ」(県南部では「-ンダッタ」)で表される。 動態述語では、未来の時制は共通語の非過去とほぼ同様に完成相が「シル」(する)、継続層が「シテル」(している)のような形式で表されるが、「している」などにあたる現在継続相においては「シテダ」や「シテラ」が用いられ、「した」などにあたる過去完成相には「シタ」のほかに中央部で「シテアッタ」、県南部で「シタッタ」が用いられる。「していた」にあたる過去継続相には「シテアッタ」が県北部と中央部で、「シテエデアッタ」が中央部で、「シテダッタ」と「シテラッタ」が県南部で用いられる。
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時制と相
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/16 22:29 UTC 版)
共通語では、「音便形+ている」は動作の進行・継続(進行相)または変化の結果が継続していること(結果相・完了相)に用いる。たとえば「太郎は今走っている」では動作が進行中であることを表し、「道に木が倒れている」では道に木が倒れたままになっているという、変化の結果が持続した状態を表す。「走る」のような継続的動作を表す動詞(動作動詞)では「-ている」をつけると進行相を表し、「倒れる」のような瞬間的変化を表す動詞(変化動詞)では「-ている」が結果相を表すのが原則である。これらを表すのに、東日本・福井市付近・近畿中央部で「音便形+てる」、東北で「音便形+てた・た(詳細後述)」など、佐渡・富山県以西の北陸・愛知県・三重県伊勢で「音便形+とる」、島根県出雲で「音便形+ちょる・ちょー」と言う。「走る」のような終止形で表される形は動作全体をとらえた形で、完成相と呼ぶ。「走ってる」のように「-てる」などを使って表される形は動作の継続している時間内部に言及する形で、非完成相と呼び、共通語や上記の地域では進行相と結果相を区別しない。 上記以外の西日本では、非完成相のうち、進行相と結果相を別表現で言い分ける。すなわち岐阜県・奈良県南部・兵庫県播磨・中国地方(出雲除く)・四国地方・九州地方では、進行相に「連用形+よる」など、結果相に「音便形+とる・ちょる」などを用いて区別する。進行相には「-よる」のほかに、高知県で「-ゆー」、薩隅方言で「-おぃ・よぃ・おっ・よっ」などを用いる。結果相には「-とる」の地域が多いが、「-ちょる」を用いるのは富山県五箇山・石川県白峰・岐阜県の一部・広島県安芸以西の中国地方・香川県西部・愛媛県の一部・豊日方言で、高知県では「-ちょる・ちゅー・てょる・てゅー」、薩隅方言では「-ちょぃ・ちょっ」などと言う。進行相は「おる」、結果相は「ておる」の変化したものである。生物の存在に「おる」ではなく「ある」を使う紀伊(和歌山県・三重県南部)では、進行相に「-やる」、結果相に「-たる・たーる」を用いる。このうち薩隅では老年層を除き区別が失われており、その他の地域でも区別はそれほど厳密なものではない。なお西日本の「-よる」には「今にも…しそうだ」という動作の開始直前を表す用法(将然)がある。また「新聞を毎日読んでいる」のような習慣・反復には、「-よる」を用いる地域と「-とる」を用いる地域がある。 過去・完了は、広く「音便形+た」で表すが、神奈川県西部・山梨県東部・静岡県東部・愛知県三河などで「音便形+たー」とすることもある。八丈島の過去表現は独特で、「書から」「買わら」「出したら」「起きたら」「有らら」などと言う。 東日本、特に東北では過去時制に関係する表現が多様で、「いる」のタ形「いた」が現在を含むそれ以前を表す。東北では、タ形を使って、動作や状態が一時的なものであることを示す場合がある。たとえば宮城県登米市中田町方言の研究によると、「いる」は時間的に限定されない習慣や恒常的状態を表すのに対し、「いた」(音声的には「いだ」)は現在の一時的状態または過去の状態を表す。動作動詞の非完成相でも、「してる」は未来あるいは現在の習慣を表すが、「してた・してだ」は現在の一時的動作(進行・結果)または過去の動作を表す。 東日本の大部分には「音便形+たった・てあった」があり、過去の事実の確かめや回想、遠い過去などを表す。青森では「-てあった」が進行相過去(共通語:-ていた)を表し、岩手では「-たった」が完成相過去(共通語:-た)を表す。「-た」と「-たった」の使い分けとしては、「-た」が現在を含むのに対し、「-たった」は現在とは切り離された過去を表す。また「-たった」は地域によっては話し手が直接知覚・体験した出来事であることを明示する機能がある。たとえば宮城県登米市中田町では、「太郎ここさ座った」は話し手が目撃したかどうかは分からないが、「太郎ここさ座ったった」は話し手が目撃した出来事であることを表している。 東日本では「音便形+たっ」に回想の「-け」をつける。東北では、音便形または終止形につく「-け」は確かな経験を表す。
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時制(テンス)と相(アスペクト)
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「秋田弁の文法」の記事における「時制(テンス)と相(アスペクト)」の解説
時制(テンス、tense)とは、出来事がいつ起こったのかを発話時を基準として時間的に位置づける形式であり、過去、現在、未来などを表す。また相(アスペクト、aspect)とは出来事の完成度を表す形式であり、完成相と非完成相(継続相)などを表す。 共通語での時制は非過去と過去に二分され、非過去が現在と未来の両方を表す。時制は動詞述語、形容詞述語、形容動詞述語、名詞述語の全てにあり、「書く」「赤い」「静かだ」「山だ」に対して「書いた」「赤かった」「静かだった」「山だった」のような対立をなす。一方、共通語での相には完成相と継続相があるが、相の対立があるのは動詞述語のみであり、形容詞述語、形容動詞述語、名詞述語には相の対立はない。また動詞述語の中でも、「ある」「いる」のような存在動詞は、動作の時間的展開性がないために相の対立を持たない。相の対立がある場合、完成相は非過去で「する」、過去で「した」のように無標で表される一方、継続相は非過去で「している」、過去で「していた」のように音便形(連用形)に「-ている」を接続して表す。
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