インディアンによる名称変更訴訟
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/12 00:17 UTC 版)
「ワシントン・コマンダース」の記事における「インディアンによる名称変更訴訟」の解説
全米のインディアン部族や団体は、同チームの「レッドスキンズ(赤い肌)」というインディアン民族に対する蔑称の使用の廃絶撤廃を求め、1967年から使用されているトレードマークの使用禁止などについて、1992年から連邦裁判所に提訴を行っている(→こちらも参照のこと)。レッドスキンズはアメリカ先住民を「赤色人種」と呼んでいたことに由来するが、現在ではこのような肌の色による人種の類型化は否定されている。これは、全米のスポーツチームが使用している「インディアン・マスコット」を「インディアンに対する侮辱、中傷、人種差別である」とする撤廃要求の一環である。 なお、1999年に行われた裁判で商標登録は米国特許商標局が却下した。 2009年5月15日、ワシントンD.C.の控訴裁判所はトレードマークがインディアンの人種差別につながっていないと下級審の判断を支持した。 2009年11月16日、連邦最高裁判所は、これらインディアン団体の審理要求を拒否した。裁判官はコメントなしで、下級裁判所が上訴した、「レッドスキンズという名称が、人種的に非常に不快であり、商標保護に値しない」という彼らの主張の再審理を却下したのである。 「レッドスキンズ」の顧問弁護士、ロバート・ラスコフはこの裁定に対し、「私たちは非常に喜ばしい思いでいっぱいです、訴訟が1992年に最初に起こされて以来、それは長い道のりでした」と述べ、「私たちは法廷が、見物にするだけの問題もまるで認めなかったことに驚いてもいません」と喜びを語った。 一方、インディアン側の代理人であるフィリップ・モーゼは「失望しました」と声明を出し、挑戦者のグループの一つは、手続き上での最後の望みとして、商標におけるキャンセル訴訟を起こした。これに対しラスコフは、「レッドスキンズ」はこの新しい苦情を意にかけない、とし、「私たちが負けることはあり得ませんね」と述べた。 「レッドスキンズ」はインディアン団体の抗議に対し、数十年にもわたって「このチーム名はインディアンに対する敬意の表れだ」として、ひたすらこのマスコット名を擁護している。もともと「ボストン・ブレーブス」だったこのチーム名が「レッドスキンズ」となったのは、1933年のことである。チームは裁判での要約で、この新しい名称が「チームのヘッド・コーチの、インディアンのウィリアム・“ローンスター”ディーツの尊称だった」と法廷で述べ立て、「この商標登録の毎年の更新料として、我々は長年にわたり何百万ドルも支払い続けてきている」と居直った。 インディアン団体は、「インディアン・マスコット」を廃止するよう、何十もの高校大学のスポーツチームを説得し続けてきた。「アメリカインディアン国民会議」(NCAI)は、「レッドスキンズ」の名について、裁判で「あからさまに不快なこきおろしであり、数世紀にわたって犯し品位を落としめ続けてきたステレオタイプである」とこれを糾弾してきた。しかし、チームはまったく取り合う姿勢を見せず、ラスコフは、元チームオーナーのジャック・ケント・クックも現オーナーのダニエル・スナイダーも、両人ともチーム名を変えることに関して「ささやき声さえ一度もなかった」と述べている。しかし、こと「商標」としての観点からすれば、チームの楽観視は尚早との声もある。 この法廷闘争は、スーザン・ショーン・ハルジョ、ヴァイン・デロリア・ジュニアらを代表とする7人のインディアンたちが、1967年に発行された「レッドスキンズ」の商標登録に戦いを挑んだ1992年に始まった。彼女らは1999年に「商標審理と上訴委員会」から「レッドスキンズの名は、インディアンにとって不快であると解釈できる」と返答を受けているのである。アメリカの商標法は「生者、死者にかかわらず、軽蔑的、または不当なこきおろしを含んだ名前の登録を禁止する」とある。 これと並行して、ニュージャージー州選出の連邦下院議員フランク・パローネ(英語版)は「インディアン・マスコット」の廃絶法案を議会に提出しており、この裁決に対して「必要とあらば、法改正で臨む」と表明した。 2014年6月18日、米国商標審判部は、先住民のグループが訴えを起こしていた、商標登録の取り消しを求める訴訟に対して、チーム名が個人や団体への侮辱につながる商標を禁じた連邦法に抵触しており、商標を取り消す判断を下した。チーム側はこれを不服とし、上訴すると表明した。なお、商標登録の取り消しが確定した場合、チーム名を変更しなくても活動や商行為を行うことはできるが、関連商品の海賊版に対して法的手段に訴えることが難しくなり、収入面で打撃を受けるとみられている。 2020年7月、ジョージ・フロイド抗議運動に鑑み、改称の検討が開始され、同月13日、旧ニックネームと旧ロゴは廃止された。当初は2020年シーズンの開始までに新ニックネームと新ロゴが決定されると発表されたが、同月23日、2020年シーズンは暫定的に「ワシントン・フットボールチーム」という名称を用いることと、チームカラーが維持された新ユニフォーム及びロゴの代わりに選手の背番号が書かれた新ヘルメットを発表した。2021年シーズンも引き続き暫定名称を用いて活動した。 2022年2月2日、新名称「ワシントン・コマンダース」と新ロゴを発表した。
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