リクライニングシート
背もたれの傾斜角度を調整する機構を備えたシート。リクライニングシートはスライド調整と合わせて、運転席についてはトラックを含めほとんどのクルマに採用されている。高床についてはセダン系の場合、ボディ構造との関連でリクライニングは少ない。一部上級車には、パワー機構とあわせて座面の前出しと背もたれの角度が変えられるタイプもみられる。1ボックスや2ボックスのRV系のクルマはリヤ席もリクライニングシートの採用が多い。バン系の場合、リヤ席の格納式は多いが、リクライニングシートは主流には至っていない。
参照 リクライニングアジャスターリクライニングシート
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/30 08:28 UTC 版)

国鉄キハ181系気動車キロ180形
西日本JRバス 744-2991
リクライニングシート(reclining seat)とは背もたれを後方に傾斜できる椅子。
概要
目的
椅子の座面と背もたれの角度を任意の角度で調節出来ることで着座している人の姿勢を変えることが出来る。読書や睡眠、映画鑑賞などに適した姿勢にする、治療などの目的で施術しやすい姿勢にする、トレーニングを効率よく行うための姿勢にするなどの目的がある。
交通機関
19世紀中頃にアメリカで発明され、大型の一人がけのものが、中距離の昼間の列車の優等車両「パーラーカー」に、二人がけのものが「チェアカー」として、競争の激しい路線や、長距離路線の座席車で、サービス向上のために使用された。
日本では高速バスの夜行便の座席が代表的な例である。
日本での本格的な導入は、1950年の特別二等車スロ60形客車が起源とされる。これは機械式で、背もたれの角度を5段階に調節できるものであった。
現在、鉄道以外の交通機関、すなわち自動車、航空機、船舶に於いてもリクライニングシートは普通に採用されている。航空機のファーストクラス・ビジネスクラスや乗用車では、ほぼフラットになるものもある。また、中には足をおくフットレストやオットマンを装備しているものもある。
その他の使用例
一般的には前述のような乗物のそれを指す場合が多いが、以下のように、他の分野のものもある。
- 歯科医院で使用する治療椅子。ユニットと呼ばれる
- 医療、介護用の椅子あるいはベッド。
- 車椅子
- 理容、美容院で使用する理容椅子。
- 日本ではタカラベルモントが1921年からリクライニング機能付を製造している。
- プラネタリウム、オムニマックスなどの全天型の劇場用の座席。
- 温泉、サウナなどの保養施設の休息用寝椅子。前方のテレビと連動したオーディオ設備付が多い。
- 海水浴場、プールサイドなどでのビーチチェア、サマーベッド(ボンボンベッド)の類。
- 座椅子、ソファー、事務用の椅子においても背もたれが傾くものがある。
- ベンチプレス用のベンチでリクライニングする物もあり、「インクラインベンチプレス」や「デクラインベンチプレス」と言う種目で使われる。
操作・機構
操作は概ね座席の脇にあるレバーかボタン、ダイヤルで行う。レバー式のものはレバーを引きながら、ボタン式のものはボタンを押しながら背中を背もたれに押し付けることで背もたれが倒れる。同じ操作をしながら背中を離すと背もたれが元に戻る。ダイヤル式は座席脇のダイヤルを回転させる。
背もたれの角度を数段に調節する機械式と、油圧シリンダーにより好みの角度で背もたれを固定できるものがある。乗用車では機械式が一般的であるが、鉄道・バス等の大量輸送機関においては、1980年代以降は油圧シリンダー方式が主流である。
またスイッチを押すことにより背もたれの角度が変わる電動式のものもあり、治療椅子や理容椅子などの据え置き式のリクライニングシートでは一般的である。また、近年では、モーターの小型化により座席の構体内に動力機構を収容できるようになったこともあり、航空機のファーストクラス・ビジネスクラスなどや高級自動車でも採用されている。
機械式のものには操作レバーなどがなく背もたれを前に起こしながら適当な角度にすることでロックがかかり固定されるものがある。さらに前に倒すことでロックがはずれ後ろへ倒すことができる。
単に座席全体が後ろに傾く機構のものもリクライニングシートやチェアという場合がある。ただし、座面と背もたれの角度の関係は変化していないのでリクライニングではないという考えもある。
事務椅子や全天劇場用では背中を押し付けて傾けるだけのものが多い。席をはずすとバネなどの力で元にもどる。
ビーチチェアなどより簡素なものでは支柱の位置を移動するなど簡単なしくみで傾きを調整する(調整する場合はチェアから降りる必要がある。)。
ベンチプレス用のベンチは、足の部分に穴が複数あり、ピンの差し込む位置でリクライニングを調整する(調整する場合はベンチから降りる必要がある。)。
乗客間のトラブル
リクライニングシートの前後間隔が狭い場合、前席の乗客が背もたれを倒すことで後席のスペースを圧迫するほか、急激に背もたれを倒した場合などに後方の乗客の体に当たり、乗客同士でのトラブルに発展する事例がある。アメリカ合衆国内の航空便においては、リクライニングシートに関するトラブルで2014年8月から9月の9日間で緊急着陸が3回発生している[1]。
前席背面のテーブルの支柱にはめ込んで前席の背もたれを押さえ込み、倒すことが不可能になる器具「ニー・ディフェンダー」も販売されているが、アメリカ合衆国の多くの航空会社では使用を禁止している[2]。
日本では夜行の高速バスでリクライニングのトラブルや後席への気遣いが発生することがあるが、いわさきコーポレーション(鹿児島交通)のある運転手が「後腐れないように」として一斉にリクライニングするよう車内アナウンスしたところ、その事が乗客とみられるユーザーのTwitterで取り上げられ話題になった[3]。VIPライナーなど一部の高速バスでも、運転手が「一斉にリクライニングしてください」とアナウンスをする取り組みを行っている他[4]、オリオンバスでは予め背もたれを倒した状態で運行することも行われている[5]。
一方で、バックシェルを導入することで後席に影響しないようにする事例もあるが[4]、この場合はシートピッチ(前後間隔)をある程度広く取らなければならない。鉄道車両では近畿日本鉄道が80000系「ひのとり」で業界で初めて全席にバックシェルを導入したが、シートピッチは一般的なレギュラー車で1,160mm(JRの優等列車グリーン車相当)となっている[6]。
出典
- ^ “米旅客機、リクライニングめぐりまた緊急着陸 9日間で3度目”. AFPBBNews (フランス通信社). (2014年9月3日) 2014年9月3日閲覧。
- ^ 乗客のリクライニング争いで米旅客機が行き先変更 CNN 2014年9月4日閲覧
- ^ 北林慎也 (2016年1月2日). “高速バス運転手「一斉にリクライニング倒しましょう」”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社) 2021年2月3日閲覧。
- ^ a b “VIPライナー シートへのこだわり”. 平成エンタープライズ. 2021年2月3日閲覧。
- ^ 乗りものニュース編集部 (2018年3月21日). “答えは全席フルリクライニング 夜行バスの座席問題、ある運行会社の取り組みとは”. 乗りものニュース (株式会社メディア・ヴァーグ) 2021年2月3日閲覧。
- ^ 大坂直樹 (2019年9月30日). “近鉄の新型特急「ひのとり」は何が最強なのか”. 東洋経済オンライン (東洋経済新報社) 2021年2月3日閲覧。
関連項目
リクライニングシート(自在腰掛)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 17:37 UTC 版)
「鉄道車両の座席」の記事における「リクライニングシート(自在腰掛)」の解説
背もたれの傾斜角度を調節することができる座席である。 国鉄では、1949年(昭和24年)戦後初の特別急行列車「へいわ」復活に際し、一等展望車に使用するため復活されたマイテ39の座席で初めて採用された。本格的な使用は翌年に登場した特別二等車スロ60形からで、このとき採用された機械式5段階ロック・足載せ台付の座席は以後大きな変更もなく国鉄末期まで特急・急行用二等車(→一等車→現グリーン車)の標準装備とされた。なお、スロ60形客車は最初は一等車「スイ60」として設計されたため座席間隔を1,250mmとしていたが、その後製造されたスロ53形では1,160mmとなり、これはJR移行後でも特急形車両におけるグリーン車の標準座席間隔である。客車特急列車の展望車の代替車両として151系電車で設計・製造された「パーラーカー」クロ151形車両の1人用リクライニングシートの座席間隔は1,100mmだった。また例外的に普通車(当時は3等車)より改造されたスロ62形の座席間隔は1,270mmで、当時の国鉄型では最大だった。 新幹線では1964年の東海道新幹線開業時における新幹線0系の一等車から、現在に通じる座席幅のものを採用している。車体幅が在来線より大きい新幹線では、横一列あたりの座席数が普通車の大多数は3+2列なのに対し、グリーン車は2+2列として、座席幅にゆとりを持たせている。 普通車で最初に採用されたのは、国鉄183系の簡易式(後述)である。その後、1985年の新幹線100系、在来線用も1986年のキハ183系500番台から普通車においてもフリーストップ式のリクライニングシートを採用しており、現在は一部車種を除き特急型車両では標準装備となっている。 国鉄分割民営化以降、普通車用座席の改良が重ねられた結果、1990年代後半には普通車用座席とグリーン車用座席との差は小さくなった。差は傾きや座席の大きさ、シートピッチ(座席間隔)などである。そのため在来線用のグリーン車では横一列当たりの座席数を2+2から2+1に減らし、新幹線と同様に1人あたり座席幅をゆとりを持たせて普通車用座席との差別化を図る場合も多い。 また、夜行列車の一部では、高速バス等との競争のため、普通車であっても傾きの大きさがグリーン車用に近い座席、あるいはグリーン車から転用した座席を設置し、シートピッチもグリーン車に近い寸法として居住性を高めたものもあった。2003年3月まで「ムーンライトえちご」に充当された165系が始まりとされている。かつての「なは」「あかつき」では夜行高速バス並みに全席1人掛けで傾きの角度が大きい「レガートシート」があった。これ以前にも、1980年代からは四国や九州の気動車急行においてグリーン車を座席を交換することなく普通車に格下げして使用する例もあった。
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リクライニングシート
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