SCB-27A/C
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「エセックス級航空母艦」の記事における「SCB-27A/C」の解説
大戦末期のジェット機の登場によって航空機の性能は飛躍的に向上したが、その一方、特に初期のジェット機は、失速速度が比較的速く (低速安定性が低く) 、加速が悪く、機体重量が重かったことから、艦上機としての運用は困難なものであった。このため、まず1946年よりSCB-27 (Ship Characteristics Board) 改装が開始された。本改装は当初、新鋭のミッドウェイ級への適用が検討されていたものの、改装のために新鋭空母が長期間戦列を離れることは許容しがたかったことから、まず工程85パーセントで建造が中断されていた「オリスカニー」にH8油圧カタパルトの装備や飛行甲板や艦橋構造物の全面再設計などの改装をSCB-27として施した上で建造を再開した。また、「オリスカニー」の工事完了を待たず本改装に準拠したSCB-27A改装が予備役艦を優先して開始され、1949年の「エセックス」、「ワスプ」を筆頭に8隻が改装された。 SCB-27Aは、大重量のジェット艦上機の運用に耐えるよう飛行甲板とエレベータの構造を強化するとともに、カタパルトを油圧式の最終発達型であるH8に、アレスティング・ギアも一括して能力向上型のMk.5に更新するものであった。飛行甲板拡張のため、アイランド前後の38口径5インチ連装砲は撤去された一方、近接防空力強化のため、40mm機銃は新型のVT信管対応速射砲である50口径3インチ連装砲に換装された。また飛行要員の待機室は防御を考慮してギャラリー・デッキから格納庫甲板下層に移され、待機室から飛行甲板までの長大なエスカレーターが設置された。これはアイランドの下部に設置され、右舷舷側の斜めのダクト状構造物からも確認できる。エスカレーターの設置は艦載機のジェット化以降に重量が増加し移動が困難になったパイロットの装具への対応でもあった。 一方、1951年末以降に改装された6隻はSCB-27Cと呼ばれる設計が採用された。これはイギリスから導入された蒸気カタパルトの技術を導入したもので、射出能力は飛躍的に増強された。「ハンコック」と「タイコンデロガ」にはイギリスから輸入されたブラウン・ブラザーズ社製BSX-1が装備されたのち、これをもとに蒸気圧を高めたC11がアメリカで開発され、以後の艦はこちらに切り替えた。カタパルト始点には昇降式のジェット・ブラスト・デフレクターが設置されるとともに、機体停止用のバリケードはナイロン・バリアに換装された。後部 (第3) エレベータも、飛行甲板上にあったものを右舷側に移し、これにより本級のエレベータ3基のうち2基がデッキサイド式となった。また重要な点として、本改装を受けた艦は核兵器の搭載・運用能力も与えられた。 SCB-27A、SCB-27Cいずれの工期も2年にわたる大規模なもので、蒸気カタパルトを装備するSCB-27C改装のほうが数ヶ月、工事は長いものであった。なお、本改装で「短船体型」の艦も艦首の延長工事を受けたため、「長船体型」との区別はなくなった。
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