レズビアン・ゲイ映画
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/15 07:21 UTC 版)
日本
概要
性的少数者(LGBT)をテーマにしており、恋愛映画にとどまらず、レズビアン(女性同性愛者)やゲイ(男性同性愛者)として生きる人間の悲喜劇やドラマなどが主題になっている。
一般の映画で同性愛をテーマにした作品は、メジャー日本映画初のゲイフィルムと呼ばれる木下恵介監督の「惜春鳥」(1959年)、三島由紀夫原作「肉体の学校」(1965年、木下亮監督)、ピーター主演「薔薇の葬列」(1969年、松本俊夫監督)など、作品数は少ないながらも欧米の有名ゲイ映画が作られたのと同時期か、それより早い時期に作られている。
その後は1980年代後半のイギリス・ゲイ映画「アナザー・カントリー」、「モーリス」の日本公開を経て、1990年代に入った頃から「らせんの素描」、「二十才の微熱」など、ポルノではない本格的に同性愛をテーマにした映画作品などが、かつてより多く作られ始めた。ちなみに「二十歳の微熱」監督の橋口亮輔は自らゲイであることをカミングアウトしていた。
かつては同性愛へのタブー視が強かった日本以外のアジアでも同性愛映画は製作されており、台湾映画には「孽子」(1986年)、第43回ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した「ウェディング・バンケット」(1993年、台米合作)、ティーンズゲイの恋愛をポップに描いた「僕の恋、彼の秘密」(2004年)などがあり、香港映画にはカンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞の「さらば、わが愛/覇王別姫」(1993年)、レスリー・チャンとトニー・レオン主演「ブエノスアイレス 」(1997年)、韓国映画では「王の男」(2005年)、「後悔なんてしない」(2006年)、男性間の性行為が違法となっているシンガポールでは「アニバーサリー」(2009)などが作られている。2000年代以降は、製作本数も急激に増えてきている(参照)。
近年はゲイポルノ映画や薔薇族映画などといわれたジャンルの作品にも、一般のゲイ映画作品と一緒に「ロッテルダム国際映画祭」などの海外の国際映画祭や「レインボー・リール東京」(旧・東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)を含むゲイ・レスビアン映画祭に出品する作品が出てきており(参照)、両ジャンルの境界は薄れつつある。
日本では1992年に第1回目が開催された「レインボー・リール東京」は2017年で26回目を迎え、2005年以降は一旦中断されていた関西クィアフィルムフェスティバルも再開された。また2005年以降は香川レインボー映画祭も毎年開催されている。2007年には「第1回アジアンクィア映画祭(AQFF)」が東京都世田谷区・下北沢で開催され、それ以降は毎年開催されている。
主なレズビアン映画作品
- 野戦看護婦(安斎貞子原作、野村浩将監督、1953年)
- 卍(まんじ)(谷崎潤一郎原作、1964年、1983年、1998年、2006年)
- 美しさと哀しみと(川端康成原作、篠田正浩監督、1965年)
- ㊙女子大生 妊娠中絶(小西通雄監督、1969年)
- 残酷おんな情死(西村昭五郎監督、1970年)
- 実録桐かおる にっぽん一のレズビアン(藤井克彦監督、1974年)[1]
- レズビアンの女王 桐かおる(藤井克彦監督、1974年)[1]
- セーラー服百合族(1983年)
- セーラー服百合族2(1983年)
- OL百合族19歳(1984年)
- 猫のように(1988年)
- 櫻の園 (吉田秋生原作、1990年、2008年公開)
- ナチュラル・ウーマン(松浦理英子原作・脚本、1994年、2010年)
- 新・百合族 先生,キスしたことありますか?(1994年)
- 新・百合族2 もう森へなんかいかない(1994年)
- 新・百合族3 ビリティスはいくつの失恋を歌う?(1995年)
- LOVE/JUICE (2000年)
- 火星のカノン(2001年)
- blue(魚喃キリコ原作、安藤尋監督、2003年)
- LOVE MY LIFE(やまじえびね原作、川野浩司監督、2007年)
- TOPLESS(内田英治監督、2008年)
- カケラ(桜沢エリカ原作『LOVE VIBES』、安藤モモ子監督、2009年)
- GL ~小悪魔たちの誘惑~(2009年)
- ホワイトリリー (2017年公開)
主なゲイ映画作品
(ゲイが主題、ゲイが準主役の映画。重要なキャストにゲイが登場する作品を含む)
- 惜春鳥(1959年、木下恵介監督)
- 肉体の学校(1965年、木下亮監督、三島由紀夫原作)
- 薔薇の葬列(1969年、松本俊夫監督、ピーター主演)
- 戦場のメリークリスマス(1983年、大島渚監督)
- らせんの素描(1991年、小島康史監督)
- おこげ(1992年、中島丈博監督)
- きらきらひかる(1992年、松岡錠司監督)
- 二十才の微熱(1993年、橋口亮輔監督)
- 眠らない街〜新宿鮫〜(1993年、滝田洋二郎監督、キャストの一部にゲイが登場)
- GONIN(1995年、石井隆監督、キャストの一部にゲイが登場)
- 渚のシンドバッド(1995年、橋口亮輔監督、岡田義徳主演)
- ブルース・ハープ(1998年、三池崇史監督、田辺誠一、池内博之主演)
- 御法度(1999年、大島渚監督、司馬遼太郎原作)
- 憚り天使(1999年、今泉浩一監督)
- ハッシュ!(2001年、橋口亮輔監督、田辺誠一、高橋和也主演)
- ゲルマニウムの夜(2005年、大森立嗣監督)
- 真夜中の弥次さん喜多さん(2005年、宮藤官九郎監督)
- メゾン・ド・ヒミコ(2005年、犬童一心監督)
- 46億年の恋 (2006年、三池崇史監督 安藤政信主演)
- BOYS LOVE(2006年、寺内康太郎監督)
- BOYS LOVE 劇場版(2007年、寺内康太郎監督)
- いつかの君へ(2007年、堀江慶監督)
- スキトモ(2007年、三原光尋監督)
- 愛の言霊(2007年、金田敬監督)
- 僕らの愛の奏で(2008年、草野陽花監督)
- 体育館ベイビー(2008年、深川栄洋監督)
- 禁断の恋(2008年、草野陽花監督)
- ALLDAYS 二丁目の朝日(2008年、村上賢司監督)
- BL 〜僕の彼氏を紹介します〜(2009年、草野陽花監督)
- タクミくんシリーズ2 虹色の硝子(2009年、横井健司監督)
- タクミくんシリーズ3 美貌のディテイル(2010年、横井健司監督)
- タクミくんシリーズ4 pure~ピュア~(2010年、横井健司監督)
- 愛の言霊 〜世界の果てまで〜(2010年、金田敬監督)
- タクミくんシリーズ5 あの、晴れた青空(2011年、横井健司監督)
- 悪の教典(2012年、三池崇史監督、キャストの一部にゲイが登場)
- EDEN(2012年、武正晴監督、原作:船戸与一「夏の渦」、主演:高橋和也ら)
- どうしても触れたくない(2014年、天野千尋監督)
- セブンデイズ MONDAY→THURSDAY(2015年、横井健司監督)
- セブンデイズ FRIDAY→SUNDAY(2015年7月、横井健司監督)
- 宇田川町で待っててよ。(2015年、湯浅典子監督)
- 怒り(2016年、李相日監督、キャストの一部にゲイが登場)
- ダブルミンツ(2017年、内田英治監督)
- ひだまりが聴こえる(2017年、上條大輔監督)
- 花は咲くか(2018年、谷本佳織監督)
- 劇場版パタリロ!(2019年、小林顕作監督)
- 劇場版 おっさんずラブ 〜LOVE or DEAD〜(2019年、瑠東東一郎監督)
- 窮鼠はチーズの夢を見る(2020年、行定勲監督)
- リスタートはただいまのあとで(2020年、井上竜太監督)
- his(2020年、今泉力哉監督)
- 劇場版ポルノグラファー〜プレイバック〜(2021年、三木康一郎監督)
薔薇族映画作品
日本では一般映画と薔薇族映画(成人映画)は分けられてきたが、近年は薔薇族映画にも国際映画祭や東京レズビアン&ゲイ映画祭で上映されるものも多く、両者の境界は曖昧になってきている。(一部抜粋)
- 薔薇と海と太陽と(1981年制作,成人館での上映は1982年)
- 白い牡鹿たち(松浦康治監督、1982年)
- 薔薇の星座 (松浦康治監督、1982年)
- 巨根伝説 美しき謎(中村幻児監督、大杉漣出演)1983)
- 木又三郎君の事 ぼくらの時代(廣木隆一監督、1983年、ENK)
- 薔薇の館 男男(ホモ)達のパッション (東郷健監督、1983年)
- ぼくらの季節(同、1984年、ENK)
- 黄昏のナルシー(小林悟監督、1984年)
- アポロ MY LOVE(新倉直人監督、1984年)
- 狂った舞踏会(佐藤寿保監督、1989年、ENK)
- シネマHOMOパラダイス(山本竜二監督、1993年)
- あなたがすきです、だいすきです(大木裕之監督、1994年、ENK)1995年度ロッテルダム国際映画祭正式招待作品
- たまあそび(大木裕之監督、1997年)
- 思いはあなただけ~I Thought About you~(北沢幸雄監督、1997年、ENK)1997年度ピンク大賞ベストテン第1位
- こんな、ふたり(池島ゆたか監督、1998年)
- 天使の楽園(鈴木章浩監督)2000年度ロッテルダム、バンクーバー国際映画祭正式招待作品、トリノ国際ゲイ&レズビアン映画祭正式招待作品、02年度ソウル・クィア映画祭正式招待作品
- ナウティ・ボーイズ~浮気なぼくら~(吉行由美監督、2001年)
- キミニ惚レテル(樹かず監督、2002年)
- 恋する男たち(池島ゆたか監督、2003年、オーピー) 第12回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭出品
- せつないかもしれない(吉行由美監督、2004年、オーピー) 第13回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭出品
主なレスビアンドラマ作品
- 魔性(1984年、原作:一色次郎)
- 麗わしき鬼(2007年、中島丈博脚本)
- 「制服のイブ」(2007年、テレビ東京恋愛診断 第3章より)
- 佐藤家の朝食、鈴木家の夕食(2013年、BSジャパン)
- 作りたい女と食べたい女(2022年、NHK総合テレビ)
主なゲイドラマ作品
(キャストの一部にゲイが登場する作品含む。)
- あすなろ白書(1993年、フジテレビ系、キャストの一部)
- 同窓会(1993年、日本テレビ系。主役がゲイで脇役がバイセクシャル。全編に渡り同性愛がテーマ)
- 告白(1997年、日本テレビ系。エンディング主題歌も同性愛をテーマにしたユーミンの『告白』)
- ロマンス(1999年、日本テレビ系、つかこうへい原作)
- 麗わしき鬼(2007年、中島丈博脚本、フジテレビ系)
- 肩ごしの恋人(2007、TBS系、キャストの一部のみ)
- 花ざかりの君たちへ(2007年、フジテレビ系)
- 「翼のカケラ」(2007年、テレビ東京「恋愛診断」第1章より)
- 「運命のコドウ」(2007年、テレビ東京「恋愛診断」第4章より)
- ママはニューハーフ(2009年、テレビ東京)
- クレオパトラな女たち(2012年、日本テレビ系)
- シェアハウスの恋人(2013年、日本テレビ系)
- 佐藤家の朝食、鈴木家の夕食(2013年、BSジャパン)
- おっさんずラブ 年の瀬 変愛ドラマ第3夜(単発版)(2016年、テレビ朝日系)
- おっさんずラブ(2018年、テレビ朝日系)
- 隣の家族は青く見える(2018年、フジテレビ系)
- ポルノグラファー(2018年、フジテレビ系)
- ポルノグラファー〜インディゴの気分〜(2019年、フジテレビ系)
- 腐女子、うっかりゲイに告る。(2019年、NHK総合)
- おっさんずラブ-in the sky-(2019年、テレビ朝日系)
- きのう何食べた?(2019年、テレビ東京系)
- his〜恋するつもりなんてなかった〜(2019年、メ~テレ系)
- 彼が僕に恋した理由(2020年、TOKYO MX系)
- 30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(2020年、テレビ東京系)
- 絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男(2021年、テレビ朝日系)
- 彼が僕に恋した理由 SEASON 2(2021年、TOKYO MX系)
- 僕もアイツも新郎です。(2022年、関西テレビ制作・フジテレビ系)
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