外名撤廃の動き
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/22 23:40 UTC 版)
「エンドニムとエクソニム」の記事における「外名撤廃の動き」の解説
多言語案内標識の例 日本の北海道稚内市内にある経路案内標識。(上から)日本語・英語・ロシア語の3か国語で表記されている。こうしたロシア語表記を併記した案内標識は、ロシア人訪日客が多い北海道の港町でよく見られる。 インドのチェンナイ国際空港最寄りのティルスラム駅(英語版)の駅名標。(上から)タミル語・英語・ヒンディー語の3か国語で表記されている。インドのほとんどの鉄道駅では、このような3か国語(英語・ヒンディー語・現地の言語)以上で表記された駅名標が見られる。 1960年代以来、国連の地名標準化会議は、ヨーロッパを中心とする旧宗主国が第二次世界大戦以前に植民地としていた土地に一方的に命名した外名を排し、現地住民の申し立てに応じた内名を尊重しつつ、地名の標準化を促進し、国際的に外名を削減するよう勧告している。また、国際交流の活発化に伴い、公共交通機関の多言語案内表示の相互利便性を確保する必要性からも地名表記の標準化を図っている。しかし、21世紀を迎えた近年では、以前のように外名を排除するばかりではなく、内名と外名を併記して共存させる試みも行われている。 1995年にムンバイが英語の公式名称を外名の Bombay (ボンベイ)から現地のマラーティー語に基づく内名の Mumbai (ムンバイ)に変更した例のほか、同じく英語の外名の「ベナレス」がヒンディー語の内名の「ヴァーラーナシー」へ、1996年に旧称の「マドラス」がタミル語の「チェンナイ」へ、 2001年に英語の外名の「カルカッタ」がベンガル語の内名「コルカタ」へ、2007年に英語の外名の「バンガロール」がカンナダ語の内名「ベンガルール」へ変更した例など、インド各地ではイギリス植民地時代の外名からの大規模な名称変更が行われている。 かつて象牙の取引が盛んだった、大西洋に面するフランスの旧植民地コートジボワールは、フランス語で「象牙海岸」を意味する Côte d'Ivoire の名で呼ばれ、その他の言語でも、英語で Ivory Coast 、ドイツ語で Elfenbeinküste 、スペイン語で Costa de Marfil 、日本語および中国語で「象牙海岸」というふうに各国語に翻訳された外名が長く使用されていた。しかし、1960年にフランスから独立した後、コートジボワール共和国政府はフランコフォニー以外の国・地域へと外交関係を拡大するにつれて、自国名を翻訳地名で呼称されることによる取り扱いにくさ、不便さが増していった。そのため、1986年に同国政府は、自国の外交儀礼上の正式名称を (République de) Côte d'Ivoire とすることを宣言し、それ以来、国際的な交際の場において、自国名のフランス語以外の言語への翻訳表現を承認・受容することを拒否し、翻訳された外名を使用しないよう各国政府に要請している。[要出典] 詳細は「コートジボワール § 国名」を参照 他に自国名を翻訳した外名の使用を取り止めるよう要請している国には、東ティモールがポルトガル語由来の Timor-Leste へ変更を要請した例、カーボベルデが同じくポルトガル語由来の Cabo Verde へ変更を要請した例が挙げられる。しかし、民間での呼称までは徹底されておらず、翻訳した外名をマスメディアなどが用いている場合がある。 外名の撤廃とは少し性格が異なるが、稀に特定の言語に由来する外名を別の言語由来の外名へ言い換えることがある。この例として、2014年に西アジアのジョージア国政府が日本政府に対して、同国の日本語の外名をロシア語の Gruzia に由来するとされる「グルジア」から英語名の Georgia に準拠した「ジョージア」へ変更するよう要請したことが挙げられる。同国内における正称(内名)は「カルトヴェロ人の国」を意味する「サカルトヴェロ」(グルジア語: Sakartvelo)で、「グルジア」と「ジョージア」はいずれも聖ゲオルギオスに由来する外名である[要出典]。 詳細は「ジョージアの国名」を参照 一方で、議論の俎上に置いた時代[いつ?]の文脈に沿った名称を敢えて使用したり、国家の公用語とその地域で使われている言語が異なる場合に現地[どこ?]の言語を優先したり、既に学術用語として定着しているために古い名称を使用する[誰によって?]場合もある。 2015年にアメリカ合衆国連邦政府が第25代大統領ウィリアム・マッキンリーの名に因むマッキンリー山の正式名称を「デナリ」に変更したり、英国のインド測量局初代長官ジョージ・エベレストに因んで命名された英語名のエベレスト山をチベット語名の「チョモランマ」と呼称したり、英語名とチベット語名に対抗してネパール政府がネパール語名の「サガルマータ」を提示したりするなど、現地名を重視する傾向は自然地名にも見られる。 民族名に関しても、人種・民族差別的な響きがする外名を撤廃する動きがあり、「エスキモー」を「イヌイット」へ、「ジプシー」を「ロマ」へと言い換えた例などが知られている。
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