チバニアン
チバニシアンは、千葉県市原市の「千葉セクション」が国際標準模式地として選定された場合に命名される時代名である。2016年夏に国際地質科学連合の会合によって決定される。
千葉セクションには、約77万年前の更新世中期の地層があり、現在の地場とは逆の地場が含まれている。なお、同様の地層には、イタリアの「モンタルバノ・ジョニカ」や「バレディ・マンチェ」などがある。
関連サイト:
国際地質科学連合 - (英語)
チバニアン
英語:Chibanian
地質学的区分における中期更新世、約77万年前~12万6千年前の時代区分の名称候補として2017年11月に内定した呼称。同月時点では確定したわけではないが、地質年代の名称としては初となる日本の地名由来の国際標準名になるものとして期待と共に報じられている。
チバニアンと呼ばれる約77万年前の地質年代は、地球の南北の磁場(地磁気)が逆転した時期であり、地球史上最後に地磁気が逆転した時代とされている。同時代を示す地質学的な国際標準模式地(GSSP)として、千葉県市原市の地層と、イタリアの地層が候補に挙った。市原市の地層がGSSPとして選定されれば、国内初のGSSPとなる。同時に「チバニアン」の名称が正式に採用される公算が極めて濃厚となる。
チバニアンの名称が国際標準名として正式に決定されるか否かは、国際地質科学連合(IUGS)における発表を待つことになるが、発表時期は2017年11月時点では特に公表されていない。2018年の初旬から半ば頃になるものと目されている。
関連サイト:
千葉県市原市の地層を地質時代の国際標準として申請 認定されれば地質時代のひとつが「チバニアン」に ― 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 国立極地研究所
チバニアン【Chibanian】
チバニアン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/06 16:20 UTC 版)
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累代 | 代 | 紀 | 世 | 期 | 基底年代 Mya[* 3] |
---|---|---|---|---|---|
顕生代 | 新生代 | 第四紀 | 完新世 | メガラヤン | 0.0042 |
ノースグリッピアン | 0.0082 | ||||
グリーンランディアン | 0.0117 | ||||
更新世 | 後期更新世 | 0.129 | |||
チバニアン | 0.774 | ||||
カラブリアン | 1.8 | ||||
ジェラシアン | 2.58 | ||||
新第三紀 | 鮮新世 | ピアセンジアン | 3.6 | ||
ザンクリアン | 5.333 | ||||
中新世 | メッシニアン | 7.246 | |||
トートニアン | 11.63 | ||||
サーラバリアン | 13.82 | ||||
ランギアン | 15.97 | ||||
バーディガリアン | 20.44 | ||||
アキタニアン | 23.03 | ||||
古第三紀 | 漸新世 | チャッティアン | 27.82 | ||
ルペリアン | 33.9 | ||||
始新世 | プリアボニアン | 37.8 | |||
バートニアン | 41.2 | ||||
ルテシアン | 47.8 | ||||
ヤプレシアン | 56 | ||||
暁新世 | サネティアン | 59.2 | |||
セランディアン | 61.6 | ||||
ダニアン | 66 | ||||
中生代 | 251.902 | ||||
古生代 | 541 | ||||
原生代 | 2500 | ||||
太古代[* 4] | 4000 | ||||
冥王代 | 4600 | ||||

チバニアン(英語: Chibanian)は、77.4万年前から12.9万年前にあたる、地質時代の一つ[1]。2020年1月15日に国際地質科学連合により「チバニアン」(Chibanian、千葉時代)と命名され、翌々日の1月17日に国立極地研究所で命名決定の記者会見が開かれた[2][3][4]。2022年5月21日に現地の地層に時代境界となるゴールデンスパイクが設置された[5]。
総説

チバニアン(期/階)[注 1]もしくはイオニアン(期/階)[注 2]と命名することが国際地質科学連合国際層序委員会(IUGS-ICS)で検討され[6]、2020年1月、チバニアン(Chibanian、千葉時代)に決定した[3]。
カラブリアンとチバニアンとの境界は、地球史上最後の地磁気逆転である松山‐ブリュンヌ逆転の起きた時期である[7]。これを示す国際標準模式層断面及び地点の候補として、以下の3か所の地層が挙がっていた[7]。
- 日本・千葉県市原市田淵の養老川沿いにある「千葉セクション」[8]
- イタリア・バジリカータ州マテーラ県の「モンタルバーノ・イオーニコセクション」[9]
- イタリア・カラブリア州クロトーネ県サン・マウロ・マルケザートの「ヴァレ・デ・マンケ(Valle di Manche)セクション」[10]
チバニアンの決定を受け、2021年度から2026年度にわたり総事業費約15億円をかけて現地のガイダンス施設等を整備する計画であり[11]、2022年8月には隈研吾建築都市設計事務所が設計を受託した[12]。
事業費のうち、8億円がガイダンス施設の建物本体、2億円が展示関係、5億円が地層まで約500メートルの遊歩道整備として計上されている[13]。
気候
- ギュンツ氷期(47万年前 - 33万年前)[14]
- ギュンツ=ミンデル間氷期(33万年前 - 30万年前)
- ミンデル氷期(30万年前 - 23万年前)[14]
- ミンデル=リス間氷期(23万年前 - 18万年前)
- リス氷期(18万年前 - 13万年前)[14]
- エーミアン間氷期(リス=ヴュルム間氷期、13万年前 - 7万年前)
国際審査を巡る対立
国際地質科学連合によるGSSPの審査は2017年から2020年にかけて4段階の審査を経て行われたが、茨城大学や国立極地研究所を中心とする研究グループと楡井久(茨城大名誉教授)を会長とする古関東深海盆ジオパーク推進協議会(協議会)との間でしばしば対立が見られた[15]。
協議会は、2015年の国際第四期学連合の行事として行われた現地巡検の際に別の地域の地磁気データをチバニアンの露頭に貼り付けたとして不正を指摘した[16]。一方、研究グループは説明が不十分だったことは認めたが、火山灰の層から同じ時代の地層と確認されており、17年の現地データでも裏付けられていると説明した。
2019年5月には、楡井が借りているチバニアン露頭沿いの土地が立入り禁止になり、審査が困難になると朝日新聞が報じた[17]。これに対して研究グループは「地質時代に日本の名前が刻まれるチャンスなのに残念だ」と述べ、同年9月には市原市長の小出譲治が「立ち入り禁止を禁ずる」条例を制定した[18][19]。一方、協議会側は立ち入りは自由と説明しており[20]、「以前から借地を安全面の理由から立ち入り禁止にしているのは市原市であり、協議会が立ち入り禁止にした事実はない。むしろ、安全に見学できるように私費で階段を整備している。研究グループを含めた多くの見学者もこの階段を利用しているが、立入禁止という誤った情報が報じられるのは残念だ」と述べている[21]。
協議会は立入禁止と報じられた理由について、2015年の現地巡検における不正行為を指摘したことによる報復と説明している[22]。
国際層序委員会に提出された提案申請書に用いられた2017年から2020年にかけての論文には、協議会から古地磁気データの削除(改ざん)等の疑義が出されているが、告発を受けた茨城大学と国立極地研究所は「査読付き学術誌に掲載済みの論文であり、結論には影響しないため研究不正ではない」として調査を実施しない方針を固めている[23]。
千葉セクションの国際標準地をめぐって
千葉セクションの国際標準模式層断面及び地点(地球磁場逆転層チバニアン))としての登録申請をめぐる動きの中で、当初は楡井も申請を推進する立場から発言していた[24]。ところが、2010年代後半になると、申請を進めようとしていたグループの研究に不適切な部分があり、認められないとする見解を示すようになった[25]。 楡井を会長とする研究団体「古関東深海盆ジオパーク認証推進協議会」は、2018年1月中旬に、現地の民有地部分に、所有者の協力を得てコンクリートブロック製の階段を設けた[26][27]。これに対して、天然記念物としての指定を目指していた市原市は、現状変更にあたるとして困惑していると報じられた[27]。2019年5月、楡井は現地の民有地の所有者から前年の内に借地権を取得していたことを公表し、これを根拠に他の研究者の自由な立ち入りを拒むこともあり得ると述べ、これによって現地への自由な立ち入りが前提となっている国際標準模式層断面及び地点への登録は極めて困難になったと報じられた[28]。事実、申請手続きが一時中断した[29]。 上記に対し、2019年9月19日、市原市が提出していた「同地層へ研究者が調査や研究を進めるため立ち入ることを、土地の所有者や賃借権者らが正当な理由なく妨げてはならないことや、妨げた場合は5万円以下の過料を科す罰則規定を定めた条例案」が全会一致で可決・成立した[30][31][32]。「古関東深海盆ジオパーク認証推進協議会」の一連の活動は、日本ジオパークネットワーク運営会議 保全ワーキンググループによって「ジオパーク活動の趣旨から外れた問題のある行動」と指摘されている[33]。 2020年1月17日、韓国で行われた国際学会での理事会での投票の結果、千葉セクションの国際標準地への登録が認められ、正式に「チバニアン」と名付けることが決まった[32][34][35]。
脚注
注釈
出典
- ^ “INTERNATIONAL CHRONOSTRATIGRAPHIC CHART (国際年代層序表)” (PDF). 日本地質学会 (2020年3月). 2021年1月27日閲覧。
- ^ “日本地質学会 地質系統・年代の日本語記述ガイドライン_改訂履歴”. 日本地質学会 (2021年12月2日). 2021年12月30日閲覧。
- ^ a b “命名「チバニアン」 77万4000~12万9000年前の地質時代 国際学会決定”. 毎日新聞 (2020年1月17日). 2020年1月17日閲覧。
- ^ “チバニアン正式決定!”. 千葉県立中央博物館. 2020年5月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月3日閲覧。
- ^ “「チバニアン」待望の「ゴールデンスパイク」設置 千葉 市原”. NHK. (2022年5月23日)
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の日付が不正です。 (説明)⚠ - ^ “地質時代 「チバニアン」命名申請 国際連合、来年結論”. 毎日新聞 (2017年6月7日). 2017年11月22日閲覧。
- ^ a b “千葉県市原市の地層を地質時代の国際標準として申請 認定されれば地質時代のひとつが「チバニアン」に”. 国立極地研究所 (2017年6月7日). 2017年11月22日閲覧。
- ^ 市原市 (2017年11月17日). “市原市田淵の地磁気逆転期地層のGSSPへの認定について”. 2017年12月8日閲覧。
- ^ The Montalbano Jonico Section (Southern Italy): A Candidate for the GSSP of the Ionian Stage (Lower–Middle Pleistocene Boundary)”. STRATI 2013. 2017年11月23日閲覧。 N. Ciaranfi, G. Aiello, D. Barra, A. Bertini, A. Girone, P. Maiorano, M. Marino, P. Petrosino (2014年4月24日). “
- ^ The Valle di Manche section (Calabria, Southern Italy): A high resolution record of the Early-Middle Pleistocene transition (MIS 21-MIS 19) in the Central Mediterranean”. Quaternary Science Reviews. 2017年11月23日閲覧。 Luca Capraro, Patrizia Ferretti, Patrizia Macrì, Daniele Scarponi, Fabio Tateo, Eliana Fornaciari, Giulia Bellini, Giorgia Dalan (2017年6月1日). “
- ^ “「地磁気反転」の謎わかる? チバニアン観察施設を整備”. 朝日新聞 (2020年11月30日). 2021年1月22日閲覧。
- ^ “「チバニアン」案内施設、隈研吾氏が設計へ 26年度にオープン”. 毎日新聞 (2022年8月30日). 2022年8月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月31日閲覧。
- ^ “チバニアン施設 里山に溶け込む「ジオルーフ」 隈研吾氏が設計「時代の転換点の象徴に」 シンポで概要発表”. 千葉日報 (2023年2月28日). 2023年3月1日閲覧。
- ^ a b c 青野靖之. “これまでの気候の移り変わり(第四版)”. 大阪府立大学緑地環境科学類生態気象学研究グループ. 2017年11月23日閲覧。
- ^ SHIMBUN,LTD, NIKKAN KOGYO. “【電子版】「チバニアン」審査中断 国内団体が異議 極地研など反論”. 日刊工業新聞電子版. 2025年3月23日閲覧。
- ^ “「チバニアン」千葉セクションにおける本協議会の関わりと借地権について | ページ 2”. 古関東深海盆ジオパーク推進協議会 (2022年5月22日). 2025年3月23日閲覧。
- ^ “チバニアンがピンチ 反対者が土地押さえ、申請に待った:朝日新聞(中山由美)”. 朝日新聞 (2019年5月25日). 2025年3月23日閲覧。
- ^ 産経新聞 (2019年6月24日). “チバニアン 調査立ち入りの妨げ禁じる条例制定へ 市原市「研究に弊害」「市の責務果たす」”. 産経新聞:産経ニュース. 2025年3月23日閲覧。
- ^ “「チバニアン」を救った市原市のウルトラC市条例(全文)”. デイリー新潮 (2020年2月9日). 2025年3月23日閲覧。
- ^ 兜森衛. “「チバニアン」めぐり地質学者同士が泥沼論争…「データのねつ造、改ざん、盗掘」が争点”. ビジネスジャーナル/Business Journal | ポジティブ視点の考察で企業活動を応援 企業とともに歩む「共創型メディア」. 2025年3月23日閲覧。
- ^ “「チバニアン」千葉セクションにおける本協議会の関わりと借地権について | ページ 3”. 古関東深海盆ジオパーク推進協議会 (2022年5月22日). 2025年3月23日閲覧。
- ^ “「チバニアン」GSSP提案申請書に用いられた論文に関する研究不正の疑いについて | ページ 5”. 古関東深海盆ジオパーク推進協議会 (2023年10月25日). 2025年3月23日閲覧。
- ^ “「チバニアン」GSSP申請論文における特定不正行為の告発と、その後の研究機関の回答について”. 古関東深海盆ジオパーク推進協議会 (2020年12月26日). 2025年3月23日閲覧。
- ^ “久米宏 ラジオなんですけど 過去ログページです! ゲスト:楡井久さん(地質学者)” (2015年7月18日). 2019年5月27日閲覧。
- ^ 小宮山亮磨、小林舞子「「チバニアン」に異議 国際学会の審査中断」『朝日新聞・朝刊・ちば首都圏』2018年5月19日、34面。 - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
- ^ 古関東深海盆ジオパーク推進協議会ホームページ
- ^ a b 石平道典 (2018年2月6日). “便利?「チバニアン」階段 研究団体、事故起きないよう整備 市原市は困惑”. 朝日新聞・朝刊・ちば首都圏: p. 29 - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
- ^ “首都圏NEWSWEB “チバニアン”の登録に支障も”. 日本放送協会 (2019年5月27日). 2019年5月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年5月27日閲覧。
- ^ “「自由な立ち入り」困難、チバニアン申請手続き中断 :”. 読売新聞オンライン. 読売新聞社 (2019年5月27日). 2020年1月17日閲覧。
- ^ “「チバニアン」研究目的の立ち入りめぐる条例成立 千葉 市原”. NHK政治マガジン. 日本放送協会 (2019年9月19日). 2020年1月17日閲覧。
- ^ “調査妨害阻止へチバニアン条例 千葉・市原市で成立”. SankeiBiz. 産経新聞社 (2019年9月19日). 2020年1月17日閲覧。
- ^ a b “チバニアン誕生 地球史に新時代 市原の地磁気逆転地層、新名所に”. www.chibanippo.co.jp. 千葉日報 (2020年1月17日). 2020年1月17日閲覧。
- ^ “JGN運営会議保全ワーキンググループ - チバニアンアクセス”. sites.google.com. 2020年4月4日閲覧。
- ^ 日本放送協会. “「チバニアン」 国際学会が命名決定 日本の地層で初登録”. NHKニュース. 2020年1月17日閲覧。
- ^ “地球史の地質時代名に「チバニアン」 国際学会が決定”. 日本経済新聞 電子版. 日本経済新聞社 (2020年1月17日). 2020年1月17日閲覧。
外部リンク
- 「チバニアンと地磁気逆転」 - 日本地球惑星科学連合2018年大会 地球・惑星科学トップセミナー
チバニアン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/26 10:09 UTC 版)
詳細は「チバニアン」を参照 「ホモ・ハイデルベルゲンシス」、および「旧人類」を参照 約60万年前以降にアフリカでアシュール型石器(英語版)の製造に関わったホモ・ハイデルベルゲンシスの出現は、後の約40万年前のホモ・ローデシエンシスやホモ・ケプラネンシスのような他の数多の旧人類の出現を予告している。ホモ・ハイデルベルゲンシスは初期の象徴的な言語形態を発展させた最初のヒト属の有力な候補である。しかし、初期のヒト属による火の利用や葬祭(英語版)の起源がこのアシュール文化まで遡るのかは未だ明らかになっていない。 同じ時期に欧州でも、スワコンベ(英語版)やシュタインハイム(英語版)、タウタヴェル(英語版)、ヴェールテッセーレーシュ(英語版)で発見されたような化石により代表される「ホモ・パラエオフンガリクス」が現れ、ハンドアックス様式の起源をもち、ホモ・エレクトス等の旧人類とサピエンス属の間に介在する人類ではないかとの説もある。 しかし今日では、介在したのはホモ・ハイデルベルゲンシスであるとする説が有力である。
※この「チバニアン」の解説は、「前期旧石器時代」の解説の一部です。
「チバニアン」を含む「前期旧石器時代」の記事については、「前期旧石器時代」の概要を参照ください。
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