施設名称に関する問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/10 13:59 UTC 版)
「新潟県立野球場」の記事における「施設名称に関する問題」の解説
新潟市出身の漫画家水島新司は、県立野球場の施設名称(愛称)に自身の作品『ドカベン』を使用するよう、県に対し県内政財界関係者と共に働きかけを行ってきた。一方、県は運営費確保などを目的に施設命名権導入の方針を内定していたが、水島側は「スポンサー名とドカベンの名が重複して使われるのは本意ではない」として、かねてから強い難色を示していた。 こうした中、県内のアマチュア野球競技団体と新潟BCなどから成る「県立野球場建設促進委員会」は2009年1月28日、施設の愛称に「ドカベン」を冠することを求めて約4万人分の署名を県に提出し、泉田と会談を行ったものの、双方の主張は平行線のままに終わった。その後2月17日、水島は県に対し「命名権を売却する場合、企業名とドカベンの名を併記する名称の採用は辞退したい」との意向を伝え、これを受けて泉田は2月20日の定例記者会見で命名権売却先の募集を3月から1箇月間実施すると発表した。席上、泉田は「ドカベンを採用する可能性が100%なくなった訳ではない。ドカベンにしたいと考えている人が買収する方法もある」と含みを残したものの、同委員会と水島はこれを否定し、取得しない意向を示した。 また、命名権の有力な買収先として、家電リサイクルなどを手掛けるハードオフコーポレーション(新発田市)が挙がっていたことについても、同社が古本販売などを手掛けるブックオフコーポレーション(神奈川県相模原市)と強い協力関係を結んでいることから、一部報道ではかねてから古本業界に否定的な水島が、激しい不快感を示したとされていた。なお、『ドカベン』は、既に神奈川県大和市にある大和スタジアムの愛称「ドカベンスタジアム」として使用されているため論議を呼ぶ恐れがあった上、作品のモチーフとなった新潟明訓高等学校を容易に想起させるため、特に高校野球公式戦の際には不公平感を煽る可能性が高いなど問題点も数多く指摘されていた。 一部からは「当初から『ドカベン』と命名権の2点ばかりがクローズアップされたままで、他の選択肢が存在しない」「愛称の一般公募を行わないのは不公平なのではないか」などと指摘する声も寄せられていたが、県は3月10日から命名権売却先の募集を開始。年間使用料は1500万円以上で、売却先には年3日の無償施設使用権を付与する契約条件が設定された。その後3月12日に行われた県議会2月定例会の建設公安委員会で、県は「県民の負担軽減が重要であり、その方策の一環で命名権売却を決めた。愛称を募集しても、企業が他の名称や愛称を付けることが可能である以上、実施は難しい」として、愛称の一般公募も実施しない旨を表明した。 命名権取得に名乗りを上げたのは前述のハードオフ、サトウ食品など県内の3社であった。県は審査を行った結果、4月17日に売却先をハードオフに決定し、施設の呼称を「HARD OFF ECOスタジアム新潟」とする旨を発表した。ハードオフ側は年間3000万円の5年契約を提示し、応募企業の中で最も好条件を示していた。また愛称案にもエコロジーを示す「ECO」と所在地名の「新潟」が入っており、企業名や商品名のみの名称と異なり、県民に親しまれることが期待できる点が決め手となった。県とハードオフはその後細部調整を行い、契約期間は2014年3月31日までの5箇年に決定し、5月18日に基本協定を締結。同日から命名権による呼称が採用された。調印後の会見でハードオフの代表取締役社長山本善政は「会社全体の広告費は年額1億5000万円で、契約額はそのうちの2割に相当する。充分な費用対効果があると判断した」と取得理由を述べ「日本一環境に配慮した野球場にしたい」と意向を語った。 一方水島は3月以降、首都圏在住者が新潟市の広報活動に協力するための親睦組織「新潟市サポーターズ倶楽部」の会長職と、創設以来務めてきた「にいがたマンガ大賞」の審査委員を辞任する意向を、新潟市側に順次伝えた。前述の経緯から一部報道では「行政に対する不信感を募らせたのではないか」などといった憶測を呼んだことから、水島は4月20日に自筆のコメントを出した。その中で水島は「ドカベン球場とならなかったのは残念ですが、県の判断ですので仕方ありません」と改めて遺憾の意を示し、役職の辞意の理由として3月にマネージャーが亡くなったことと自身の体調不良を挙げた上で「県が私に失礼があったとは思っておりません」「行政に対する不信とは全く関係ありません」と報道を否定し、名称問題と辞意とは無関係である旨を強調した。 なお、ハードオフ側は略称として「ハードオフスタジアム」と「ハードオフ エコスタ」を前述の調印会見の席上で口頭で公表した。7月17日、県はこれを基にして「ハードオフ エコスタジアム」「ハードオフ スタジアム」を公式略称とし、更にこの2つに加え「ハードオフ エコスタ」「ハードオフ スタ」「ハードオフ 新潟」「エコスタ」の計6種類の略称を制定した。これに準じ、新潟市は県道・市道の案内標識において、正式呼称と「ハードオフスタジアム」を併用して表記している他、報道や公式記録などでは「ハードオフ新潟」を使用している。この「ハードオフ新潟」は前述の広島対阪神戦を報じる際に各メディアが使用した呼称で、県はこれを事実上追認する形で略称に加えている。だが新潟日報は開場当初「エコ球場」という同社独自の略称を使用し、命名権に対する配慮が図られておらず誤用ではないかとして指摘を受けたことから、公式略称の正式発表があった7月下旬以降「エコスタ」に修正している。 ハードオフは2014年春、命名権スポンサーに付与された県との優先交渉権を行使した上で、2019年3月31日まで5箇年の契約を更新し、3月17日に調印式が行われ、2014年度からも引き続き同一呼称を使用している。なお、ハードオフでは命名権スポンサーに年間3日間付与される無料利用日のうちの1日を充て、毎年当球場の会議室において株主総会を開催している。
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