教育格差・地域格差
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 09:06 UTC 版)
企業の求める社員の像、規模が変化したことにより、企業に人材を送り出す、学校を取り巻く状況も変化した。企業が多数の正社員を必要としなくなったため、良い大学を出ても、良い企業に採用してもらえるとは限らなくなった。また、各個人の価値観も多様なものとなり、学生の方でも、必ずしも一流大企業と言われる企業を望まなくなった。これにより、「良い大学を出て、良い企業に入る」というシステムがうまく働かなくなった。また、受験競争の過熱もあって、塾や予備校などが普及し、小・中・高校における公立学校の地位は国立学校・私立学校に比べて低下しており、一般に一流と言われるような難易度や社会的評価の高い大学に進学するには、義務教育や公立校によってなされる授業のみでは難しくなっており、保護者にある程度の資力がないと教育に要するコストを十分負担することが出来なくなっている。 また地域による教育格差もあるため、地方創生会議では、大学の東京一極集中が問題視されている。 地方により産業構造や人口分布が異なっているため、財政状況にも差がある。このため従来から公共事業や補助金、地方交付税交付金などによって再配分が行われてきた。しかし近年、公共事業や補助金は世論の求めや財政赤字の拡大の中で削減されており、これまで国が地方へ回していた予算や地方交付税が大幅に減らされたため、積み重ねられた地方債などの借金の負担と相まって、財政状況が苦しくなる地方自治体が相次いでいる。 森永卓郎は「首都圏・中京圏といった都会と、北海道・東北・九州などの地方では、平均給料・失業率・人口増加率などほとんどの分野で差が出ている」と指摘している。 地域格差については、エコノミストの藻谷浩介が「東京はにぎわっているが、地方は停滞している」「名古屋は、日本で一番栄えている」」などと、実態と乖離したイメージで語られることが非常に多いと指摘している。 一方で、地域格差の拡大そのものに対して否定的な意見もある。「日経ビジネスオンライン」2007年8月7日号の記事によれば、県民経済計算を使用してジニ係数を作成すると、県民所得は1990年(平成2年)から2004年(平成16年)にかけてジニ係数は縮小しており、地域間格差の縮小を示している。県内総生産でも1990年から2004年にかけてジニ係数は縮小しており、地域間格差の縮小を示している。この記事でも、格差について実態を把握せずイメージで語られがちなことが述べられている。また、教育格差により社会の階層化が進むという指摘もあるが、日本は高卒と大卒の生涯賃金の差は先進国でも非常に低い部類に入る。 山田昌弘は、 「勉強をして良い大学に入れば、良い企業に入れるといった社会の仕組み(パイプラインシステム)が、社会がリスク社会になることによって十分に機能しなくなった。一方で、パイプラインシステムは機能停止はしていないので、勉強すれば報われると思っている人は、勉強をすることによって良い企業に行く傾向にある一方で、勉強しても効果はないと思っている人は、勉強をせず就職もうまくいかなくなる傾向にある」 と指摘している。 これに関連して、内田樹は、 「上流階層は努力が報われると信じており、下流階層は努力をしても意味はないと信じている。(下流「勉強をしても良い企業に入れるとは限らない。だから勉強をする必要はない」と、上流「そもそも勉強をしなければ良い企業には入れない。だから勉強をする」の違い)子供は自分が所属する階層の価値観に従うため、上流階層の子供は勉強をする一方で、下流階層の子供はむしろ勉強を否定することに価値を見いだす。こうして階層化は加速度的に進行した」 と述べている。 一流大学への進学は私立の名門中高一貫校が有利だが、学費が高額であり入学試験に合格するための学習塾の学費も無視できない金額である。これに対し、公立校の中にも中高一貫校があり学費は安いが、藤田英典は「小学生が自主的に遠くの公立中高一貫校を選ぶことはありえず、親の関心・選択が優先することとなり、公立中高一貫校は教育熱心な恵まれた家庭の生徒ばかりになる」と指摘している。また、国立学校については、学費は公立と同様に安いが、入学者の選抜には学力試験があるため、その入試に向けて教育熱心であり、学習塾等の費用をまかなえる経済力のある家庭の優秀な子弟が集まる傾向にあり、特に都市部においては私立名門校と同じようにエリート校化している。 「中高一貫教育#中高一貫教育のメリット・デメリット」および「中高一貫校#問題点」も参照
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