80286/80386とEGCを搭載
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「PC-9801シリーズ」の記事における「80286/80386とEGCを搭載」の解説
80286 / i386の登場により、新開発の高解像度グラフィックに対応し実験機的な性格が強く見られたPC-98XAやPC-98XL2などのPC-98型番の機種での試行的な導入を経て、本流となるPC-9801型番の機種においても成功作となったPC-9801VMを基本としつつ、これらのCPUを採用した後継高性能機種が開発されるようになった。 PC-9801U2やVMに使用されたV30は、8086にはない独自の機能を持っていたが、PC-9800シリーズでは当初からV30独自の機能は利用しない方針としていた。しかし、ゲームなどのごく少数のソフトでV30固有の命令や動作タイミングに依存するものがあり、それらは80286以降のCPUでは正常に動作しない。そのため、PC-9801VXなどの後継機ではしばらくの間、それらのソフトとの互換性を維持するためにV30と80286以降の両方を搭載し、スイッチによる設定で電源投入時に動作するCPUを選択するようになっている。 PC-9801VX前期 1986年10月 5インチFDD搭載(VX0を除く)、大型筐体、FM音源なし。CPUは80286/8MHz+V30/10MHzを搭載。VX4は固定ディスクドライブ(SASI HDD、容量20MB)を搭載。 PC-9801VX後期 1987年6月 5インチFDD搭載(VX01を除く)、大型筐体、FM音源なし。CPUは80286/10MHz+V30/10MHzを搭載。VX41は固定ディスクドライブ(SASI HDD、容量20MB)を搭載。 CPU切り替え使用可能な機種ではこの機種(とPC-98XL、VXは前後期とも)のみ、搭載されているV30の最大動作クロックが10MHzとなっている。 PC-9801UX 1987年10月 3.5インチFDD搭載、小型筐体、FM音源搭載。CPUは80286/10MHz+V30/8MHzを搭載。マウスコネクタが背面から前面に移動した。UX41は固定ディスクドライブ(SASI HDD、容量20MB)を搭載。 正確にはV30 10MHz版を搭載し、8MHzで動作する。以降のCPU切り替え使用可能な機種も同様である。 筐体のデザインやカラーリングはこれまでのものを踏襲している。VM2の後継機もVM21としてVXと同じデザインになっている。 この世代以降、GRCG上位互換のEGC(Enhanced Graphic Charger)と呼ばれる、VRAM各プレーン同時制御を読み出しにも対応させて高速化を実現した新グラフィック処理プロセッサが追加されている。また、グラフィック用VRAMにはデュアルポートRAMを採用し、CPUからの書き込みとCRTCからの読み込みが同時にできる。GDCのクロックモードは従来の2.5MHzに加えて5MHzが追加された。 1987年3月13日、セイコーエプソンは最初のPC-9800シリーズ互換パソコン(以下、98互換機)となるPC-286 Model 1から4を発表した。これらはNECから著作権を侵害しているとして訴訟問題になったため4月20日に発売中止が発表され、代わりに別のチームが開発したBIOSを搭載するPC-286 Model 0が4月24日に発表された。このモデルは80286を10MHzで駆動し、当時のPC-9801VXより約20%高速であることをアピールしていた。NECは6月22日にPC-9801VXのマイナーチェンジモデル PC-9801VX01/21/41を発売した。これらはV30に加えて80286のクロック周波数も8MHzと10MHzから選択できる他、内蔵のN88-BASIC(86)がEGCに対応し、80286の10MHzモードではこのBASICを使用するプログラムでグラフィックの描画がより速くなる(他のCPU動作モードでは従来機と同等)。 PC-9801RA/RX前期 1988年7月(RA)/9月(RX) 5インチFDD搭載、大型筐体、FM音源なし。CPUはRA2/5が80386DX/16MHz+V30/8MHz、RXが80286/12MHz+V30/8MHzを搭載。RA5は固定ディスクドライブ(SASI HDD、容量40MB)を、RX4は固定ディスクドライブ(SASI HDD、容量20MB)を搭載。 PC-9801EX/ES 1989年4月 3.5インチFDD搭載、小型筐体、EXがFM音源搭載でCPUは80286/12MHz+V30/8MHz、ESがFM音源無しでCPUは80386SX/16MHz+V30/8MHzを搭載。EX4は固定ディスクドライブ(SASI HDD、容量20MB)を、ES5は固定ディスクドライブ(SASI HDD、容量40MB)を搭載。 PC-9801RA/RS/RX後期 1989年10月 5インチFDD搭載、大型筐体、FM音源なし。CPUはRA21/51が80386DX/20MHz+V30/8MHz、RSが80386SX/16MHz+V30/8MHz、RXが80286/12MHz+V30/8MHzを搭載。RA51/RS51/RX51は固定ディスクドライブ(SASI HDD、容量40MB)を搭載。RA/RSでは固定ディスクドライブとしてSASI HDDのほか、SCSI HDDも内蔵可能になった。RXは後期モデルになっても内蔵HDD専用I/FはSASIしか利用できず、HDDモデルのHDD容量は増えたものの、FDDモデルでは機能的にまったく変化が無かった。 この世代から、筐体デザインと本体色が変更され、アイボリーとブラウンの組み合わせから、明るいグレーになっている。また、東芝J-3100シリーズに対抗すべく開発された3種類のラップトップ用カスタムLSIがこれらのデスクトップモデルにも搭載され、前世代から機能を強化しつつ筐体寸法の小型化が実現している。 また、キーボードにはvf・1 - vf・5キーが追加された。新たに開発されたキーボード内部制御用のASICが搭載され、同時に発表されたOS/2のタスク切り替えに対応するため、CapsLockおよびカナロックがソフト的なロックになった。キースイッチによる機械式ロックは廃止され、キーボード上のLEDにロック状態が表示されるようになった。 Rシリーズの後期型から、PC-8001以来続いてきたロゴタイプが変更され、縦長の曲線が弧を描いたものから、曲線角を使った正方形に近いデザインに変更された。なお、RSは後期型からの追加である。 PC-9801RAに実装された80386DXのソケットは、486DLCなどともピンアサインが共通であり、載せ替えることができる。これらのCPUの性能を十分に発揮させるには、動作クロックの変換に加え、OSにキャッシュコントロールプログラムを組み込む必要があったが、CPUアクセラレーターと称し、これを容易にする製品がサードパーティー各社から次々に発売された。本来386DXとはソケット形状が異なるはずの80486や5x86を搭載したCPUアクセラレータも発売されたことから、そうした製品を利用することでさらにCPU性能を高めることもできた。中にはメーカー制限を超えてメモリを追加実装できるCPUアクセラレーター(メルコ社のEUD-HP0Mなど)も存在し、そうした製品とハードディスク、ウィンドウアクセラレーターを組み合わせれば、Windows 95やWindows 98の実行さえ可能となる[要出典]。これにより、PC-9801RAは、普及型PC-9801シリーズの中でも、最も延命しやすい部類の機種となった[要出典]。
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