2006 FIFAワールドカップ招致活動
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「2015年FIFA汚職事件」の記事における「2006 FIFAワールドカップ招致活動」の解説
2015年10月16日付で、ドイツの雑誌であるシュピーゲルの電子版は2006年に開催されたFIFAワールドカップの招致で買収があったのではないかと伝えた。報道によれば、ドイツのワールドカップ招致委員会が1030万スイスフラン(日本円でおよそ13億円)に上る裏の口座を設けて、開催地が決定した2000年7月のFIFA理事会において、アジアの4人の理事の票を獲得するために使用していた。この理事会では、決選投票が行われ、12対11で南アフリカを下し、ドイツが開催地に選ばれた。 また、裏の口座の資金はアディダスの社長だったルイドレフュス(故人)が私的に貸したというが、大会のおよそ1年半前にルイドレフュスが返却を求めたので、ドイツのワールドカップ組織委員会では、FIFAを経由して当時1030万スイスフランに相当していた670万ユーロを返却した。なお、この貸付金についてはFIFAワールドカップの組織委員長を務めていたベッケンバウアーと現在はドイツサッカー連盟の会長を務めるボルフガング・ニールスバッハ(ドイツ語版)が、ルイドレフュスからの貸付金について承知していたとされる。 これを受け、ドイツサッカー連盟は2015年10月16日に2006 FIFAワールドカップ組織委員会が2005年にFIFAに対して、670万ユーロを文化プログラムに使用する目的で送金したことを認め、その上で、ドイツサッカー連盟の内部調査でこの670万ユーロが本来使用されるべきであったFIFA文化プログラムには使用されなかった可能性があることも明らかにされた。 この報道を受け、FIFAでは「現在、外部機関の協力を得て行っている内部調査の一環として調べる」という声明を発表したうえで、FIFAによる独自の調査に乗り出すことになった。 また、2015年10月19日にドイツの検察当局は今回の問題について、正式な捜査には至っていないが調査を行っていることをドイツのスポーツ通信社であるSID(ドイツ語版)に対して明らかにした。 フランクフルトのある主任検察官は「これは汚職、詐欺もしくは背任の疑いがある」とした上で、「これから入手可能な書類を調べることになるが、まだほんの初動段階であり捜査の開始には至っていない。疑惑につながる最初の手がかりが確認されれば、捜査になる可能性がある」と話している。 ドイツの首相報道官を務めるシュテファン・ザイバートが10月19日に行われた記者会見の中で、「この疑惑ははっきりとさせなければならない」話したものの「しかし、これは政府が介入するものではなく、DFB(ドイツサッカー連盟)とFIFAの仕事である。彼らが、この任務を成し遂げてくれることを信じている」とも話している。 2015年10月26日、2006 FIFAワールドカップの組織委員会会長を務めたベッケンバウアーが2005年にFIFAに対して送った670万ユーロ(日本円でおよそ9億円)について、「より多額の助成金を得るための手付金だった」と前置きをしたうえで、「FIFAA財務委員会の提案を受け入れたが、拒絶すべきだった。この過ちは私の責任だ」との声明を発表。 2015年11月3日、ドイツの検察当局はドイツサッカー連盟の本部を脱税の疑いで家宅捜索し、同時にニースバッハ会長、ツバンツィガー前会長の自宅も家宅捜索を行った。また同時に、ドイツの検察当局は、今回明らかにされた、ドイツサッカー連盟からFIFAに送金した670万ユーロ(日本円でおよそ9億円)について、「重大な脱税の疑いがある」という声明を発表している。 2016年1月27日、ドイツサッカー連盟が招致不正の事実を長年、隠蔽していたとドイツメディアが報じた。これは、ドイツサッカー連盟が外部法律事務所に委託した内部調査の資料の一部(内部調査で買収を裏付けるような多くのメールや書類)を、南ドイツ新聞とドイツの公共放送の合同取材グループが入手したことで、明らかになった。 さらに、FIFAの理事会の投票でFIFAワールドカップのドイツ開催が決まった2000年7月6日の前日に、何者かに25万ドル(日本円でおよそ3千万円)が支払われた例もある。これについては、米連邦捜査局(FBI)なども調査を始めたことが報じられている。 2016年3月4日、ドイツサッカー連盟は2000年7月のFIFA理事会によって行われた2006 FIFAワールドカップの開催地を決定する投票に際し、買収を行ったことについて「買収を裏付ける証拠は見つからなかったが、否定はできない」とする、内部調査の結果を発表した。 また、今回の内部調査では2005年にFIFAへ送金したとドイツサッカー連盟が2015年に認めた670万ユーロ(およそ8億4千万円)の使用の仕方について、その一部はワールドカップの組織委員会の会長を務めていたベッケンバウアーに、残りはかつてのFIFA理事を務めていたハマムがオーナーを務めているカタールのある企業に、それぞれ2002年に送金していたことが今回行った調査で明らかになり、その上で、ドイツサッカー連盟がワールドカップの事前イベント費用とうそをついたうえでFIFAに送金した事を指摘。 2016年3月22日、FIFA倫理委員会の調査部門は2006 FIFAワールドカップの招致過程に加えて、開催地決定の投票に関しての買収疑惑についてこの大会組織委員会の会長だったベッケンバウアーを含む関係者6人に対する調査を開始すると発表。加えて、ニースバッハとザンドロックの2人は、利益相反、ベッケンバウアーらは贈収賄の禁止に関しての倫理規定に違反しているのではないかという疑いがそれぞれあるとFIFAではしている。 2016年9月1日、スイスの検察当局は2006 FIFAワールドカップの元組織委員会会長のフランツ・ベッケンバウアーら4人に対して横領・背任に加え、マネーロンダリングの疑いで捜査をしていることを明らかにした。そのうち、ベッケンバウアーに対しては刑事訴追の手続きを始めたことを明らかにした。この4人は2006 FIFAワールドカップの招致に関連し、ドイツサッカー連盟の資金であった670万ユーロ(日本円でおよそ7億7000万円)を「文化プログラムの費用」だと偽り、連盟とは無関係の用途に充てるという疑いが持たれている。また、スイスの検察当局は、これに関連して2016年9月1日に家宅捜索を8か所で行ったことも明らかにしている。なお、スイスの検察当局によれば、2015年11月に捜査が始まったという。 2016年11月30日、スイスメディアはスイスの捜査当局が2002年から2007年までFIFA事務局長を務めたウルス・リンジを捜査の対象に追加したことを伝えた。また、同時に、11月23日に、スイスのドイツ語圏において、FIFAの関係先に対し、捜索が行われたことも明らかにされた。これは、ドイツサッカー連盟が670万ユーロの送金で、これに、ウルス・リンジが関与した疑いがあるという。 2016年12月16日、FIFAの上訴委員会は、ドイツサッカー連盟のかつての会長だったニースバッハから出された異議申し立てについて、退ける裁定を下した。 2018年1月14日にFIFAのかつての理事だったハマムがドイツのZDFのインタビューに、ドイツからの670万ユーロ(日本円でおよそ9億円)の送金を認めたものの、目的については、「W杯のためではない」として不正については否定し、その上でハマムは、「開催が既に決まっていた後のことで、なぜドイツが私に賄賂を送らなければならないのか」とも話している。
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