日本の賃金決定機構における機能
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「人事院勧告」の記事における「日本の賃金決定機構における機能」の解説
給与勧告は国家公務員の一般職非現業職員の給与を対象とするが、公務員の給与法制上、公共部門全体の給与水準がこれに連動し、また一部の民間給与にも逆作用するため、日本の賃金決定機構において重要な機能を持っている。高度経済成長期にあっては、春闘相場の設定自体に大きな影響を及ぼすこともあった。このため、マルクス経済学の立場から、人事院の給与勧告を「国家独占資本主義の段階における賃金決定過程への国家の直接的介入」「政府のイニシアティブによる賃金水準の統制」と規定する研究者もいる(神代1973、p.105)。また、大局的には、消費経済の動向に影響を与えることになる。 公務部門 人事院の給与勧告は公務員全体の給与水準に対する強い影響力を持っている。人事院の給与勧告が直接対象とする国家公務員は給与法、任期付職員法、任期付研究員法の適用職員(2009年1月15日現在、292405人)である。また他の公務員給与法により大臣、裁判官、裁判所職員、国会職員、防衛省職員(自衛官含む)等特別職の職員(約30万人)及び検察官(約3千人)が勧告に準じて措置される。 行政執行法人(約7千人)の職員の給与は労使の団体交渉(または中労委の仲裁裁定)によって決定されるが、その際給与法適用職員の給与を考慮することが定められており、勧告の強い影響下にある。 地方公務員にも勧告は大きな影響を及ぼす。地方公務員一般職の職員の給与は、首長が提出した給与条例の改正案を議会が可決・成立させることで改定され、都道府県や政令指定都市等においては、人事委員会が事前に首長に行う独自の給与勧告が給与改定を主導している。この人事委員会の勧告と、給与条例の改正案は、人事院の給与勧告にならうことが多い。ただし、その程度には差が見られる(早川1979、p.259)。 公務員以外の公共部門 行政執行法人以外の独立行政法人(非公務員型、職員数約7万5千人)並びに国立大学法人(約12万9千人)の職員の給与は労使の団体交渉を通じて決定されるが、「社会一般の情勢に適合」させることが定められている(独立行政法人通則法第63条第3項)。また、独立行政法人、国立大学法人、特殊法人及び認可法人等の給与水準は、毎年公表と総務大臣への届出をすることが義務付けられており、人事院はそれにあたって、これらの法人(2008年度は208法人)と国家公務員との給与の比較指標を作成し、各法人と総務省に提供している。このような制度と取り組みにより、非公務員である政府関係機関の職員の給与も直接または間接的に勧告の影響を受けている。 これらの機関のほかにも勧告の直接的、間接的影響が指摘されている機関には、公共組合、国及び地方公共団体系の公益法人、地方独立行政法人、地方の特殊法人(地方住宅供給公社、土地開発公社など)なども挙げられており、その範囲は公共部門全般にわたっている(早川1979年、p.264) 民間部門 給与勧告は民間給与を基に決められるが、これが直接または国、地方公共団体及び政府関係機関の職員の給与を媒介して民間給与にも一定度逆作用する。具体例としては、私立学校、私立病院、農業協同組合、(春闘に参加できない)中小企業等が挙げられている(早川1979)。中小企業の多くは給与勧告後の夏から秋にかけて賃金改定を行い、その中の一定数が勧告を基準としているとされる。 なお、給与勧告の根拠となる「職種別民間給与実態調査」は職種、役職、年齢等の給与決定要素別に集計されているという特色から、民間企業が賃金決定の資料として活用している。労務行政研究所が企業の賃金決定のための資料として発行している『規模別・地区別・年齢等でみた職種別民間賃金の実態』には、同調査が収録されている。
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