光通信速度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 18:30 UTC 版)
「ブロードバンドインターネット接続」の記事における「光通信速度」の解説
アクセス回線の分岐数、プロバイダー (ISP) との境界であるネットワーク終端装置(PPPoEの場合)や仮想固定通信提供者 (VNE) との境界である網・網インタフェース(NNI; IPoEの場合)の回線容量、ISP内又はVNE内のルーターの処理能力や回線容量、バックボーンの回線容量やインターネットエクスチェンジの交換能力などがボトルネックとなってるため、通信規格最高速度を宣伝していても実際の通信速度は低くなる。 Clip 受動光ネットワーク (PON) の図。四角A、四角B、四角C、四角Dは1:1のユニキャストパケット、丸Vは1:多のマルチキャストパケット。 民生向けFTTHサービスでは回線の帯域が契約者間で共有されており、例えばNTTの「フレッツ光」のアクセス回線では光スプリッタ(光分岐器)によって1Gbps契約の場合に予備も含めて最大32分岐(1分岐当たり約30Mbps)、10Gbps契約の場合に予備も含めて最大64分岐(1分岐当たり約150Mbps)されて、その帯域が契約者間で共有されることとなる(シェアドアクセス方式)。平均分岐数は2016年度末にNTT東日本で11.8分岐・NTT西日本で7.0分岐だったものが、2020年度末にはNTT東日本で14.4分岐・NTT西日本で7.9分岐まで悪化している。 この光スプリッタを挟んだ光アクセス回線の受動光ネットワーク(PON)での多重化では、帯域を共有しない WDM-PON(波長分割多重化PON)という仕組みも存在するが、2010年の Atlantic Engineering Group の試算によれば WDM-PON は現状の時分割多重化 (TDM) の GPON に比べて1契約当たり2倍前後のコストが掛かるとされている。そのためTDMとWDMを組み合わせた TWDM-PON (NG-PON2(英語版)など) が策定されているものの、2022年現在普及はまだとなっている。2021年現在NTTはオールフォトニクス・ネットワーク(APN)の構想を持っており、将来的に時分割多重化を止め1人1波長を導入する予定としている。 業務向けFTTHサービスではアクセス回線を共有せずに(局外光スプリッタを使わずに)直接繋いだシングルスター(芯線直結)方式も使われている。以前は家庭向けでも初期の「Bフレッツ ニューファミリータイプ」がシングルスター方式を採用していた。なお光ファイバーの耐用年数は2019年度時点で架空区間が20年、地下区間が28年、海底区間が21年となっているが、2005年時点のNTT東日本へのインタビューによれば光ファイバ断線の7割は局外光スプリッタを収めるクロージャー内で起きているとされ、その後もNTT東日本はクロージャー接続部での故障を強調している。 また網終端装置やインターネットサービスプロバイダ網内ではより多くの契約者での帯域の共有が行われている。例えばNTT東日本のPPPoE接続では多数のPPPoE網終端装置が使われており、C-20型網終端装置の場合に1Gbpsが1,600セッションで、E型網終端装置の場合に10Gbpsが16,000セッションで共有されている(1セッション当たり625kbps)。一方、IPoE接続ではPPPoE網終端装置を用いず、小数の大容量ゲートウェイルータを全体で共用するため、このボトルネックは存在しない。 また通信速度は宅内のローカルエリアネットワーク (LAN) の通信機器やケーブルの品質や電波/電磁波状況にも影響されうる。宅内無線LAN(Wi-Fi)機器の交換は無線従事者の資格が不要なため自分で行うことが可能であり、宅内LAN配線の交換も電気工事士の資格が不要なため自分で行うことが可能となっているものの進んでおらず、総務省の「インターネットトラヒック研究会」では「集合住宅や宅内の通信環境の改善に向けた啓発活動の実施」が行われる予定となっている。 日本の光通信速度は年々悪化を辿っており、2010年のAkamaiの調査で世界3位だった状態から、2019年の日本経済新聞の調査で日本の夜間の速度が東南アジア以下まで転落している。これは業務サービスにも影響を及ぼしており、例えば同年5月にセガ及びバンダイナムコテクニカが通信環境の悪化によるアーケードゲーム筐体の動作不良を公表したほか、同年8月のWindows Updateでは通信各社に輻輳が発生して通信障害が起き、一部の店舗で電子マネーやクレジットカード認証が使えなくなるなどの実害に繋がっている。 2020年より総務省は固定ブロードバンドの実効速度の計測手法の検討に着手した。 2021年に発表された東京工業大学のiNoniusプロジェクトによる通信速度調査の結果によれば、PPPoE接続の約12%、IPoE接続の約4%が下り20Mbps以下となっており、その約半数が下り10Mbps以下となっていた。
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