ピアノ・ソナタ 第26番 変ホ長調告別とは? わかりやすく解説

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ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第26番 変ホ長調「告別」

英語表記/番号出版情報
ベートーヴェンピアノ・ソナタ26変ホ長調告別Sonate für Klavier Nr.26 Es-Dur "Lebewohl" Op.81a作曲年: 1809-10年  出版年1811年 

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 第1楽章 1.Satz Adagio-Allegro7分00
2 第2楽章 2.Satz Andante espressivo3分30秒
3 第3楽章 3.Satz Vivacissimamente5分00

作品解説

2009年3月 執筆者: 岡田 安樹浩

このソナタ愛称告別」は、作曲者自身自筆譜書き込んだ告別1809年5月4日ウィーン敬愛する皇帝陛下大公ルドルフ出発に際してDas Lebe Wohl . Vien am 4ten May 1809 bej der Abreise S.Kaiserl. Hoheit des Verehrten Erzherzogs Rudolf.」という献辞由来している。各楽章にはそれぞれ表題のように「告別Das Lebewohl」、「不在Die Abwesenheit」、「再開Das Wiedersehen」と記された。
この1809年は、ちょうどナポレオン軍によってウィーン包囲されていた時期であり(第2次ウィーン包囲)、ベートーヴェン良きパトロンであると同時に作曲弟子でもあった大公地方疎開することとなったベートーヴェン書き記した告別Lebewohl」という言葉が、この別れ決し再会約束したものではないこと物語っている。

第1楽章変ホ長調 4分の2拍子/2分の2拍子 ソナタ形式
[序奏提示部]
まず16小節序奏Adagio)がおかれる。その冒頭3度順次下降する自然ホルンの音型(長3度完全5度短6度の2声部進行)による動機開始され、各音にLe-be-wohlと歌詞のように言葉付されている。この動機続いてバス声部半音階下降ソプラノ声部4度5度6度拡大されてゆく跳躍音型が組み合わされ動機が、この楽章全体構築する動機となる。
またドミナントから同主短調VI度へ進行する転調方法(第7~8小節)も、この作品全体1つ特徴である。
主部(第17小節~)はAllegro2分の2拍子となり、主要主題提示される半音階下降するバス4度跳躍動機による開始幅広い分散和音の上オクターヴ奏による跳躍順次下降音型からなるこの主題は、まぎれもなく序奏動機発展させたものである。この順次下降音型や、続く推移(第29小節~)以降しばしばあらわれ半音低められた音階の第6音によってつけられる調的響き陰影は、作品全体作用している。
副次主題(第35小節~)は属調である変ロ長調提示される。まず3度順次上行と下降組み合わされ半音低められた第6音(変ト音)と内声部の刺繍音型が陰影をつける。躍動的な跳躍音型の変形3度順次下降動機続いて3度順次下降拡大形と刺繍音型の組み合わされ主題あらわれる(第50小節~)。
コデッタは下降音型が付点リズム化され動機によっており、冒頭3度下降音型が長い音価で再びあらわれると、提示部反復記号によってくり返される

展開部再現部
展開部(第70小節~)は提示部主部開始模しているが、主部では開始音が変ホ長調IVであったのに対し、ここではハ短調のV度ではじまる。
順次下降音型と跳躍上行音型が交互にあらわれ変ロ短調変ホ短調変ト長調経由してハ短調行き着くソプラノ下降線を描く和声的進行バス跳躍音型が組み合わされ変ホ長調IV度の和音再現部準備する
再現部(第110小節~)は伝統的なソナタ形式則り、主要主題副次主題はともに主調である変ホ長調再現されるが、これに続くコーダ展開部上の規模をもつ。

終結部
終結部(第162小節~)は展開部と同様主部開始模してはじめられるが、ここでは主要主題をほとんどまるごとハ短調提示し変ホ短調でも主題一部くり返す
3度下降音型が単音で、山彦こだまするかのように模倣的あつかわれ、徐々に和声づけがなされてゆく。これはまるで動機生成されゆくさま見てゆくようであり、楽曲となっている動機誕生秘話が後から語られているような印象すら受ける。
下降音型は延々と鳴り響き続け、その背後音階パッセージあらわれ、また消えてゆく。下降音型が自然ホルンの音型で再現されると(第227小節~)、これも山彦のごとく模倣され、再び音階パッセージともなって楽章閉じる。
ベートーヴェン楽曲終止において動機執拗にくり返されることは珍しくないが、ここでの音型反復は「告別」の標題あいまって独特の表現勝ち取っている。

第2楽章ハ短調 4分の2拍子
 「不在」と記されAndante楽章付点リズム主題中に織り込まれ跳躍音型は、第1楽章用いられ跳躍音型に他ならない第1楽章では音階の第6音を半音低めた他、主要サブドミナント中心に作曲することで調性感をぼかしていたが、この楽章では主和音不在」の主題逸音使用調性感を曖昧にしている。
主題がようやく主和音落ち着くのは第8小節においてであるが、すぐにVI度の和音経由してヘ短調向かってしまう。
単音音階分散和音パッセージ続いて和音トレモロ音型を伴奏とするト長調(属調の同主長調)の主題あらわれる(第15小節~)。スタッカート分散和音伴奏の上断片的にあらわれ和音ソプラノ声部3度下降たどっており、第1楽章動機がここにも姿をあらわしている(第19-20小節)。
冒頭主題長2度低く再現され(第21小節~)、続いて2つ目の主題長2度低いヘ長調あらわれる(第31小節~)。
最後にもう一度冒頭主題あらわれるが、ハ短調ドミナント思わせる和声づけ(ニ-ロ-ヘ-変イ)から変ホ長調ドミナント変ロ-ニ-ヘー変イ)へバス半音階的変化(ロ→変ロ)し、切れ間無く第3楽章移行する

第3楽章変ホ長調 8分の6拍子 ソナタ形式
序奏提示部
変ホ長調の属七和音によって決然と開始されるフィナーレは、ソナタ形式によっている。10小節わたって延々と七和音の分散和音による序奏続き主部でようやく主和音に至る。主要主題(第11小節~)は拍頭を刻む和音八分音符分散和音からなる装飾ともなって2度確保されると、和音連打分散和音ff到達する
副次主題主調の属調である変ロ長調提示され、すぐに確保される2度下降動機と上行音階パッセージによってコデッタを駆け抜けると、反復記号によって主部がくり返される

展開部再現部
まず主要主題断片変ホ短調あらわれ平行調変ト長調経由し異名同音への読み替え駆使してロ長調副次主題あらわれる。さらに同主短調VI和音を介してト長調にて副次主題動機あらわれ、これが主要主題動機へと変化するハ長調からハ短調VI和音経て変ホ長調戻り主要主題オクターヴ奏であらわれ再現部となる。
主要主題提示部とは異な伴奏形であらわれ、やはり異な伴奏形で1度だけ確保されff和音連打到達する副次主題主調変ホ長調あらわれ外形としては古典的なソナタ形式保持しているが、この後に主要主題の再提示ともいえる終結部置かれる

終結部
Poco Andante速度落としたコーダは、主要主題主部冒頭同様の形で再現され再現部において大きく変形して再現された主要主題の再提示とも思える
主要主題分散和音動機執拗にくり返されppドミナント上にフェルマータ留まると、突如冒頭テンポにもどり(Tempo Iおよびfの指示)、主和音連打とオクターヴ・トレモロ奏によって決然と楽曲閉じる。




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