地形図 地形図の概要

地形図

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 17:07 UTC 版)

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等高線表現による地形図の一例
キルビメータは曲線の長さを測るために使用される

概要

土地の高低(標高)を平面図上に等高線を用いて表すとともに、海岸線、など狭義の地形、およびその名称を表示する。さらに地表面にある、目印になりやすい道路建物などの人工物、植生などの地表状態、都市集落やその名称など、地表物と地形の位置関係を平面図上に表示する。

多くの国で地形図は「基本図」とされ、それぞれの位置関係を可能な限り正確に表示し、時にはその内容に法的効力を持たせる事もある。そのため経緯度や直交座標系、測量の基準点も相応の精度で表示される。ただし、国土全域に同一規格・同一縮尺の正確な基本図がそろっている国は多くはない[2]

地形図は「一般図」とされる事が多いが、地形図の主題を強いて挙げれば、地形や土地利用そのものよりもその物理的位置情報であり、地形図に関する議論は測量に関連するものが多い。一方で行政界など法律上の境界線や水上航路など、物理的な存在以外でも社会的に重要な位置情報であれば掲載しており、総合地図(一般図)の側面もある。

地形図に掲載する地形以外の情報は、現地での位置確認に役立つような目立つ物が多いが、国や作成発行元の意向によっては目立ちにくい規制や行政サービス、人文社会情報、観光情報などを盛り込む事もある。表層地質など学術情報がセットになっている場合もある。以前は作成発行元としての組織が多かったため、軍事関連の施設や情報の記載が多く、地形や位置情報も軍事利用が可能なため、軍事上の機密になるケースも多かった。現在でも公の機関が作成発行元である事が多いので、行政機関が優先されるケースが多く見られる一方で、民営化された機関が外されるケースもある。

たとえば植生だけに注目した主題図を作る場合でも、植生は地形や人間の土地利用と密接に関係している。そもそも、どこの植生を示しているのか分からなければ地図として意味がないが、経緯度だけでは分かりにくい。それらを分かりやすくするために地形図(または情報を取捨選択した図)を薄く印刷している事が多い。このように、本題ではないけれど位置を把握しやすくするために地形図が利用される事がある(基図としての利用)。

地形図は地表物の位置関係を表しているが、近年では地下鉄などの地下利用、高層ビルや高架橋の立体交差、さらに小型無人航空機による低空利用が見込まれるなど、新たな形の位置情報が求められている。そのため「空間情報」という概念が生まれ、位置情報を表すための地形図も従来の形態を脱するような変化を始めている。

地形図と呼ばれるのはおおよそ10万分の1以上の中縮尺図か大縮尺図である(大き過ぎる場合は別の呼称が付けられる事がある)。20万分の1より小さい場合は地勢図など別の名称が付けられる。

地形図は世界を見渡すと地図記号の特徴[3]や、ヨーロッパ6カ国など地形図の縮尺体系に特徴がある[4]。地理教育とGISの視点でフィンランドを紹介したり[5]、1930年代の労作と対照的に第二次世界大戦後は地形図の体系を長く欠いたベトナムの例が紹介された[6]

南極条約により領有権の公認されない南極にも地形図はある[7]

地形に関する他の地図

海底地形図

海底の地形に関しては、地上の地形とは性質が大きく異なる。海底は目視できないし、海上であっても目視で位置を確認できる目標物は少ない。20世紀初頭までは竿やおもりで1点ずつ深さを測る事しかできなかったし、20世紀中ごろでもソナーによる線的な計測しかできなかった。面的把握が可能になったのはマルチビームソナーが実用化されて以降である[8]。また信号の処理速度が向上し、音響技術と音波を介した画像伝送を組み合わせた測地技術を用いてしんかい6500を運用する[9]

技術の安定を待ち、海域に関しては目的を絞った地図が多い。海図が長年にわたって基本図として扱われてきたが、航海と漁業が海での活動のほとんどを占め、航海の安全のために位置情報を収集するのが第一であり、次いで領海など法的規制を表示する事が求められ、それ以外の情報は個別に収集すればよいとみなされていたためである。しかし近年は海洋資源開発[10]、比較的深い海の埋め立て、地殻変動の調査など他の目的が増え、計測技術の進展とともに地上と似た海底地形図も作成されている。海底地形の精密な3Dモデルの使途は水産業に限定されず、水中の遺跡やサンゴ礁の分布の把握に応用の道がある[8]

比較的浅い近海域では、埋め立てなど地上との相互関係が重要な場合のために両方を扱う地図も作られてきた(日本の沿岸海域地形図など[14])。重要な湖沼に関しては地形図に水深を記載している事がある。変わったところでは、大潮の干潮時に海面上に出る事もあるサンゴ礁の地図を、海図ではなく地形図規格で作成したケースがある[8]。震災による液状化現象の地理的把握に旧版地形図を下敷きとする新しい作図もされ[18]、宅地のかさ上げに用いる地盤図への応用[19]、生き物と自然による景観評価の基礎資料となる地形図も編まれている[20]

位置情報としての側面よりも、狭義の地形を詳しく把握するための地図として、地形分類[26]などがある。

図法等

20世紀中ごろから、世界的に見て正角図法が多く利用されている。地形図では地形や人工物の形状に加えて傾斜も重要な情報である。正角図法では狭い範囲での形状の歪みがなく、傾斜の方向や大きさも正しく表現される。

日本等が現在採用しているユニバーサル横メルカトル図法をはじめとした横メルカトル図法ガウス・クリューゲル図法)、スイス等の斜軸メルカトル図法、フランス等のランベルト正角円錐図法、オランダの平射図法がある。

正確な縮尺は図法の基準点・基準線からの距離により変化するが、中縮尺以上の地図での距離や面積の測定の場合は範囲が狭く、基準線まで遠くないので、一般的な用途であれば誤差は小さい。精密さを求められる用途の場合、たとえば日本における自治体への補助金の算定に使われる面積の測定では[要出典]、地形図の図葉ごとに縮尺補正を行って計算する。

また電子化により、時間の変遷を属性に盛り込んだ「4次元GIS」が作成できるようになった[27]

地形図と国防

多くの国で地形図作成に軍が関係しており、地形図作成機関が軍に所属する例も多かった。英国Ordnance Surveyは、その名称を直訳すると「兵器部測量局」である(現在は、名称はそのままだが自治省管轄下の独立行政法人である)。日本でも、明治初期には多くの省が測量や地図作成に関係していたものを、参謀本部陸地測量部へ集約した。軍の関連施設のための記号が豊富に設けられる一方で、情報漏洩を恐れて一部情報が改描されたり(戦時改描)、1942年(昭和17年)から終戦まで地形図そのものの販売が禁止されるなどした。

第二次世界大戦の戦前戦中は土地調査事業の対象に旧植民地を含む海外も加えて地形図を作成した[28][29]

現在では多くの国で組織改変がされ、地形図作成機関が軍や国防省に所属する国は減っている。しかし韓国では法律で国立地理院発行の5万分の1以上の縮尺の地形図を国外に持ち出すことは禁止されている。中華人民共和国では5万分の1や2万5千分の1の地形図を一般人は入手できない[註 1][要ページ番号]


注釈

  1. ^ 竹内正浩『地図もウソをつく』文藝春秋、2008年、ISBN 978-4-16-660651-1
  2. ^ 竹島の図は2007年12月1日刊行の25000分1地形図「西村」および20万分1地勢図「西郷」の挿入図として整備された[31]
  3. ^ 現在「南硫黄島」図幅に挿入されている。
  4. ^ 『国土地理院時報』第98号、2002年に詳しい。
    § 平成14年2万5千分1地形図の図式、§ 新地形図情報システム(NTIS)について、§ ベクトルデータの世界測地系変換、§ 世界測地系に対応した新図郭の作成、§ フルベクトル化の概要、§ フルベクトル化の意義、§ ベクトル化に向けた地形図の全面修正、§ ラスタベクタ変換。
  5. ^ 「§ 目的や用途、内容、適切な活用の仕方などを多面的・多角的に考察し、表現する」48頁[65]。「§ ア(イ)『様々な自然災害に対応したハザードマップや新旧地形図をはじめとする各種の地理情報について、その情報を収集し、読み取りまとめる地理的技能を身に付けること』」62頁[65]
    地理的技能については、地理情報(地域に関する情報のことであり、地理的な事象が読み取れたり、地域的特色に結び付く事象を見いだしたりすることができる資料のことをいう)を「収集する技能」、「読み取る技能」、「まとめる技能」の三つの技能に分ける」
    、「§§ (2) 地理的技能について(内容の取扱いの(1)のイ) 」、117-119頁。

出典

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