Ω9脂肪酸とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 化学 > 有機化合物 > 脂肪酸 > Ω9脂肪酸の意味・解説 

ω-9脂肪酸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/17 15:12 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動

ω-9脂肪酸(オメガ-ナイン しぼうさん、ω−9 fatty acids、Omega-9)または、n−9脂肪酸n−9 fatty acids)は、不飽和脂肪酸の分類の一つで、一般に炭素-炭素二重結合がω-9位(脂肪酸のメチル末端から9番目の結合の意味)にあるものを指す。

背景

いくつかのω-9脂肪酸は、動物性脂肪植物油の一般的な構成要素である。次の2種のω-9脂肪酸は産業において重要である。

  • オレイン酸(18:1, n−9)、オリーブ油と一価不飽和脂肪の主な構成要素。
  • エルカ酸(22:1, n−9)、アブラナの種、エリシマムの種、カラシの種子で見られる。エルカ酸の含有量が多いナタネ油は、エルカ酸が心臓病の発症リスクを高め、ナタネ油に多価不飽和脂肪酸が豊富に含まれているため乾性油として絵画やコーティング剤に使われたり、バイオ燃料として商用的に栽培されている。

ω-3、ω-6脂肪酸と異なりω-9脂肪酸は、必須脂肪酸には分類されない。これはω-9脂肪酸が植物及び微生物のみならずヒトを含めた動物の体内で飽和脂肪酸である18:0のステアリン酸から合成できるためである。Ω-9脂肪酸は、n-6二重結合が無いためエイコサノイドを形成する反応に参加することができない。

植物、微生物、ヒトを含めた動物の体内では、脂肪酸シンターゼによってアセチルCoAマロニルCoAから直鎖の飽和脂肪酸が作られる。順次アセチルCoAが追加合成されるので原則脂肪酸は偶数の炭素数となる。体内で余剰の糖質タンパク質等が存在するとアセチルCoAを経て、飽和脂肪酸の合成が進む。脂肪酸合成が炭素数18(ステアリン酸)に達すると、体内でステアロイルCoA 9-デサチュラーゼ(Δ9-脂肪酸デサチュラーゼ)によりステアリン酸のw9位に二重結合が生成されてω-9脂肪酸の一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸が生成される。例えば豚の体脂肪であるラードや牛の体脂肪であるヘットにはオレイン酸が全脂肪中50%近く含まれている。母乳の全脂肪中の1/3がオレイン酸で占められている。

このオレイン酸から、植物や微生物中で、ω6位に二重結合を作るΔ12-脂肪酸デサチュラーゼ によりオレイン酸の二重結合が一個増えてω-6脂肪酸であるリノール酸が生成され、ついでω3位に二重結合を作るΔ15-脂肪酸デサチュラーゼ によりリノール酸の二重結合が更に一個増えてω-3脂肪酸であるα-リノレン酸が生成される。ヒトを含めた動物の体内にはリノール酸もα-リノレン酸も作る酵素が存在しないので、これらの不飽和脂肪酸を必須脂肪酸として摂取しなければならない[1][信頼性要検証]

必須脂肪酸の欠乏の過酷な条件下では、哺乳類オレイン酸を伸長・非飽和にし、ミード酸(20:3, n−9)を作る[2]。また、菜食主義者においても狭い範囲で起こる[3]

ω-9脂肪酸の一覧

慣用名 数値表現 組織名
オレイン酸 18:1 (n−9) 9-オクタデセン酸
エイコセン酸 20:1 (n−9) 11-エイコセン酸
ミード酸 20:3 (n−9) 5,8,11-エイコサトリエン酸
エルカ酸 22:1 (n−9) 13-ドコセン酸
ネルボン酸 24:1 (n−9) 15-テトラコセン酸

脚注

  1. ^ I章 最新の脂質栄養を理解するための基礎 ― ω(オメガ)バランスとは?脂質栄養学の新方向とトピックス
  2. ^ Lipomics. “Mead acid”. 2006年2月14日閲覧。
  3. ^ Phinney, SD, RS Odin, SB Johnson and RT Holman (1990年). “Reduced arachidonate in serum phospholipids and cholesteryl esters associated with vegetarian diets in humans”. 2006年2月11日閲覧。

関連項目


ω-9脂肪酸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/10 17:20 UTC 版)

多価不飽和脂肪酸」の記事における「ω-9脂肪酸」の解説

ω-9脂肪酸の多価不飽和脂肪酸である。ω-9脂肪酸には、オレイン酸など一価不飽和脂肪酸含まれる慣用名数値表現組織名ミード酸 20:3 (n−9) 5,8,11-エイコサトリエン酸

※この「ω-9脂肪酸」の解説は、「多価不飽和脂肪酸」の解説の一部です。
「ω-9脂肪酸」を含む「多価不飽和脂肪酸」の記事については、「多価不飽和脂肪酸」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「Ω9脂肪酸」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「Ω9 脂肪酸」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



Ω9脂肪酸と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「Ω9脂肪酸」の関連用語

Ω9脂肪酸のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



Ω9脂肪酸のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのω-9脂肪酸 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの多価不飽和脂肪酸 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS