堆積鉱床
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/15 08:54 UTC 版)
地上の岩石は空気(酸素)と反応したり、成分の一部が雨水に溶出したり、あるいは昼夜や季節の温度差による熱膨張の違いによる鉱物粒子の分離などにより変化してゆく。これらは風化と呼ばれる現象だが、風化によって岩石の一部は粘土化し、大きな岩石は細分化される。風化された岩石は風や河川によって運ばれるが、その途中で比重や溶解性の違いにより各々の鉱石が特定の箇所に集中して堆積し鉱床を形成する。最もわかりやすい例として砂金の鉱床がある。金を含んだ岩石が風化し、雨水に流され河川に運ばれて流れのゆるくなった特定箇所に集中的に堆積したものである。現在採掘されているウラン鉱石も砂金と同様の過程で河川や湖沼に堆積したもので、原生代や中生代に形成された。 雨水による風化で他の成分が溶出して、あとに残った成分が有用である場合も堆積鉱床に分類される。アルミニウムの鉱石であるボーキサイトは、ケイ酸成分やカリウムなどを含んだ元の岩石(例えば長石の一般式は(Na,K,Ca,Ba)(Si,Al)4O8)から、他の成分が水に溶解した結果Al2O3が濃集した物で、産地は雨水による風化力の強い熱帯雨林地域に多い。 水に溶解した成分が海底に堆積した鉱床の代表として、19億年前以前の大陸棚に形成された縞状鉄鉱床と、マンガンの鉱床がある。マンガンについては現在も深海で形成されつつあるマンガン団塊が将来の資源として注目されている。 縞状鉄鉱床の詳細な解説はその項目に譲るが、25億年前まで無酸素状態であった地球で海水に大量に溶解していた鉄成分が、ストロマトライトが光合成で作り出した酸素によって酸化されて不溶化し海底に沈殿・堆積したもの。鉱床の延長が数100キロを超えるものが多く、現在採掘されている大規模鉱山はほとんどこのタイプである。大気中に酸素が充満した19億年前以後は、鉄成分が大量に海中に溶解できなくなったため、スノーボールアースという例外を除けば縞状鉄鉱床は形成されていない。 ウクライナの「ニコポル鉱山」や南アフリカの「カラハリ・マンガン鉱床」などのマンガンの大規模な鉱床は大陸周辺の浅い海に堆積したものが多く、陸地の岩石が浸食されてマンガンが流出し海に供給されて堆積したと考えられている。過去日本で採掘されていた比較的小規模なマンガン鉱山は、海底熱水活動に由来するマンガンが海水中を移動し少し離れた海底に堆積した鉱床が主体で、チャートなどの堆積岩を伴って産出した。なお海底へのマンガンの堆積には酸素の存在が不可欠であり、酸素が少なかった22億年前以前の地層からは堆積性のマンガン鉱床は見つかっていない。このように金属の堆積鉱床の生成においては、生物の影響が考えられる場合がある。 マンガン団塊は世界の海洋底のところどころに見られる直径1cmから20cmの黒色団塊状の鉱石で、地域的には太平洋および北極圏に多く存在している。団塊の成長速度は百万年で平均10mm程度と分析されている。主成分のマンガンと鉄のほかに、ニッケル・鉛・コバルト・モリブデン等の重金属を含んでいるが、成分比率は場所によって異なる。マンガンは地上に大きな鉱山があるが、地上の鉱山資源が極めて限られ地域的にも偏在しているニッケルやコバルトの鉱床として将来性が注目されている。マンガン団塊の成因として海底熱水活動により海水中に供給されたマンガンに起因しているとされているが詳細は十分解明されていない。 太平洋のマンガン団塊の代表的化学組成化学成分中央太平洋海山南部中央北部マンガン13.96% 16.61% 15.71% 16.98% 鉄13.10% 13.92%% 9.06% 10.95% ニッケル0.393% 0.433% 0.956% 0.463% コバルト1.127% 0.595%% 0.213% 0.195% 銅0.061%% 0.185% 0.711% 0.348% 鉛0.174% 0.073% 0.049% 0.106% モリブデン0.042% 0.035% 0.041% 0.029% 水深1757m 3539m 5049m 5048m 生物起源の堆積鉱床として燐鉱石の鉱床があげられる。生物の遺体が堆積してできた燐鉱石が主体であるが、グアノと呼ぶ海鳥の糞や死体が堆積した鉱床も存在した。グアノは現在ほとんど枯渇している。
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