主なピコプランクトン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/02 06:03 UTC 版)
「ピコプランクトン」の記事における「主なピコプランクトン」の解説
海洋におけるピコプランクトンは現在のところシネココッカス(Synechococcus)、プロクロロコッカス(Prochlorococcus)、ピコ真核プランクトン、従属栄養性細菌の4群に大別される。また、近年古細菌(アーキア)についての報告も増えている。 シネココッカス 淡水では古くから知られていた Synechococcus であるが、海洋での存在が報告されたのは1979年である。Synechococcus は球状で単細胞の藍藻(シアノバクテリア)であり、細胞径は1 μm程度。蛍光顕微鏡下では青色光の励起により橙色の粒子として観察されるが、これは細胞が持つフィコエリスリンによるものである。極域を除く沿岸から外洋までの有光層に広く分布し、細胞密度は1 mlあたり10,000細胞程度である。 プロクロロコッカス Prochlorococcus は1986年に報告された、球状もしくはややつぶれた球状の単細胞シアノバクテリアである。細胞長は0.6 μmほどである。フィコエリスリンをほとんどもたず、ジビニルクロロフィル a/bを光合成色素として有する点が特徴的である。この緑藻に似た色素組成から、古くは原核緑藻と呼ばれた事もある。よく成層した亜熱帯および熱帯域の有光層に分布し、細胞密度は1 mlあたり100,000細胞以上に達することもある。地球上で最大のバイオマスを誇る光合成生物とも言われる。 シネココッカスとプロクロロコッカスはともにシアノバクテリアのサブグループであり、共通祖先から分岐した。 従属栄養性細菌 極めて多様。真正細菌(バクテリア)の項を参照のこと。 古細菌(アーキア) 深海中でタウム古細菌(Thaumarchaeota)と呼ばれる系統が優占する。16S rRNAクローンから推測される存在量は膨大であるが、培養は極めて困難なためFISH法などの分子生化学的手法が開発されるまで発見されなかった。水族館のフィルターから同系統の"Nitrosopumilus maritimus"が単離されている。この菌は海水中でアンモニア酸化を行う。また、ユリアーキオータに属し、有光層にみられるMarine group IIなどについても報告例がある。 ピコ真核プランクトン ピコ真核プランクトンは真核性のピコプランクトンの総称であり、緑藻類およびプラシノ藻類などが含まれる。ほぼ全世界の海洋の有光層に分布するが、亜熱帯域の外洋では高密度では存在しない。細胞密度は海域により大きく異なる。形態学的な特徴に乏しく、電子顕微鏡を用いなければ種の同定、分類もままならない状態であったため、その存在は古くから知られていたが、研究は上記2群に比較すると立ち遅れていた。 1990年以降、ピコプランクトンに対する様々な研究手法が確立されてきたのを受け、その多様性が明らかになると共に分類群の新設が進められてきた。1993年に、Robert A. Andersen が不等毛植物の新たな綱であるペラゴ藻綱を設立した。翌1994年には非常に小さな緑藻類である Ostreococcus tauri が発見され、沿岸域において重要な生態的地位を占める事が示唆された。1999年には、珪藻に近縁なピコプランクトンであるボリド藻綱も作られた。現在のところ、様々な分類群に渡って50種以上のピコ真核プランクトンが知られている。 ピコ真核プランクトンの例(参考文献1より引用、一部改変)数値はおおよその細胞径を表す。 緑色植物門 緑藻綱 ChlorophyceaeChlorella nana Butcher1.8-2.6 μm Nannochloris eukaryotum Naumann 0.8-2.2 μm プラシノ藻綱 PrasinophyceaeOstreococcus tauri Courties et Chretiennot-Dinet 1995 0.8 μm Ostreococcus oceanica 0.8 μm Pseudoscorfeldia marina Manton 2-3 μm Pycnococcus provasolii Guillard 1990 1-4 μm Bathycoccus prasinos Eikrem et Throndsen 1990 1.5-2.5 μm Prasinococcus capsulatus Miyashita et Chihara 1995 3.5-5 μm Prasinoderma coloniale Hsegawa et Chihara 1996 2.5-5 μm Mantoniella squamata (Manton et Parke) Desikachary 3-5 μm Micromonas pusilla (Butcher) Manton et Parke 1-1.5 μm Resultor micron (Throndsen) Moestrup 2-4 μm 不等毛植物門 黄金色藻綱 ChrysophyceaePicophagus flagellatus Guillou et Chretiennot-Dinet 2000 1.5-2 μm Tetrapalma pelagica Booth 1987 2-5 μm 真正眼点藻綱 EustigmatophyceaeNannochloropsis atomus 1.5-4 μm Nannochloropsis maculata 1.5-4 μm Nannochloropsis oculata (Droop) Hibberd 1.5-4 Nannochloropsis salina Hibberd 1.5-4 μm Nannochloropsis gaditana Lubian 2.5-5 μm Nannochloropsis granulata Karlson et Potter 1982 2-4 μm ペラゴ藻綱 PelagophyceaePelagococcus subviridis Norris 1977 2.5-5.5 μm Pelagomonas calceolata Andersen et Saunders 1993 1.3-3 μm Aureococcus anophagefferens Hargraves et Sieburth 1988 2-4 μm Aureoumbra lagunensis Stockwell et al. 1997 2.5-5 μm ピングイオ藻綱 PinguiophyceaePinguichrysis pyriformis Kawachi 2002 1-3 μm ボリド藻綱 BolidophyceaeBolidomonas pacifica Guillou et Chretiennot-Dinet 1999 1.5-2 μm ビコソエカ類 Bicosoecophyceae(無色ストラメノパイル)Symbiomonas scintillans Guillou et Chretiennot-Dinet 2000 1-2 μm ハプト植物門 プリムネシウム藻綱 PrymnesiophyceaeImantonia rotunda Reynolds 1974 2-4 μm 参考:真核ピコプランクトンの一覧(英語) また、海水などの環境サンプルから直接DNAを抽出し、系統解析を行う手法(メタゲノム解析)により、培養が困難な真核ピコプランクトンの存在が認識されるようになった。この場合の分子種としては、真核生物特異的である18S rRNA配列がよく用いられる。これにより、未知のピコプランクトンを系統樹上にマッピングする事が可能となった。このような手法は、1990年代以降にバクテリアに対して用いられてきたものであり、真核生物に応用されるようになったのはほんの10年ほど前の事である。明らかにされたピコ真核プランクトンの多様性は、未だその全体像の一端に過ぎない。
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