図柄の起源・解釈を巡る主張
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 02:53 UTC 版)
「大韓民国の国旗」の記事における「図柄の起源・解釈を巡る主張」の解説
太極旗の図柄の起源や意味合いに関して、太極旗を初めて作成した李氏朝鮮の関係者は記録を残していない。そのため韓国では、太極旗の図案を「朝鮮固有の文化や伝統ではなく、中国の『周易』からの借りもの」 とする意見がある一方で、「中国の『太極図説』とは関係の無い朝鮮固有の模様」 とする意見があり、見解が分かれている。 韓国が独立するまで、太極旗は「中国(易)の思想・哲学に由来する」との考えが一般的だった。1947年夏 に北朝鮮労働党指導部の一員である社会主義者の金枓奉は、駐朝鮮ソ連軍の将校に対し太極旗の意味について「中国哲学」を基にした説明を行っている。ただし、『易経』を構成する『繋辞伝』には「太極が両儀(陰陽)をもたらし、両儀から四象が生じ、四象が八卦をもたらす」 という易の思想が書かれている。一方で、太極旗は現存の史料によると、「親日派」の朴泳孝がイギリス人船長の助言に従って外国人にも分かり易いデザインとする為に、中国人の馬建忠が提案した太極図の八卦を四卦に減らし、そして四卦の位置を四隅に配列した経緯がある。その為、周易の専門家からすれば太極旗の図案は誤ったものと言わざるを得ず、韓国政府が「国旗製作法」(1949年10月15日公布)で太極旗の図案を確定させた後も、太極旗の陰陽の角度と卦の配列を巡る論争はやむことが無く、韓洪九は、韓国で刊行されている太極旗に関する書籍(2003年時点)の多数が現在の太極旗は誤りであると主張していることを指摘している。 このような易学的観点に基づいた太極旗への批判に対し、韓国政府と韓国の民族主義団体は太極旗を「(朝鮮)民族の象徴」として躊躇なく掲げられるよう、太極旗の起源が朝鮮文化の中にあるとする理論(韓国起源論)を構築・展開して太極旗の「韓国化」乃至は「脱中国化」を推進している。例えば、1957年に「わが国旗を大切にする会」が発行した『国旗解説』 では、太極八卦は檀君の教えに基づいており古朝鮮から使用されてきたと主張している。また、文化教育部元長官(1954年-1956年)の李瑄根(朝鮮語版)は、エジプト・ローマ・アテネ・ビザンチン・アメリカ先住民が使った土器等の古代の遺物や新羅の曲玉など太極と類似した文様を探し出して、太極は「古代の人類共通の宇宙観」を表出しているのであって中国固有のものではないとの「強弁」を展開 している。彼は成均館大学校の総長だった1959年に『私たちの国旗制定の由来とその意義』という論文を発表し、その中で「太極旗のデザインは『周易』から作案されたものではない」から、「中国易学者の思考様式」で「これ以上無駄な解釈論議をし続けることは皆が慎むべき」で、「今後誰しも文化教育部が既に決定したところ」に従い「国旗図案の易学的解釈に固執したり、みだりに主張したりしないように求める」と主張している。その後も「太極旗の韓国化」を目指す試みは続き、1995年には「太極旗が檀君の『弘益人間』 という理念を反映している」と主張する「大韓民国国旗宣揚会」が、太極旗変遷史展示会を開催したときに刊行した図録で、現行の太極旗に似た四卦の太極旗が鮮明に描かれている「1392年製作の梵鐘」を掲載したが、韓洪九は「もし事実であれば驚くべきこと」と評しており、さらに梵鐘の実物は今まで公開されていない。韓国陸軍の機関紙『陸軍』第230号掲載の記事「태극기 유래를 통해서 본 민족정신」は、件の梵鐘は1954年に神奈川県小田原市で発見され、韓国国立中央図書館の「太極旗図説」に鑑定書が収録されていたが、後に行方不明になったと主張している。また、「太極は三国時代から朝鮮民族が愛用してきた伝統的な固有の紋様」である証拠として、太極図説の撰述(1070年)以前に建立(682年)された新羅・感恩寺の礎石に刻まれた「中国の太極図とは形が異なる太極模様」を2008年に朝鮮日報が、次いで百済時代(538年-660年)の遺構から見つかった木製品に書かれた太極文様を2009年に中央日報が、それぞれ提示している。これら「太極旗の韓国化」に関する探究は韓国の百科事典に反映されており、韓国民族文化大百科事典に掲載された『太極旗』の項目では「太極図形の文様と理念は、古代(三国時代)から陰陽思想を理解した朝鮮民族によって、「太極図説」が(中国で)書かれる前から伝統的に使われてきた」との主旨を述べている。 一方、韓洪九は、太極旗の原理の太極と四卦は『周易』が起源であり、「われわれ固有の文化や伝統ではなく、中国の『周易』からの借りものです」と述べている。
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