かねつアスファルト‐こんごうぶつ〔‐コンガフブツ〕【加熱アスファルト混合物】
加熱アスファルト混合物
加熱アスファルト混合物
粗骨材、細骨材、フィラーなどにストレートアスファルトを適量加えて加熱混合したアスファルト混合物、通常のアスファルト混合物のほかグースアスファルト、アスファルト安定処理混合物、アスファルトモルタルなどがこれに属する。
加熱アスファルト混合物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/05 01:31 UTC 版)
「アスファルト混合物」の記事における「加熱アスファルト混合物」の解説
加熱アスファルト混合物は、アスファルトと骨材を加熱して製造する混合物で、新規骨材を使用したものと、アスファルトコンクリート再生骨材を使用した「再生加熱アスファルト混合物」がある。日本では、混合物に使用する骨材の粒度範囲(各粒度の使用割合)によって大きく区分され、密粒度(みつりゅうど)・粗粒度(そりゅうど)・細粒度(さいりゅうど)・開粒度(かいりゅうど)に分けられている。使用する骨材は、最大粒径20ミリメートルのものと、13ミリメートルのものが多く使われていて、例として「密粒度アスファルト混合物(20)」「密粒度アスファルト混合物(13)」のように、各種アスファルト混合物名称の末尾にかっこ書きの数字で表記される。性状は、骨材の最大粒径20ミリメートルものを使用する混合物は、耐流動性、耐摩耗性、すべり抵抗性の性能に優れ、13ミリメートルものを使用する混合物は、耐水性やひび割れに対する抵抗性に優れる傾向がある。タイヤチェーンなどによる摩耗が問題となる積雪寒冷地域向けに使用される加熱アスファルト混合物では、耐摩耗性を向上させるため混合物の配合にフィラーを多く使用する混合物があり、例えば「密粒度アスファルト混合物(13F)」のように、アスファルト混合物名末尾の骨材粒度を示す数字に「F」を付記する。 各種のアスファルト混合物は、舗装に要求される性能に加え、適用箇所、交通条件、気象条件、施工条件などを考慮して選定される。また、水に弱い性質があるため、一般には舗装内部への水の浸入を防ぐことが重要になっている。標準的な密粒度アスファルト混合物がもっている特性を基準として、耐流動性や耐摩耗性で劣る種類のアスファルト混合物には、特性を改善するために改質アスファルトを使用することがある。 下記では、日本で主に使用されている加熱アスファルト混合物の種類について列挙する。 密粒度アスファルト混合物 (密粒度アスファルトコンクリート、密粒度アスコン) 一般的なアスファルト舗装の表層の大部分に用いられている合材で、粒度範囲におけるふるい目2.36ミリメートル通過量が35 - 50%の範囲にあるもの。骨材の最大粒径は通常20ミリメートルものと、13ミリメートルものがあり、一般的な混合物で組成される。混合物が最も密に詰まる骨材粒度の組み合わせで、わだち掘れが起こりにくいことから、一般地域や交通量が多い箇所、急こう配坂路で使用される一般向け用と、積雪寒冷地域用がある。1950年代ごろまで、アスファルト混合物に密粒度と粗粒度の区分はなかったが、1960年代から登場した。積雪寒冷地域向けにフィラーを多く使用したものは、耐摩耗性が向上する一方で、耐流動性は低下するという特徴を有し、急こう配坂路には適用されなくなる。混合物の使用材料は、粗骨材が約55%、細骨材が35%の重量比で配合され、新規骨材と再生骨材の両方が使用される。 粗粒度アスファルト混合物 (粗粒度アスファルトコンクリート、粗粒度アスコン) 主に一般的なアスファルト舗装の基層の大部分に用いられている合材で、粒度範囲におけるふるい目2.36ミリメートル通過量が20 - 35%の範囲にあるもの。骨材の最大粒径は通常20ミリメートルで、一般的な混合物で組成される。混合物の粒度範囲は、密粒度アスコンよりも目が粗い。 細粒度アスファルト混合物 (細粒度アスファルトコンクリート、細粒度アスコン) 一般的なアスファルト舗装の表層に用いられている合材で、粒度範囲におけるふるい目2.36ミリメートル通過量が50%以上のもの。最大粒径は通常13ミリメートル。密粒度アスコンに比べて細骨材分が多く、舗装にしたときに水を通しにくく、ひび割れにくい性質がある。主な使用箇所は歩道で、一般地域用と積雪寒冷地域用があり、共に急こう配坂路では使用されない。歴史的に、摩耗抵抗性に優れるが流動変形しやすいトベカアスファルト混合物や、水密性に優れるが降雨時に滑りやすいシートアスファルト混合物に代わって、1960年代から登場したもので、混合物はかつて修正トベカともよばれた。密粒度アスコンと比較して耐水性と耐ひび割れ性に優れる一方で、耐流動性が劣るという特徴がある。また、積雪寒冷地域向けにフィラーを多く使用したものは、耐摩耗性にも優れている。混合物の使用材料は、粗骨材が約40%、細骨材が約50%の重量比で配合され、新規骨材と再生骨材の両方が使用される。 開粒度アスファルト混合物 (開粒度アスファルトコンクリート、開粒度アスコン) アスファルト舗装の表層の特殊用途として用いられている合材で、空隙率の大きな加熱アスファルト混合物の総称。骨材の最大粒径は通常13ミリメートルで、ふるい目2.36ミリメートル通過量は15 - 30%のもので、アスファルト量は3.5 - 5.5%程度。粗粒度アスコンに比べて空隙率が大きく、舗装表面が粗くなって水が溜まらないため、すべり止めを目的とした舗装として車道に用いられたり、歩道用の透水性舗装に用いられる。また、舗装の空隙間が交通車両が発するタイヤ発生音の抑制や騒音の吸収・拡散に役立てられる。舗装の内部に水が浸入することから、ポリマー改質アスファルトH型などの骨材との把握力が強い改質アスファルトが使われている。1960年代終わりごろから登場したもので、密粒度アスコンと比較して、すべり抵抗性と透水性に優れる一方で、耐摩耗性は劣るという特徴を有する。主な使用箇所は一般地域で、積雪寒冷地域ではあまり使用されない。混合物は新規のみで、再生材は利用されない。 ギャップアスファルト混合物 (ギャップアスファルトコンクリート、ギャップアスコン) 粒度範囲における0.6 - 2.36ミリメートルまたは、0.6 - 4.75ミリメートルの粒径部分が10%未満の不連続粒度になっているものをギャップアスファルト混合物という。スパイクタイヤとタイヤチェーンによる摩耗対策として1970年代終わりごろに登場し、一般の密粒度アスコンと比較して摩耗抵抗性に優れる一方、耐流動性は劣るという特徴がある。密粒度ギャップアスファルト混合物(密粒度ギャップアスコン)と、細粒度ギャップアスファルト混合物(細粒度ギャップアスコン)の2種類があり、どちらも最大粒径は通常13ミリメートルである。混合物は新規と再生材の両方が使用される。密粒度ギャップアスファルト混合物(密粒度ギャップアスコン) 密粒度アスファルト混合物に粒度が似たギャップアスファルト混合物で、0.6 - 4.75ミリメートル粒径部分の骨材をほとんど含まない。密粒度アスファルト混合物と比べ、すべり抵抗性にも優れる一方、耐水性・耐ひび割れ性に欠ける特性がある。主に一般地域と急こう配坂路で使用されている。積雪寒冷地域向けにフィラーを多く使用したものは、耐摩耗性にも優れるが、耐流動性は劣る。 細粒度ギャップアスファルト混合物(細粒度ギャップアスコン) ギャップ粒度をもつ細粒度アスファルト混合物で、0.6 - 2.36ミリメートル粒径部分の骨材をほとんど含まない。混合物中に占めるアスファルト量は6 - 8%程度である。積雪寒冷地域向けにフィラーを多くしたものが利用されており、耐水性・耐ひび割れ性にも優れている。 再生加熱アスファルト混合物 (再生アスファルト混合物、再生アスファルトコンクリート、再生アスコン) 再生骨材を用いて製造するアスファルト混合物のことで、再生骨材に必要に応じて再生用添加剤、新アスファルトや補足材などを加え、加熱混合して製造する。再生骨材は、舗装の補修工事で発生するアスファルトコンクリート発生材のほか、セメントコンクリート発生材、路盤発生材を必要に応じて破砕、分級した骨材が利用される。舗装材のリサイクル技術が確立されて、1980年台半ばから登場した。日本では、全シェアの70%以上で活用されている。混合物の種類により、再生密粒度アスファルト混合物(再生密粒度アスコン)、再生粗粒度アスファルト混合物(再生粗粒度アスコン)、再生細粒度アスファルト混合物(再生細粒度アスコン)などがある。 ポーラスアスファルト混合物 (ポーラスアスコン) 開粒度アスファルト混合物の一種で、特殊な混和材を使用するなどして高い空隙率を確保したもの。いわゆる「空隙率の大きい開粒度アスファルト混合物」とよばれるもので、骨材の最大粒径は通常20ミリメートルものと、13ミリメートルものがある。水の浸入および、おこし状になった混合物の変形しにくさ、耐流動性を高めるため、アスファルトにはポリマー改質アスファルトH型という高弾性の改質アスファルトが用いられる。使用箇所は、排水性舗装や低騒音舗装、車道の透水性舗装の表層あるいは、表層・基層に用いられ、一般地域と積雪寒冷地域の両方に対応する。通常の密粒度混合物は4%程度の空隙率を有するが、ポーラスアスファルト混合物では、20%程度の空隙率を有しており、水を浸透させることが可能である。混合物に使用する素材は、粗骨材が約75%、細骨材が約15%の重量比で配合したものが使われ、再生骨材は利用されない。特徴は、雨水を速やかに排水させる機能があり、密粒度と比較して耐流動性やすべり抵抗性、透水性に優れる一方で、耐摩耗性は劣る。また、舗装表面に水がたまりにくいことから雨天時の視認性向上が図れるほか、走行時の騒音低減効果も有している。雨天時の走行安全性を高めるために開発され、1990年代前半から登場した。 中温化アスファルト混合物(低炭素アスファルト混合物) アスファルトの粘度を一時的に低下させる特殊添加剤の効果によって、通常のアスファルト混合物の製造温度および施工温度を30度程度低減させることのできる加熱アスファルト混合物。通常のアスファルト混合物に比べて、混合物中に発生する微細な泡の効果により混合性が改善されて、製造時の燃料削減や混合温度を下げることでCO2排出量を削減でき、地球温暖化の防止に貢献する合材との見方から、低炭素アスファルト混合物ともいう。混合物製造時に用いられる特殊添加剤には、発泡系、粘弾性調整系、滑剤系などがある。施工温度を低減しても、通常のアスファルト混合物と同等の品質を確保できることから、特に寒冷期における施工性の改善に役立てられている。このため、急速施工、早期交通解放が求められる舗装工事や、薄層施工、寒冷地・寒冷期施工、橋面舗装などの急激な混合物の温度低下が懸念される舗装工事向けに利用されている。地球温暖化問題という課題から開発されたもので、1990年代終わり頃から登場した。
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