テキサス・レンジャーズの2011年
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「2011年のワールドシリーズ」の記事における「テキサス・レンジャーズの2011年」の解説
まず先にワールドシリーズ進出を決めたのはテキサス・レンジャーズだった。10月15日、デトロイト・タイガースとのアメリカンリーグ優勝決定戦を4勝2敗で制し、2年連続2回目のワールドシリーズ進出となった。 この前年の2010年、レンジャーズは90勝72敗でアメリカンリーグ西地区を11年ぶりに制し、ポストシーズンも勝ち進んで球団創設50年目で初のリーグ優勝を成し遂げる。しかしナショナルリーグ王者サンフランシスコ・ジャイアンツと対戦したワールドシリーズには1勝4敗で敗れた。シーズン終了後には、エース左腕クリフ・リーや指名打者ブラディミール・ゲレーロ、正捕手ベンジー・モリーナらがFAに。チームは、このうちリーの残留を目指していたが、リーは最終的にフィラデルフィア・フィリーズへの移籍を選んだ。彼が抜けた先発ローテーションの穴を埋めようと、マット・ガーザやザック・グレインキーなどをトレードで獲得しようとするも交渉はまとまらず、最終的にはエース級投手の獲得を諦めて三塁手のエイドリアン・ベルトレと契約し、内野守備と打線を強化した。この補強により三塁のポジションを奪われて指名打者兼ユーティリティーとなったマイケル・ヤングが、チームに対しトレードを要求する一幕もあったが、最終的に彼はこの起用法を受け入れ残留している。リー残留に熱心だったのとは対照的に、ゲレーロやB・モリーナら他のFA選手は引き止めず、ヨービット・トレアルバとマイク・ナポリの2捕手を獲得。捕手のポジションはインサイドワークに優れたトレアルバを中心に起用し、打撃のいいナポリは捕手以外に一塁手や指名打者としても出場させる構想を描いた。リーがいなくなった先発陣はスプリングトレーニングを経て、救援右腕アレクシー・オガンドを先発へ転向させることに決めた。 2011年、レンジャーズは4月1日の開幕戦から6連勝と好スタートを切ることに成功するが、その後は野手と救援投手に故障者が相次ぐ。野手陣ではまず同月13日にジョシュ・ハミルトンが、前日の試合で三塁から本塁へ突入した際に右上腕を骨折して故障者リスト入り。続いて5月4日には、ネルソン・クルーズも右大腿四頭筋痛で故障者リスト入りとなった。ハミルトン離脱から彼らふたりが5月23日に揃って復帰するまでの間、チームは15勝21敗と負けが先行した。救援投手陣では、抑えのネフタリ・フェリスが4月21日に右肩炎症で、同月27日にはセットアップのダレン・オデイが左股関節唇損傷で、それぞれ故障者リスト入りし離脱する。フェリスは5月6日に復帰するも奪三振率が前年から低下するなど投球の質が落ち、オデイは手術を受けたため7月2日まで復帰できない長期欠場となった。ただ、このような離脱者続出の状況でもレンジャーズは、5月16日以降は地区首位の座を維持したままシーズンを進めていく。前半戦92試合を終えた7月10日の時点でも、2位のロサンゼルス・エンゼルスとはわずか1.0ゲーム差ながら首位のまま。この時点でのチームの1試合平均得点は4.97で、ハミルトンらが一時的に抜けてもなおリーグ3位の高水準だった。1番打者イアン・キンズラーと2番打者エルビス・アンドラスはともに盗塁と得点の両部門でリーグ11位以内と、ふたりが足で好機を作って中軸が還す流れができていた。チーム最多打点は新加入のベルトレで71打点、その次が彼にポジションを奪われたヤングの59打点で、このふたりは練習ではキャッチボールのペアを組むなど、開幕前に起こったトレード騒動の影響も感じさせていない。投手陣は、救援防御率が4.57でリーグ12位と低迷したのに対して、先発ローテーションはクオリティ・スタート達成数が57でリーグ3位と安定。自身初の開幕投手を務めたC.J.ウィルソンは制球力が向上し9勝3敗・防御率3.20、先発転向のオガンドは初先発初勝利からの7連勝を含む9勝3敗・防御率2.92という成績を残した。 7月14日から後半戦が始まり8試合を消化したところで、今度はベルトレが左ハムストリング痛によって故障者リスト入りとなる。彼が欠場している間は、主にヤングが三塁手として出場した。ヤングはシーズンを通して、内野の各ポジションで欠場者が出たときなどは代役として守備に就きつつ、打撃でも打率.330前後の順調なペースで安打と打点を積み重ねていき、その存在は試合に臨む姿勢も含めてチームメイトから高く評価された。加えてナポリが後半戦に入って調子を上げ、OPS 1.000超と強打を発揮する。このように野手陣には故障者が出ても穴埋めできる層の厚さがあったことから、チームは7月31日のトレード締切日を前に、弱点の救援投手陣を補強すべく他球団との交渉を進めていった。その結果、ボルチモア・オリオールズから上原浩治を、サンディエゴ・パドレスからマイク・アダムスを、それぞれ獲得する。8月以降、上原は被本塁打の増加に苦しみ成績を落としたが、アダムスはオデイに代わる新セットアップに定着して好投を続け、またこの頃から抑えのフェリスも復調するなど、補強後は全体的に状況が改善された。救援防御率は前半戦の4.57から後半戦は3.53と1点以上良くなり、救援敗戦数も前半戦は92試合中17試合あったのが後半戦は70試合中9試合に減っている。戦力強化に成功したレンジャーズの勝率はさらに上がり、2位エンゼルスとのゲーム差は8月17日時点で7.0まで開く。エンゼルスもそこから食い下がって9月10日時点で1.5ゲーム差まで縮めたものの、最後は再びレンジャーズが突き放して、同月23日に2年連続の地区優勝を決めた。この年、打線が1試合平均5.28得点を奪ったのに対して投手陣はチーム防御率を3.79に抑え、得失点差+178はリーグ2位の高さ。ヤングがチーム最多の106打点を挙げ移籍1年目のベルトレとナポリがともに30本塁打に到達、一方で球団史上初めて先発投手5人が二桁勝利を記録するなど、投打に豊富な戦力を擁して96勝66敗・勝率.593と球団の最高勝率記録を更新するシーズンを送った。 地区シリーズ(5試合制) リーグ優勝決定戦(7試合制) ヤンキース 2 タイガース 3 タイガース 2 レンジャーズ 4 レンジャーズ 3 レイズ 1 ポストシーズンでは日程上、先発ローテーションをレギュラーシーズンよりひとり少ない人数で回せるため、レンジャーズはオガンドを先発から救援へ再転向させる。オガンドは後半戦の成績が4勝5敗・防御率4.48と、前半戦と比べて調子を落としていた。地区シリーズは、前年に引き続き2年連続でタンパベイ・レイズとの対戦に。レイズはレギュラーシーズン最終戦でのサヨナラ勝利によって、逆転で東地区2位となってワイルドカードを決めるという劇的な形で勝ち上がってきた。シリーズ初戦、レンジャーズは投手陣が9失点と打ち込まれる一方で打線は2安打零封という完敗を喫する。しかし第2戦・第3戦と相手に先制を許しながらも逆転勝ちで連勝すると、第4戦ではベルトレが3打席連続のソロ本塁打を放って1点差の接戦を制し、3勝1敗でレイズを下した。リーグ優勝決定戦では中地区優勝のタイガースと戦う。タイガースは野手に故障者を多く抱えていて代走を出す余裕すらなく、また信頼が置ける投手の数も限られており、シリーズは選手層の厚さで上回るレンジャーズ優位の展開で進んでいく。このシリーズではクルーズが好調で、初戦では相手エースのジャスティン・バーランダーからソロ本塁打、第2戦では延長11回にポストシーズン史上初のサヨナラ満塁本塁打、第4戦では外野守備で相手の勝ち越し点を防ぐ補殺、など攻守に活躍を見せた。レンジャーズは3勝1敗とワールドシリーズ進出に王手をかけ、迎えた第5戦こそバーランダーを打ち崩せず敗れたものの、第6戦に17安打15得点の猛攻で勝利を収め、4勝2敗でタイガースを破った。この2シリーズを通して、オガンドは10試合中7試合に登板。10.1イニングを投げ2勝0敗3ホールド・防御率0.87・奪三振率10.5と相手打者を抑え込み、ワールドシリーズへ向けてレンジャーズ救援投手陣の切り札的存在となった。
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