スプリングトレーニング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/01/15 10:15 UTC 版)
メジャーリーグベースボールにおけるスプリングトレーニング(英: Spring training)は、各球団がシーズン開幕前に行う練習およびオープン戦である。
概要
日本プロ野球の春季キャンプおよびオープン戦を合わせたものに相当する。通常は多くのアメリカ合衆国の大学生の春休み期間とほぼ同じ時期の、シーズン開始前の2月中旬から3月下旬にかけて、アメリカ南部の温暖な地で行われる。
フロリダ州をキャンプ地にするチームでグレープフルーツリーグ(Grapefruit League)、アリゾナ州をキャンプ地にするチームでカクタスリーグ(Cactus League)が形成され[1]、公式戦と同じような形式でオープン戦も行われるが、この間の記録は公式記録には含まれない。対戦相手はMLBチームだけでなく、大学野球などのアマチュアチームや、年度によっては各国のWBC代表チームと試合が組まれる場合もある[2]。
投手と捕手は、他の野手よりも数日早くキャンプインすることが通例となっている[3]。かつては練習の期間を長く取っていたが、近年は実戦重視・試合重視の日程となっており、早期からオープン戦が組まれている。そのため、参加選手は事前に自主トレーニングを始め、すぐ試合でプレー可能なコンディションにした上でスプリングトレーニングに合流している選手が多い[2]。 日本のプロ野球のキャンプと比べて練習量が少ないという風説があるが、個人差が大きい[4]。
参加選手
スプリングトレーニングには、以下の選手たちが参加してメジャーリーグ開幕ロースター入りを争う。
- チームの40人枠内の選手
- 傘下マイナーリーグチームに所属する40人枠外の選手のうち、スプリングトレーニングに招待された一部の有望選手
- チームのスプリングトレーニングに招待され、一時的にマイナー契約[5]を結んだ(主にベテランの)FA選手(招待選手:Non-Roster Invitees)
レギュラーシーズンよりもベンチ入り選手数が多くなるため、チームを2分割して同じ日に違うチームとオープン戦を消化するスプリットスクワッドなどの方式が採られる場合もある。
スプリングトレーニング期間中には随時選手のふるい分けが行なわれ、メンバーから外れた選手は傘下マイナーのチームキャンプに送られ、マイナーリーグでシーズン開幕を迎えることになる。招待選手として参加していたFA選手は改めてマイナー契約を結んで傘下のマイナーリーグチームに残留するか、再びFA(自由契約)となるかを選択することになる[2]。
歴史
メジャーリーグベースボールチームによるレギュラーシーズン開幕前の春季トレーニングは、1886年にシカゴ・ホワイトストッキングス(現在のシカゴ・カブス)が行ったのが最初とされる[6]。当時ホワイトストッキングスの選手兼任監督を務めていたキャップ・アンソンは、4月の開幕よりある程度前から選手たちを1か所に集めてトレーニングを積ませたらどんな成果が上がるかと閃いた。しかし、当時の選手は収入が無いオフの期間に何らかの別の職業に就いて稼ぐのが普通だったので、アンソンの案には不満が出た。そこでアンソンは「キャンプ中は一日につき何ドルかを渡せるようにする」と確約して全選手を1886年2月初めにアーカンソー州ホットスプリングスに集めた。柔軟体操からスタートしたが、筋肉が完全に硬くなっている。きつい練習を開幕2か月前からやらされる事に主力選手達が反抗する動きを見せたが、アンソンは「諸君、我々は野球史の1ページを作ろうとしているんだ。ブツブツ言うのは止めたまえ」と動じなかった。1週間2週間過ぎるにつれて効果が現れてきて、考えも理解されていく。4月にシーズンに入ると、「この年の我がホワイトストッキングスの選手達ほど、体が軽く、動きが際立って良かった事はかつて無かった」とアンソンが述べたほどで試みは成功し、このシーズンは他チームをぶっちぎって独走優勝した。世間は注目し、翌年からこれにならうチームが出てきた[7]。
1890年代から多くのチームに広まり始め、1910年には既に一般的になっていた[8]。フロリダ州における春季トレーニングはまず、1913年にシカゴ・カブスが本格的に開始し、以後フロリダ州にグレープフルーツリーグを形成した。ビル・ベックによると、人種差別が根強いフロリダ州を回避することを理由の一つとして、1946年にカクタスリーグがアリゾナ州に新たに立ち上げられた。
第二次世界大戦中は旅行制限もあったためにほとんどのチームは、自チームの本拠地球場から近い場所で春季トレーニングを開催していた。
1950年代から1960年代にかけての時期はドミニカ共和国、キューバ、プエルトリコ、ハワイでも訓練や合宿、試合が行われていた。
2018年から15チームずつ均等にグレープフルーツリーグとカクタスリーグに分かれてトレーニングが開催されている。
トレーニング開催地
グレープフルーツリーグ(フロリダ州)
| チーム | 球場 | 収容人員 | 所在地 |
|---|---|---|---|
| アトランタ・ブレーブス | クールトゥデイ・パーク | 8,000 | ノースポート |
| ボルチモア・オリオールズ | エド・スミス・スタジアム | 8,500 | サラソータ |
| ボストン・レッドソックス | ジェットブルー・パーク | 10,823 | フォートマイヤーズ |
| デトロイト・タイガース | ジョーカー・マーチャント・スタジアム | 8,500 | レイクランド |
| ヒューストン・アストロズ | カクティ・パーク・オブ・ザ・パームビーチズ | 7,858 | ウェストパームビーチ |
| ワシントン・ナショナルズ | |||
| マイアミ・マーリンズ | ロジャー・ディーン・スタジアム | 6,871 | ジュピター |
| セントルイス・カージナルス | |||
| ミネソタ・ツインズ | ハモンド・スタジアム | 9,300 | フォートマイヤーズ |
| ニューヨーク・メッツ | クローバー・パーク | 7,160 | ポートセントルーシー |
| ニューヨーク・ヤンキース | ジョージ・M・スタインブレナー・フィールド | 11,026 | タンパ |
| フィラデルフィア・フィリーズ | ベイケア・ボールパーク | 8,500 | クリアウォーター |
| ピッツバーグ・パイレーツ | レコム・パーク | 8,500 | ブレイデントン |
| タンパベイ・レイズ | シャーロット・スポーツ・パーク | 7,670 | ポートシャーロット |
| トロント・ブルージェイズ | TDボールパーク | 8,500 | ダニーデン |
カクタスリーグ(アリゾナ州)
| チーム | 球場 | 収容人員 | 所在地 |
|---|---|---|---|
| アリゾナ・ダイヤモンドバックス | ソルト・リバー・フィールズ・アット・トーキング・スティック | 11,000 | ソルトリバー・ピマ・マリコパ・インディアン・コミュニティ |
| コロラド・ロッキーズ | |||
| アスレチックス | ホホカム・スタジアム | 10,500 | メサ |
| シカゴ・カブス | スローン・パーク | 15,000 | メサ |
| シカゴ・ホワイトソックス | キャメルバック・ランチ | 13,000 | グレンデール |
| ロサンゼルス・ドジャース | |||
| シンシナティ・レッズ | グッドイヤー・ボールパーク | 10,311 | グッドイヤー |
| クリーブランド・ガーディアンズ | |||
| カンザスシティ・ロイヤルズ | サプライズ・スタジアム | 10,500 | サプライズ |
| テキサス・レンジャーズ | |||
| ロサンゼルス・エンゼルス | テンピ・ディアブロ・スタジアム | 9,558 | テンピ |
| ミルウォーキー・ブルワーズ | アメリカン・ファミリー・フィールズ・オブ・フェニックス | 10,000 | フェニックス |
| サンディエゴ・パドレス | ピオリア・スポーツ・コンプレックス | 12,339 | ピオリア |
| シアトル・マリナーズ | |||
| サンフランシスコ・ジャイアンツ | スコッツデール・スタジアム | 12,000 | スコッツデール |
脚注
- ^ 豊浦彰太郎 (2017年2月14日). “メジャーのスプリングトレーニングは日本のキャンプとどこが違うのか”. mine. 2020年1月13日閲覧。
- ^ a b c 広尾晃「天と地ほども違う! 日米プロ野球の春季キャンプ事情」『FRIDAYデジタル』2020年1月25日。2020年1月27日閲覧。
- ^ “Spring Training first workouts, game times”. MLB.com. (2020年1月27日) 2020年1月28日閲覧。
{{cite news}}: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ) - ^ “「メジャー選手は練習しない?」キャンプの風説はウソかホントか”. Jcom (2024年1月19日). 2025年7月19日閲覧。
- ^ 40人枠外の選手として結ぶ契約の通称
- ^ Matt Monagan (2019年2月4日). “So, what exactly is Spring Training?”. CUT4 (MLB.com) 2020年2月10日閲覧。
{{cite news}}: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ) - ^ 伊東一雄. メジャーリーグこそ我が人生:パンチョ伊東の全仕事. サンケイスポーツ. p. 284-285
- ^ The Early Years – Spring Training History
外部リンク
スプリングトレーニング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 10:31 UTC 版)
「メジャーリーグベースボール」の記事における「スプリングトレーニング」の解説
詳細は「スプリングトレーニング」を参照 シーズンが始まる前の2月中旬から3月下旬にかけて日本の春季キャンプにあたるスプリングトレーニングが行われる。このキャンプが行われる時期はまだ気温が低く雪が降るなどの地域があるため、暖かい地域のアリゾナ州とフロリダ州にあるマイナーリーグの本拠地がキャンプ地に選ばれている。アリゾナ州をキャンプ地にするチームでカクタスリーグ(Cactus League サボテンのこと)、フロリダ州をキャンプ地にするチームでグレープフルーツリーグ(Grapefruit League)が形成され、公式戦と同じような形式でオープン戦が行われるが、この間の記録は公式記録とはならない。 スプリングトレーニング開始時点で各チームの26人ロースター(MLB登録枠)は確定しておらず、40人ロースター(MLB登録拡大枠)の選手と、ロースター外の招待選手と呼ばれるベテランのFA選手や傘下マイナー球団所属の有望選手の中から、レギュラーシーズン開始までに開幕のロースター枠をめぐってふるい分けが行われる。レギュラーシーズンよりもベンチ入り選手数が多いため、チームを2分割し同じ日に違うチームと対戦するスプリットスクワッドなどの方式が採られる場合もある。
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