ピアノ・ソナタ 第29番 変ロ長調ハンマークラヴィーアとは? わかりやすく解説

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ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第29番 変ロ長調「ハンマークラヴィーア」

英語表記/番号出版情報
ベートーヴェンピアノ・ソナタ29変ロ長調ハンマークラヴィーアSonate für Klavier Nr.29 B-Dur "HammerklavierOp.106作曲年: 1817-18年  出版年1819年  初版出版地/出版社Artaria 

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 第1楽章 1.Satz Allegro9分00
2 第2楽章 2.Satz Scherzo-Assai vivace3分00
3 第3楽章 3.Satz Adagio sostenuto1800
4 第4楽章 4.Satz Largo-Allegro risoluto1130秒

作品解説

2009年1月 執筆者: 岡田 安樹浩

作品への本格的な着手1817年秋頃推定されており、1818年完成、翌1819年ヴィーンアルタリア社をはじめ、ヨーロッパ中の出版社から同時に出版され世界同時出版といってもよいかもしれない)、作品ルドルフ大公献呈されている。
また「ハンマークラヴィーア」の愛称定着しているが、これは初版楽譜タイトルページに「ハンマークラヴィーアのための大ソナタ」と記されていることに由来する。ただし、この文句は他のソナタにも用いられている。
小島によればベートーヴェンはこの作品第1楽章から第3楽章までを、3重弦で6オクターヴF0F7)を有するヴィーンシュトライヒャー製の楽器作曲し第4楽章ロンドン友人から送られロンドン製のピアノ作曲したという。
 ヴィーン楽器ロンドン楽器ではアクション異なる上、シュトライヒャー楽器には鍵盤をずらすペダルによって、ハンマー位置3本の弦から1本弦まで移動することができたが、ロンドン製の楽器がもつ独特の音色が、ベートーヴェンとらえてはなさなかった。この楽器後期創作決定的な影響与えたことは確実である。

第1楽章変ロ長調 2分の2拍子 ソナタ形式
提示部
4オクターヴ超える和音決然とした動機と、これとは対照的なカンティレーネ風の動機からなる主要主題は、その音域を5オクターヴにまで拡大する。1小節ごとに強奏と弱奏が交差する主題確保冒頭動機発展させた推移経て副次主題短3度下のト長調提示される。この主題から次々楽想紡ぎだされてゆき、ト長調でもう1つ副次主題が3連音符長いトリルともなってあらわれる。この主題からコデッタに接続される

展開部再現部
コデッタの動機反復しながら転調して変ホ長調到達すると、主要主題動機による4声のフガート展開される。これが動機構成するリズム素材八分音符四分音符)にまで分解される
この素材の展開が提示部推移における音型に接続しロ短調副次主題素材展開されるが、すぐに主要主題リズム動機行き着く調性ロ長調となり、この動機反復が主要主題再現を導く。
再現部ではフガート展開され要素と主要主題対位法的に組み合わせられている。カンティレーネ風の旋律込み入った対位法的な操作加えられている。
副次主題はともに主調変ロ長調再現される

終結部]
提示部におけるコデッタの動機延長され、まず第2の副次主題次に第1の副次主題あらわれた後、主要主題断片幅広いダイナミクス反復される。強奏と弱奏のダイナミクス交差徐々に切迫して1拍単位での交差にまで達すると、消え入るように弱奏へと向かう。
主要主題動機断片的に徹底して扱いながら、このソナタ形式楽章閉じられる

第2楽章変ロ長調 4分の3拍子 スケルツォ
主部付点リズムアウフタクトをもつ短い動機反復からなる主題よる。古典的な4楽章配列において、スケルツオが第2楽章置かれる例はソナタにおいて他になく(第18番四分二拍子スケルツォ第2楽章置かれているが、第3楽章メヌエットであり、同じ文脈ではとらえられない)、第9交響曲op.125などにみられる
トリオは同主短調変ロ短調Presto四分二拍子、Prestissimoの使用可能な全音域を駆け上る音階パッセージ推移経て主部へ戻る。反復記号ダ・カーポ指定はない。

第3楽章)嬰へ短調 8分の6拍子
鍵盤スライドさせる楽器の構造特性最大限利用したアダージョ楽章。嬰へ短調主調3度下の調性である変ト短調異名同音であり、ここでも3度の関係による調性構築みられる
嬰へ短調和声的冒頭主題は、主題構成する動機特定し難く安易な反復避けて長い楽想構築している。続いて断片的な和音とシンコペーション・リズムの内声の上奏でられる第2の主題次にニ長調転じ持続的に続く二音を装飾するような音型の上下に主音属音特徴的なリズム動機反復される第3主題あらわれる。
再び嬰へ短調にもどるが、冒頭主題はその和声進行バス声部に残すのみで、上声部は細かく装飾されており、これによって冒頭主題には、「動機的な特徴が無いことが特徴であったことが理解されよう。第2の主題ニ長調第3主題嬰ヘ長調再現される
第3主題はさらにト長調あらわれ冒頭主題一部回帰し嬰ヘ長調終止する。
この楽章ソナタ形式として論じているものもあるが、主題動機展開的な技法見出せない上、この楽章幻想曲風の楽想は、この楽章の「形式聴く」ことを拒んでいるようでもある。あえて形式的にとらえるとすれば、たとえば3つの主題をもつ大きな2部形式のように考えられるだろう。

第4楽章変ロ長調 4分の4拍子4分の3拍子
楽章から半音下がったヘ音反復によって開始される序奏は、その全体調性探っているかのようである。変ト長調ロ長調嬰ト短調などを経由しイ長調到達するイ音連打の中でバスヘ音進行し主部変ロ長調ドミナントととして機能する
主部は「3声フーガ幾分自由にFuga tre voci, con alcune licenze」と記されている。フーガ主題は、10度跳躍トリル、そして16分音符順次進行半音階的変化加えられ極めて特徴的なものである。対主題は第2拍目に強勢置かれるリズム的な特徴をもち、続く自由楽区は対主題リズム補完し合う関係にある。
次のセクションでは変イ長調転調し、フーガ主題後半と対主題後半、そして3度6度順次進行する新たな主題フーガ展開される続いて変ト長調変ホ短調変ニ長調変イ長調などへ転じ主題の中から紡ぎだされた楽想トリルさえも1つ動機として利用してフガート展開される
新たにロ短調セクション入り主題逆行形によってフーガ展開されるニ短調ドミナントに半終止すると、二長調新し主題によるカンタービレ風のフーガとなる。変ロ長調移行し、本来のフーガ主題入り込んでくる。これに、これまであらわれた主題変形や対主題あらわれ、さらにバスオルゲルプンクトトリルともなって動機回想する最後にフーガ主題一部オクターヴでのトリルをもって楽曲しめくくる




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