予備役から現役復帰へ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 10:28 UTC 版)
「エセックス級航空母艦」の記事における「予備役から現役復帰へ」の解説
エセックス級はアメリカ海軍の主力空母となったものの、第二次世界大戦後の海軍の縮小に伴い、1948年までに半数以上が予備役に編入された。当時のアメリカ海軍の艦載機が核兵器(重量5トン前後)を運搬できない点も空母不要論に拍車をかけた。 しかし1950年6月25日に朝鮮戦争が勃発し、命運は大きく変わる。この時点で現役に留まっていた艦は「ボクサー」、「レイテ」、「ヴァリー・フォージ」、「フィリピン・シー」のみ(なお、「オリスカニー」が建造中、「エセックス」、「ワスプ」、「キアサージ」がSCB-27A改装中、「レイテ」も改装を受ける予定)で、このうち極東にいたのは「ヴァリー・フォージ」ただ一隻であった。フィリピンのスービック湾にいた「ヴァリー・フォージ」は沖縄の中城湾でイギリス空母「トライアンフ」と会合し、第77任務部隊(英語版)を編成した。7月3日からの平壌空襲では「ヴァリー・フォージ」からF9F戦闘機が出撃し、初めて実戦でジェット機を出撃させた空母となった。 以後、第77任務部隊は8月に「フィリピン・シ-」やコメンスメント・ベイ級航空母艦「シシリー」、「バドエン・ストレイト」が増援として到着するまで2隻で釜山橋頭堡に航空支援を行い、これを支え続けた。この間、7月14日から22日にかけて「ボクサー」が航空機輸送任務として空軍のF-51戦闘機145機、約1,000名の兵員をサンフランシスコから横須賀まで8日と半日で太平洋を横断して送り届けるという記録を作った。これは当時の船舶による太平洋横断の世界記録となった。 1950年9月10日の仁川上陸作戦には「ヴァリー・フォージ」と「フィリピン・シ-」が参加し、15日の上陸当日には「ボクサー」も増援として加わった。 SCB-27改装の完了した艦に加え予備役にあった艦も続々と現役に復帰し、3年間の戦争期間中に11隻(「エセックス」、「ボクサー」、「ボノム・リシャール」、「レイテ」、「キアサージ」、「オリスカニー」、「アンティータム」、「プリンストン」、「レイク・シャンプレイン」、「ヴァリー・フォージ」、「フィリピン・シー」)が参加し、当時根強かった空母不要論を打ち破る活躍を見せた。任務の中にはB-29爆撃機の護衛などもあった(レシプロ機から初期のジェット機への過渡期の時期であり、第一級の戦闘機の航続距離が一時的に短くなったため)。特筆すべき戦果として、「プリンストン」の雷撃機隊が北朝鮮の華川ダムに雷撃を行い破壊した事が挙げられる。 1950年代半ばまでには「フランクリン」及び「バンカー・ヒル」以外のほぼ全隻が現役復帰した。エセックス級の後継の空母としてミッドウェイ級があったが3隻しか建造されず、朝鮮戦争にも投入されていない。 この時期、冷戦のグローバル化が進んでおり、またAJ サヴェージやA3Dスカイウォーリアーといった艦上攻撃機の登場によって本級も核抑止任務を遂行可能となったこともあり、SCB-27A/C改装とSCB-125改装により本級の運用寿命延伸が図られた。1952年10月には「攻撃空母」(CVA)の艦種が新設されたが、新型のミッドウェイ級やフォレスタル級とともに、エセックス級のうち蒸気カタパルトの搭載等で特に能力の高い艦もこれに種別変更された。 一方、大戦中より、アメリカ海軍においては軽空母 (CVL) や護衛空母 (CVE) が対潜戦を担当してきたが、1954年に登場した新型の艦上哨戒機であるS2Fは、極めて高性能である一方でかなり大型の機体であり、これらの小型空母では運用困難となっていた。ミッドウェイ級やフォレスタル級など大型空母の増勢、潜水艦を主戦力としていたソ連海軍に対抗する必要性もあり、新艦種対潜空母 (CVS)が新設され、1953年よりエセックス級のうちまずSCB-27改装未実施艦がこれに艦種変更されることとなった。その後、1956年からは、SCB-125改装艦からもCVSに艦種変更される艦が出始めており、最終的には「ハンコック」、「ボノム・リシャール」、「オリスカニー」を除く全艦がCVSとなっている。これらのエセックス級対潜空母のうち、「エセックス」と「ランドルフ」は1962年のキューバ危機において指揮下の駆逐艦部隊と共同でソ連海軍が派遣したフォックストロット型潜水艦4隻の内3隻を捕捉し、キューバ沖から退去させている。 ベトナム戦争開戦時にはSCB-125/SCB-27C改装艦5隻が攻撃空母籍に残っており、うち4隻(「タイコンデロガ」、「ハンコック」、「ボノム・リシャール」、「オリスカニー」)がベトナムにおける空対空・空対地任務に投入された。また対潜空母籍にあった9隻についても、航空機運用能力が高いSCB-125/SCB-27C改装艦のうち2隻 (「イントレピッド」、「シャングリラ」) は攻撃機のみ60機を搭載する攻撃空母として運用されたほか、その他の艦も対潜哨戒・航空救難任務にあたった。また、強襲揚陸艦に改造された「ボクサー」、「プリンストン」、「ヴァリー・フォージ」もベトナムに投入された。 なお、ボノム・リシャール(CVA-31)は第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争のすべてに参加した唯一の空母である。
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