卒業式
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海外における卒業式
日本国外でも学位授与のための卒業式は存在するが、西欧諸国など学校の課程終了が公的試験(バカロレアやアビトゥーアの取得)によって認定される国では、卒業という概念はなく、そのため卒業式も存在しない[8]。
アメリカでは6月、ブラジルでは1月、韓国では2月が多い。これは学年年度(アメリカでは6月に年度終了、9月から新学期)による違いである。
アメリカ海軍兵学校の卒業式・兼(少尉)任官式
2005年5月27日撮影米国ジョージア州のブランズウィック高校の卒業式
2007年5月25日撮影
卒業式の形式
大きく分けて、一面式と対面式の2種類がある。
一面式
演壇に向かって卒業生一同、在校生一同、保護者一同の順に同じ方向で配席される。教職員と来賓は両側から内向きに配席される。 伝統的な方法である。
対面式
近年特に小学校で増えてきた方式である。一部の中学校や特別支援学校でも採用されている。
- その名のとおり、演台を中央に置かれた卒業生と在校生・保護者、教職員と来賓が向かい合わせになり進行する方式である。そのため、在校生と卒業生の目が合うため緊張感が持ちやすく、近年多くの小学校などで取り入れられている。
- その際、後述の送辞・答辞の代わりに「卒業の言葉」が用意され、呼びかけが行われる。また途中で卒業の歌が入る場合が多い。
- 特徴としてステージが空くため、さまざまな演出がしやすい。その一方で、生徒と教職員、保護者、来賓などとの上下関係を希薄にさせることから「悪平等」であるという側面もあり、賛否両論である。
なお一面式の卒業式でも、「卒業の言葉」が行われる際は対面式になり、卒業生が振り向き在校生と向かい合う形になる。
卒業式の内容
以下は基本例であり、実際の形式等については学校によって異なる。
- 1.卒業生入場
学級担任教諭が卒業生を先導する。その際、吹奏楽部による演奏やBGM(「威風堂々」など)をバックに入場する。小中学校では1クラスずつ男女で2列を成して入場することが多いが、主に高等学校では学級担任の手によって証書授与を受けることも多いため、2クラス同時に1列ずつ成して入場することもある。
なお、大学等の高等教育機関(以下「大学等」)では式次第としては行われない(後述の「卒業生退場」も同様)。
- 2.開式の辞(開式の言葉)
司会者により開式宣言が行われる。
- 3.国歌斉唱(国歌演奏)
君が代。
大学等ではこれに代えて式歌斉唱(大学独自の歌であり、後述の卒業歌と別物)が行われる場合もある。
なお宗教系の学校では歌われないことが多く、特にミッションスクールでは聖歌が何曲か歌われたりする[要出典]。
- 4.学事報告
来賓として招待した学校教育関係者(教育委員会など)への業務報告を行う。これは、一年間の職員の体制、各学年の入学・進級の実績などを報告するもので、主に公立小で行われることが多い。
- 5.卒業証書授与
卒業証書授与は校長(幼稚園・保育園の場合は園長、大学の場合は学長・総長。以下まとめて「校長等」と称する)によって行われる。校長等の脇には教頭や卒業生の学年主任、幼稚園・保育園などの場合は担任教員などの教員がつく。
なお授与の際、教員は卒業生にねぎらいの言葉を掛ける場合もある。ただし、学年の規模や校風による。
- 6.式辞(「学校長式辞」など)
校長等により行われる。「告辞」と称する場合もあり、私立学校においては、学校法人理事長による式辞も行われる。
- 7.来賓祝辞
教育関係者など、列席の来賓により行われる。
都道府県立高等学校の場合は知事祝辞が必ずあるが、年度末で定例議会開会中であり、また知事が全ての高校へ出席するのは時間的に不可能のため、副知事が出席代読する例が非常に多い。
- 8.来賓紹介
上記の者を含む、列席の来賓を紹介する。
- 9.祝電披露
上記以外の者からの祝電を発表する。
- 10.記念品贈呈
卒業生が母校に遺す記念品の紹介。
- 11.送辞・答辞/卒業の言葉
基本的に、「送辞」は在校生代表が卒業生へ向けて、また「答辞」は卒業生代表が校長等へ向けて発言する。送辞・答辞共に内容は基本パターンがあり、発言者生徒が教師の助言を受けて自分達の環境に合わせて加筆することが多い。
なお小学校などにおいては「卒業の言葉」と称し、在校生・卒業生による対面式になる場合が多い。
一方で、学校によっては送辞がなく答辞のみの所があるほか、送辞・答辞ともに行われない所もある。
- 12.謝辞
保護者代表により行われる。
- 13.式歌(卒業歌)
旅立ちの日に、仰げば尊し、蛍の光、未来へ、旅立ちの時〜Asian Dream Song〜、手紙など。小学校の場合は上記の「卒業の言葉」の合間に歌われることが多い。
なお、学校によっては卒業歌自体が歌われない所もある。
- 14.校歌斉唱
学校によっては国歌斉唱のあとに斉唱する所もある。
- 15.閉式の辞(閉式の言葉)
司会者により閉式宣言が行われる。
- 16.卒業生退場
担任教諭が先導。入場と同様、吹奏楽部の演奏(「マイ・ウェイ」など)をバックに退場する。大学などでは式次第としては行われない。
- 防衛大学校(文部科学省ではなく防衛省所管の省庁大学校)[注釈 5]の「卒業式典」においては、「卒業」はすなわち「部隊解散」のため、卒業生たちは部隊長の「学生隊解散!」の号令で一斉に制帽を放り投げ、会場から飛び出す。
注釈
- ^ 学校ではなく、児童福祉法第7条に規定される児童福祉施設である。
- ^ 学校教育法施行規則では、小学校は第50条、中学校は第72条、高等学校は第83条、中等教育学校は第108条第1項(前期課程)および第2項(後期課程)、そして特別支援学校は第126条(小学部)・第127条(中学部)・第128条(高等部)にそれぞれ規定される。なお義務教育学校についても、第79条の6第1項で小学校の規定が前期課程に、同条第2項で中学校の規定が後期課程にそれぞれ準用となる。
- ^ 学校教育法施行規則第58条において、「校長は、小学校の全課程を修了したと認めた者には、卒業証書を授与しなければならない」(第79条で中学校、第79条の8で義務教育学校、第104条で高等学校、第113条で中等教育学校、そして第135条第2項で特別支援学校(小学部・中学部・高等部)にそれぞれ準用する)と規定されているが、学校行事も教育課程という意味では、「全課程」とは「入学式から卒業式に至るまでの、学校行事を含めた全課程」ということになる。
- ^ 「学校生活に有意義な変化や折り目を付け、厳粛で清新な気分を味わい、新しい生活の展開への動機付けとなるような活動を行うこと」を目的としている。
- ^ 防衛省設置法第14条および第15条に規定された陸海空自衛隊の幹部自衛官養成機関(諸外国の軍隊における士官学校に相当する)であり、学校教育法に規定する大学ではない。
- ^ 教育基本法第15条により、宗教に関する「寛容の態度」や「一般的な教養」、および「社会生活における地位」は、「教育上尊重されなければならない」とされている。なお、国公立学校においては同条第2項により「宗教教育」や「宗教的活動」が禁止されている。
出典
- ^ “2021(令和3)年度 名古屋外国語大学 大学院修了式・大学卒業式の挙行について | News&Topics | 名古屋外国語大学 The World with Us! 世界はわたしたちとともに” (日本語). www.nufs.ac.jp. 2022年7月24日閲覧。
- ^ “2021年度3月学位記授与式が挙行されました | お知らせ | キャンパスライフ | 名古屋商科大学 - AACSB国際認証校” (日本語). 名古屋商科大学. 2022年7月24日閲覧。
- ^ “2021年度学位記授与式を挙行 - NEWS”. 愛知大学. 2022年7月24日閲覧。
- ^ 「卒業証書授与式」は「卒業式」の正式名称じゃないの? - エキサイトニュース
- ^ "卒業式、入学式の延期・中止相次ぐ 新型コロナ感染拡大で". 毎日新聞(2020年2月25日作成). 2021年2月26日閲覧。
- ^ “「特別な卒業式に」 コロナで行われなかった卒業式開催 東京”. NHKニュース (日本放送協会). (2020年11月3日) 2021年2月26日閲覧。
- ^ “学位記授与式(対象:大学院修了者)” (日本語). 東京大学. 2022年3月10日閲覧。
- ^ ブリタニカ国際大百科事典(電子辞書対応小項目版2006年)
- ^ 横浜市生涯学習ページ 「はまなび」 - 横浜市歌
- ^ 2019年3月8日中日新聞朝刊27面
- 1 卒業式とは
- 2 卒業式の概要
- 3 海外における卒業式
- 4 卒業式の出席者の服装
- 5 卒業式における問題
- 6 参考文献
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