冥界の川とは? わかりやすく解説

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冥界の川

関連項目→〔川〕

1.舟で川を渡って冥府にいたる。

狩人グラフスカフカ狩人グラフスは、ドイツ深い森カモシカを追ううちに、岩からころ落ちて死んだ。彼は三途の川の舟に乗せられたが、渡し守が舵を取り間違えた。グラフスの国の美し景色に、渡し守が見とれていたせいかもしれない渡し守方向間違えたばかりに、舟はあの世行き着くことができず、グラフスを乗せたまま、今でもこの世国々水辺さまよっている。

冥府の河に自分の姿を映す→〔水鏡1b『変身物語』オヴィディウス)巻3。

★2a.生きた人間意識失い、舟で冥府の川を運ばれる

『神曲』ダンテ)「地獄篇第3歌 「私(ダンテ)」は生きた人間身体のまま、詩人ヴェルギリウスの霊に導かれて死者の国へ降りて行く。白髪老人カロンが舟を漕ぎ大勢裸体死者たちを乗せてアケロンの川を渡り地獄へ運ぶ。カロン「私」見て、「汝は生者ゆえ通さぬ」と怒るが、ヴェルギリウスが「これは神の意志だ」とカロン命ずる。「私」恐ろしさ昏倒する〔*「私」意識なくした状態で運ばれる〕。

★2b.渡し守眠っている間に、生きた人間が舟に乗って冥府川を渡る

オルフェオモンテヴェルディオルフェオが、死んだエウリディーチェ追って冥府降りようとする。三途の川まで来ると、渡し守カロンテが、「生きた人間を舟に乗せることはできない」と拒むオルフェオは妻への想い歌い上げ、それを聞いてカロンテは眠ってしまう。その隙にオルフェオは舟に乗って冥府にいたる〔*『変身物語』オヴィディウス巻10は、妻の連れ戻し失敗したオルフェウスもう一度冥府の川を渡ろうとして、カロン(=カロンテ)にとどめられた、と記す〕。

★2c.渡し守交代

黄金(きん)の毛が三本はえてる鬼』グリム)KHM29 地獄入口の手前に大きな川があり、舟をこぐ渡し守が「長い年月渡し守をしているが、いつまでたっても替り番が来ない」と嘆く。地獄の鬼の黄金の毛を取って帰って来た少年が、「次に舟に乗った客に、棹を渡してしまえばいい」と教える。慾ばりの王様が舟に乗ったので、渡し守は棹を渡し仕事から解放される王様それ以来ずっと渡し守をしている。

縊死した人の霊は、次に縊死する人が来なければいつまでその場離れられない→〔首くくり〕2の『閲微草堂筆記』「ラン消夏録」47身代わりを待つ幽霊」。

★3.舟に乗るではなく歩いて冥府川を渡る

『日本霊異記』上-30 冥府使い2人が、膳臣(かしはでのおみ)広国を冥府連行し長い道のりを歩いて行く。大河(おほかは)にかかる金(こがね)で塗り飾った(はし)を渡ると、そこは度南(となん)の国であった。広国は、亡妻亡父が苦を受けるありさま見てから(*→〔釘〕5)、現世帰った

深い河かかったを渡る→〔坂〕3a『日本霊異記』下-22

『日本霊異記』下-9 冥官3人が、藤原広足を冥府連行する前方深い河があり、黒いが、流れことなく静かに淀んでいた。代わりに若木を河に浮かべたが、両端とも岸に届かない先導する冥官が、「汝、この河に入り、私の後をついて来い」と命じ、広足は冥官足跡を踏むようにして、河を渡った

★4.冥界にある忘却の川。

『国家』プラトン第10巻 死者の魂たちは、それぞれ次の生涯どのような運命を選ぶか決めた後、忘却の野まで行き放念の河のを飲む。飲んだとたん、彼らは一切のことを忘れてしまう。

『神曲』ダンテ)「煉獄篇」第2833ヴェルギリウス導かれ、「私(ダンテ)」は煉獄経て地上の楽園到る。泉から、悪を忘却させるレテ川と善を想起させるエウノエ川が流れ出ており、マテルダ夫人「私」身体両方の川に浸し飲ませて「私」新生させる。

現世にある忘却の川→〔川〕9の『団子婿』(昔話)。

★5.精霊界から霊界移転する途中大河

『私は霊界見て来た』スウェーデンボルグ第1章の7 「私(スウェーデンボルグ)」が精霊界で、眼前広がる野原ながめていると、精霊界周囲山脈「私」の方へ迫って来た。山の向こう抜ける口が開き、そこを通って「私」大きなの上空を飛んで行った河幅は、東洋ガンジス河揚子江よりはるかに広くはゆったり流れていた。河を越え、やがて眼下に海が見えて前方小さな星が、巨大な光のかたまりになった「私」気を失い、眼を開けると、赤茶けた色の広漠たる世界来ていた。ここが霊界なのだ。

★6.冥界の川の手前で引き返す

現代民話考』松谷みよ子)5「死の知らせほか」第1章の2 ある男落馬して死んだが、1日ほどして生き返り語った。「流れ速い大河向こうに近年亡くなった知り合いたちが並んで手招きする。その中に叔父がいて、「お前の来る所でないぞ」と叫び、こわい顔でにらむ。迷っていると、後ろから呼び声がするので、振り返ったとたん息を吹き返した。あの大河こそ、三途の川であったろう」。男はその後20年長生きし明治中頃没した山形県)。

*川の向こうに死者見える→〔川〕8の『ムーンライト・シャドウ』(吉本ばなな)。

三途の川沿いに、山を登って行く→〔山〕7dの『現代民話考』(松谷みよ子)7「学校ほか」第1章怪談」の17

三途の川を汲む→〔熱湯4dの『檜垣』(能)。

死者三途の川落ちるとどうなるか→〔逆さまの世界〕8の『地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)』(落語)。




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