人妻
★1.人妻を奪う。
『ギリシア神話』(アポロドロス)摘要第3章 トロイアのパリスは、スパルタのメネラオスの所で9日間歓待された。10日目にメネラオスがクレタに旅立ったので、パリスは、メネラオスの妻ヘレネに自分と一緒に出奔するよう説いた。ヘレネは9歳の子ヘルミオネを残し、財宝を船に積んで、パリスとともに海に出た。
『今昔物語集』巻22-8 大納言国経は80歳になろうとする老齢だったが、20歳をこえたばかりの美貌の若妻を持っていた。国経の甥にあたる左大臣時平は30代の壮年で、若妻目当てに、正月3日に国経邸を訪問する。高位の左大臣が年始に来てくれたというので感激する国経にむかい、時平は特別の引出物を要求する。酔った国経は最愛の若妻を、引出物として時平に与えてしまう〔*『少将滋幹の母』(谷崎潤一郎)前半部の原話〕。
『それから』(夏目漱石) 高等遊民の長井代助は、三千代を愛しながらも、友人平岡常次郎のために恋を譲り、平岡と三千代の結婚の世話をする。三年後、代助は平岡夫婦と再会するが、三千代の不幸な結婚生活を気づかううち、ついに代助と三千代は関係を持つ。代助は平岡から絶交され、父や兄からも義絶されて、職を探しに炎熱の街へ出て行く。
『天国と地獄』(オッフェンバック) 地獄の王プリュトンが羊飼いに変身し、音楽家オルフェオの妻ユリディスの愛人になる。やがてプリュトンは正体をあらわし、ユリディスを地獄へ連れ去る〔*オルフェオにもニンフの愛人がいて、夫婦とも内心では離婚を望んでいるが、「世論」の説得で、オルフェオはユリディスを連れ戻しに地獄へ降りる〕→〔禁忌〕4。
*王が家来の妻を奪う→〔水浴〕2の『サムエル記』下・第11章。
*殿様が百姓の妻を奪う→〔肖像画〕1aの『絵姿女房』(昔話)。
『イリアス』第1歌 トロイア遠征軍の総大将アガメムノンは、神官の娘を手に入れるが、アポロン神が陣中に悪疫をもたらしたために、やむなく彼女を手放す。アガメムノンは腹いせに、アキレウスの愛妾ブリセイスを強引に奪い取る。アキレウスは怒って戦線を離脱する。
『谷間の百合』(バルザック) 20歳のフェリックスは舞踏会でモルソフ夫人を一目見て心奪われ、思わずその肩に接吻する。フェリックスは夫人を熱愛するが、夫人は、横暴な夫と病弱な子供を裏切ることなく、母親のような愛情のみでフェリックスに接する。満たされぬ思いのフェリックスは、ダドレー夫人に誘惑されてその愛人になる。それを知ったモルソフ夫人は、激しい嫉妬から病を発し、死ぬ。
『天の夕顔』(中河与一) 大学生の「わたくし」は7歳上の人妻と知り合う。彼女には一子があり、夫は洋行中だった。「わたくし」と彼女は肉体的に結ばれぬまま、断続的に逢瀬と別れを繰り返す。その間「わたくし」は別の娘と短い結婚生活をしたり、飛騨の山中に独居したりする。40歳になった「わたくし」に、彼女は「5年たったら逢いに来てもよい」と告げるが、約束の日の前日に彼女は死んだ。それが23年間の恋の帰結だった〔*→〔白髪〕3aの『感情教育』(フロベール)では、27年間に渡る人妻への恋が語られる〕。
『若きウェルテルの悩み』(ゲーテ) 1771年6月にウェルテルはロッテに出会い、恋におちる。彼女はすでにアルベルトと婚約しており、半年余の後に婚礼が行なわれるが、ウェルテルのロッテへの思いはやむことがない。1772年12月21日、アルベルトの不在中にウェルテルはロッテの家を訪れ、彼女を抱きしめ唇に接吻する。22日夜中の12時にウェルテルはピストルで右眼上から頭を撃ち抜き、23日正午に息を引き取る。
★4.夫のもとへ戻る人妻。
『逢びき』(リーン) 中年の主婦ローラは、毎週木曜日に町へ買い物に出かけ、妻子持ちの医師アレックと知り合う。2人は互いに好意を抱き、週に1度のデートをする。6週目、アレックの友人の部屋で2人は性関係を持とうとするが、友人が早く帰って来たので、ローラは逃げ出す。彼女は自分を惨めに感じ、アレックに別れを告げる。アレックも、外国の病院への転勤を決意する。7週目の木曜日、最後のデートをして帰宅したローラに、夫は「戻ってくれて嬉しいよ」と言う。
『マディソン郡の橋』(イーストウッド) マディソン郡の田舎。夫と2人の子供が遠方に出かけ、中年の主婦フランチェスカは4日間、1人で留守番をする。初老の独身カメラマン、ロバートが橋の写真を撮影に来て道に迷い、フランチェスカに橋の場所を尋ねる。2人は恋に落ち、出会って2日目の夜に性関係を持つ。ロバートはフランチェスカに「一緒に行こう」と言うが、フランチェスカは家族を捨てることができない。ロバートは1人で去り、フランチェスカは家族の帰りを出迎える。
*青年(イタリア人)と人妻(アメリカ人)の恋→〔映画〕7の『終着駅』(デ・シーカ)。
『軽蔑』(ゴダール) 劇作家志望のポールは、映画プロデューサーのプロコシュから、撮影中の映画シナリオの改訂を、報酬1万ドルで依頼される。ポールには美しい妻カミーユがおり、プロコシュはカミーユに目をつけて言い寄る。ポールはプロコシュに遠慮し、見て見ぬふりをする。そのくせ2人きりになると、ポールは嫉妬してカミーユを責める。カミーユはポールに「軽蔑するわ」と言い、別れる決心をする。カミーユはプロコシュとともに自動車で去る。しかし大型トラックと衝突して、2人とも死ぬ。
★6.人妻との恋を成就させる。
『隣の嫁』『春の潮』(伊藤左千夫) 明治時代の農村。19歳の省作は、この春中学を終え、今年から百姓として働き始めた。隣家へ嫁に来たおとよさんは、省作と同年の19歳であるが、夫を嫌い、省作に好意をよせる。省作も、おとよさんの気持ちを知って、胸をときめかせる。おとよさんは夫と別れ、里へ帰る。省作は他村へ婿養子に行くが、おとよさんとの噂がたったためか、破縁になる。互いに思い合う2人の仲を両家の親たちも認め、省作とおとよさんは結婚できることになった。
*人妻に恋をしかける→〔演技〕5の『藤十郎の恋』(菊池寛)。
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