酢 酢の概要

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/14 16:39 UTC 版)

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ハーブの入った酢。
バルサミコ酢とワインビネガー。

概要

穀物や果実を原料にした醸造酒を、酢酸菌(アセトバクター属)で酢酸発酵して得る。酢酸以外に、乳酸コハク酸リンゴ酸クエン酸などの有機酸類やアミノ酸エステル類、アルコール類、類などを含むことがある。

殺菌や防腐を目的としても使われる。

乳酸の酸解離定数(pKa)は 3.8、酢酸の酸解離定数(pKa)は 4.8[3]。酢酸は細胞膜脂質二重層を濃度に依存して通過し、細胞内で水素イオンを放出してpHを低下することで活性を下げて抗菌作用を生じる[3]

名称

漢字の「」と「」は部首が同じで、との関連性が深く、有史以前、人間が醸造を行うようになると同時期に酢も作られたと考えられている。

フランス語で酢を意味する vinaigrevin aigre (酸っぱいワイン)に由来し、お酒が酸っぱく変化したものを意味する[4]

なお、1979年6月8日に「食酢の日本農林規格」[5]が公示され[6]日本農林規格(JAS)での呼称は食酢(しょくす)となった[4]

歴史

食酢は「人類が作り出した最も古い調味料」とされる[4]紀元前5000年頃のバビロニアに記録があり、ナツメヤシや干しブドウを原料とする食酢が醸造されていた[4]

西洋料理と酢

紀元前4000年頃にはワインやビールから酢を造りピクルスを漬けた記録が残される。古代ローマで水に酢を加えた清涼飲料水「ポスカ」が飲まれていた。

かつての家庭はワインが自然に変化するのを待ち酢を得たが、近世は17世紀のフランスで床の上にブドウの蔓を敷いてワインをかける手法、18世紀のオランダでヘルマン・ブールハーヴェが滴下方式、19世紀にルイ・パスツールがオルレアン製法、などが考案され、現代の工業生産方式に応用された[7]

日本料理と酢

日本で食酢の醸造が始まったのは4~5世紀頃で、中国から酒の醸造技術とともに米酢の醸造技術が伝来した[4]律令制は、造酒司が酒・とともに酢を造り、酢漬けや酢の物の調理に用いた。

酢は寿司の歴史とも大きく関係している[4]。寿司の原点は一年以上かけて乳酸発酵させる熟れ鮓(なれずし)だったが、江戸時代になって米酢を加えて発酵を早めた早鮨が登場した[4]。しかし、当時、米やを原料とする米酢は大変高価であったため、世界初の酒粕を原料とする酒粕酢(粕酢)が造られるようになった[4]。江戸時代には紀伊国粉河が粕酢、和泉国が米酢でそれぞれ産地として知られた。

製法

西欧

西欧における酢の製造法で最も古い方法はオルレアン製法で、希釈したワインを空間を残して樽に詰め、酢酸菌膜を加えて緩やかに発酵させる。定期的に出来た酢を抜き、新しくワインを継ぎ足す。現代的な製造法に比べ空気に触れる部分が少ないため時間が掛かるが、芳醇な香りの酢ができる。他の製造方法として、18世紀に発明された滴下方式と、より現代的な液中培養方式がある。滴下方式は多孔質の素材に酢酸菌を付着させ、そこにワインを繰り返し注ぎ効率よく酢酸菌を働かせる方法である。液中培養方式はタンク内で曝気した醸造酒に菌を入れて発酵を促す方法で、24 - 48時間でエタノールを酢酸に変えている。いずれの方法でも、製造後は低温加熱処理で残った細菌を殺菌する。高級な酢はその後に熟成期間をかけ、風味やまろやかさを醸す[8]

現代

穀物や果実を出芽酵母 S.cerevisiae によりアルコール発酵させ原料醪を生産し、醪に酢酸菌を添加し食酢が生産される[9]。表面発酵では酸度が 4〜6% 程度になり、通気撹拌させる「深部通気発酵」では酸度が5〜20% の食酢となる[3]




  1. ^ プログレッシブ和英辞典(コトバンク)
  2. ^ 広辞苑第5版
  3. ^ a b c 惠美須屋 廣昭、「酢酸菌の酢酸耐性機構について」 日本乳酸菌学会誌 2015年 26巻 2号 p.118-123 , doi:10.4109/jslab.26.118
  4. ^ a b c d e f g h i j 名古屋税関管内における“食酢”の輸出 名古屋税関調査統計課、2020年4月18日閲覧。
  5. ^ 昭和54年6月8日農林水産省告第801号。現・醸造酢の日本農林規格
  6. ^ 施行は同年7月9日
  7. ^ Harold McGee 2008, pp. 746-747.
  8. ^ Harold McGee 2008, p. 748.
  9. ^ 食酢について 全国食酢協会中央会
  10. ^ 醸造酢の日本農林規格 昭和五十四年六月八日農林水産省告第八百一号 農水省
  11. ^ 食酢品質表示基準 平成12年12月19日農林水産省告示第1668号 消費者庁 (PDF)
  12. ^ 『農産加工2改訂版』文部省著作権限昭和56年1月25日発行全330頁
  13. ^ 『農産加工2改訂版』文部省著作権限昭和56年1月25日発行全330頁
  14. ^ a b ニュースリリース│ミツカングループ企業サイト” (日本語). www.mizkan.co.jp. 2018年11月3日閲覧。
  15. ^ 日本獣医畜産大学畜産食品工学科肉学教室. “マリネード処理すると軟らかくなる理由”. 岡山大学農学部食肉品質研究会. 今さら聞けない肉の常識 第38回 <肉を軟らかく調理する>. 2018年11月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年11月3日閲覧。
  16. ^ 遠藤美智子 ほか、「食酢の食後血糖上昇抑制効果」 『糖尿病』 Vol.54 (2011) No.3 P.192-199 , doi:10.11213/tonyobyo.54.192
  17. ^ 多山賢二、「生活習慣病に及ぼす食酢の効果」 『日本醸造協会誌』 Vol.97 (2002) No.10 P.693-699,doi:10.6013/jbrewsocjapan1988.97.693
  18. ^ 堅い骨は、やわらか〜くキッコーマンホームページ






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