クビナガタマバナノキの学名の混乱とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > クビナガタマバナノキの学名の混乱の意味・解説 

クビナガタマバナノキの学名の混乱

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/15 10:22 UTC 版)

タニワタリノキ連」の記事における「クビナガタマバナノキの学名の混乱」の解説

クビナガタマバナノキ(英語版)は中国南部から熱帯アジアにかけて分布見られる落葉性中高木であり、インドではカダム(kadam)の名で知られヴィシュヌ神化身であるクリシュナとゆかりのある聖樹とされる。しかしその学名マダガスカルにしか自生しない Breonia chinensis という全くの別種標本存在原因著しく混乱することとなる。 1785年フランスラマルクは『植物百科辞典第1巻中にピエール・ソンヌラ中国採取してきたものとして Cephalanthus chinensis記載し、アシル・リシャール(英語版)が1830年に新属 Anthocephalus に移した。ところが Bakhuizen van den Brink (1970) が、ラマルク植物標本室に Cephalanthus chinensis の名で納められている標本リシャール見た植物とは別のものであったとする見解発表した。これによりクビナガタマバナノキの学名 Anthocephalus chinensis安定性揺らぐこととなった。 コリン・リズデイルはあくまでも Anchocephalus chinensis という学名のクビナガタマバナノキへの使用維持する立場取った。リズデイルによると、問題ラマルク植物標本室標本とはモーリシャス産のもので2022年2月現在に至るまでマダガスカルでしか自生確認されていない Breonia という属のものであることは確かであるが、1973年に Bakhuizen van den Brink による先述問題提起を恐らく知らずにルネ・ポール・レーモン・カピュロン(英語版)(1921–1971)が発表した Breonia chinensis という組み替え名をそのまま認めてしまうと、アジア高木のみからなる属である Anthocephalus がBreonia属のシノニムということになってしまう。リズデイルはラマルク述べた Cephalanthus chinensis特徴腋生花序などBreonia属の要素を含むとし、また Haviland (1897:5) にあるラマルク標本についての記述から、フィリベール・コメルソン採取した推定される Breonia の標本とソンヌラが中国採取したクビナガタマバナノキの標本とをラマルクごっちゃにして『植物百科辞典上で記述してしまったものと推察した。そして問題標本複製品考えられるものは Haviland (1897:35) が Breonia mauritiana として新種記載したもので、リシャールラマルクによる原記載文のうちのAnthocephalus要素拾い上げてクビナガタマバナノキのタイプとし、これが Cephalanthus chinensis と銘打たれ標本由来するものであったとリズデイルは解釈した。そしてリシャールのクビナガタマバナノキのためにラマルクの Cephalanthus chinensisシノニムとする措置を既に取ってしまった以上、ラマルク記載にBreonia的な要素含まれていてもそれをBreonia属の学名根拠として使用することはできないとし、カピュロンが発表した Breonia chinensis という学名認められないとした。そしてカピュロンの B. chinensis代わる学名として、カピュロンがシノニムとした中で C. chinensis次に記載早い Nauclea citrifolia Poir. (1798年) に基づいた組み替え名 Breonia citrifolia を生み出すという解決策取った。 これに対してクビナガタマバナノキおよびもう一種にAnthocephalusの属名使用すべきではないとしたのが、カピュロンの著述にも携わったジャン・ボセ(英語版であった。ボセはラマルクが Cephalanthus chinensis記載使用した標本リシャールが目にした標本とが異なるとする点については Bakhuizen van den Brink やリズデイルと共通しているものの、C. chinensis記載用いられ具体的な標本特定した上でリシャールがAnthocephalus属を新設する際にラマルクC. chinensis引用している事実から、マダガスカル植物にはカピュロンによる Breonia chinensis学名使用するのが適切で、Anthocephalus属はあくまでもBreonia属のシノニムとし、一方従来 Anthocephalus chinensis の名で知られてきたクビナガタマバナノキには1824年報告された Nauclea cadamba Roxb. に基づく Neolamarckia cadamba という学名新たに与えた。ボセはさらにソンヌラが中国標本採取したということに対して懐疑的な見解示している。先述の Cephalanthus chinensisタイプ標本にはソンヌラによるラベル付されており、そこには「これは中国ヤエヤマアオキ(属)である」 (仏: c’est le Morinda de Chine) と記されている。これは単にソンヌラがこの標本閲覧し自身が目にした「中国ヤエヤマアオキ(属)」なる植物のようだという意味合いコメント記したという程度のことであるに過ぎないにもかかわらず、このラベル見たラマルクが〈ソンヌラが中国でこの植物採取した〉と勘違いして植物百科辞典』上に記載してしまったというのが、ボセの見立てである。こうしたボセによる検討の後もリズデイルはなおもAnthocephalus属の使用固執する姿勢取り続けたが、2005年出版され一般向けの書籍ではクビナガタマバナノキの Neolamarckia cadamba の名での紹介行っている。 この話は複雑であるため、以下にこれまでのまとめも兼ねてリズデイルとボセの姿勢比較を表の形で示すこととする。 リズデイルボセクビナガタマバナノキの属としてAnthocephalus属は適切。 不適切最初にこの属とされた A. chinensis の元となった Cephalanthus chinensisそもそもマダガスカルにしか自生しないBreonia属であった以上、その種と誤同定されたアジア産の種のために新設されたAnthocephalus属はBreonia属のシノニムになると考えるべきである。 Neolamarckia属は冗長名。Anthocephalus を使えば良い新設理由上のマス参照ラマルク1785年新種記載したマダガスカル原産の種ラマルク使用したタイプ標本恐らくコメルソンが採取したもの。その複製品1897年新種記載された Breonia mauritiana のタイプ標本とされた P00462437(JSTOR)。 フランス国立自然史博物館ラマルク植物標本室所蔵されているもの。このタイプ標本複製品がP00462437で、これのせいでリシャールがクビナガタマバナノキとラマルク新種とを混同した可能性が高い。 学名Breonia chinensis という学名認められず、Breonia citrifolia とする。1798年記載された Nauclea citrifolia と同一のものである模様だが、その記載の際にラマルクの Cephalanthus chinensis引用されておらず、これをシノニムとして扱うには抵抗がある。 Breonia chinensis良い。 ソンヌラの立ち位置中国でクビナガタマバナノキを採取した。その標本行方はっきりしないが、ともかくこれが Cephalanthus chinensis学名値するものであり、Anthocephalus chinensis学名維持する根拠となる。 上記ラマルク植物標本室標本閲覧しに過ぎない考えられる。それを自身中国で目にした実際に無関係な植物同一であると勝手に思い込んでラベル残し、後に中国産の植物であるとラマルク勘違いする原因作った可能性がある。いずれにせよソンヌラが Cephalanthus chinensisタイプ標本採取し、それをクビナガタマバナノキの学名根拠とするリズデイルの解釈取らないこととする。 なおクビナガタマバナノキと Breonia chinensis形態には以下のような相違点存在する。 クビナガタマバナノキ と Breonia chinensis との相違点クビナガタマバナノキBreonia chinensis花序頂生 側生腋生萼片線-へら形から細楕円形 (Breonia属全般に関して)3角形から偏長形、鈍角あるいは時に幾ばくか糸状(リズデイル)切形(ラザフィマンディンビソン) 柱頭紡錘形 棍棒形-球形(リズデイル)棍棒形-頭状(ラザフィマンディンビソン) 子房下部は2室だが上部は4室、胎座2つ全体的に裂けたところがないか二また 2室、胎座は短い倒卵状の突起下垂性 果実集合果ではなく子房の上部に4つ空洞軟骨質構造物(#検索表胎座の図を参照)を持つ 集合果 種子幾ばくか3角状あるいは不規則な形状 (Breonia属全般に関して)卵状から楕円状、時に幾ばくか左右相称的偏平、翼(よく)はない(リズデイル)強く扁平凹凸楕円状、両端未発達の翼(よく)あり(ラザフィマンディンビソン)

※この「クビナガタマバナノキの学名の混乱」の解説は、「タニワタリノキ連」の解説の一部です。
「クビナガタマバナノキの学名の混乱」を含む「タニワタリノキ連」の記事については、「タニワタリノキ連」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「クビナガタマバナノキの学名の混乱」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「クビナガタマバナノキの学名の混乱」の関連用語

クビナガタマバナノキの学名の混乱のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



クビナガタマバナノキの学名の混乱のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのタニワタリノキ連 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS