そうさがたプローブ‐けんびきょう〔‐ケンビキヤウ〕【走査型プローブ顕微鏡】
走査型プローブ顕微鏡
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/06 23:32 UTC 版)
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走査型プローブ顕微鏡 (そうさがたプローブけんびきょう、Scanning Probe Microscope; SPM) は、プローブを用いた顕微鏡観察手法の総称である[1]。先端を尖らせた探針を用いて、物質の表面をなぞるように動かして表面状態を拡大観察する。実際の例としては、表面を観察する際、微少な電流(トンネル電流)を利用する走査型トンネル顕微鏡(STM)、原子間力を利用する原子間力顕微鏡(AFM)をはじめ、数多くの種類がある[1]。
特徴
基本的な構成は、測定対象を固定し移動させる試料ステージと、試料表面に近づけ局所的な相互作用を検出する探針、そしてこれらを制御するコントローラからなる。これに加えて、試料に電場や磁場を印加したり光を照射、または冷却・加熱により試料温度を変化させる機構、真空用のチャンバー・ポンプなどが目的に応じて付設される。
光の波長に依存する光学顕微鏡に比べて空間分解能が非常に高く、超高真空中では、AFMやSTMは原子以下のレベルの表面凹凸を観察できる。また、大気中での測定を目的としたものは電子顕微鏡などに比べて装置が特に小型で、机上に設置できるものもある。実際の場面では、簡便に測定できて安価な、超高真空を必要としない装置も広く用いられており、表面形状のみの測定にはAFMが使われる事が多い。
試料ステージにはnmレベルでステップを制御できるピエゾステージが主に用いられており、この場合の試料の測定可能領域は数十µm以下、高さは10µm以下である。モータステージなどを組み合わせ4インチウェーハ内の数十µm領域を測定できる装置もある。
歴史
最初の走査型プローブ顕微鏡は、IBMでゲルト・ビーニッヒ(Gerd Binnig)により開発されたSTMとされる。しかしSTMはトンネル電流を利用するため、絶縁体の観察を行うことが出来ない。そのため、同じくビーニッヒにより原子間力を利用するAFMが開発され(1986年)、測定対象が広がった。また、これらをベースに表面形状だけでなく、様々な局所的な表面物性を評価するSPMが開発された。
現在では、AFMは磁気ディスクの表面粗さ(ひょうめんあらさ)測定、DVDのスタンパーなど0.1µm前後の凹凸を測定する用途には不可欠な測定機器となっている。また、絶縁性の試料や水分を含んだ生体試料などの評価にも用いられる。
SPMの種類
- 磁気的な局所物性評価SPM
- 走査型磁気力顕微鏡(MFM)[1]
- 強磁性探針と試料間の磁気力から磁区構造を評価する。
- 走査型SQUID顕微鏡
- 超伝導量子干渉計(SQUID)をプローブとし、試料表面の磁束を評価する。
- 走査型ホール素子顕微鏡(SHPM)
- ホール素子をプローブとし、試料表面の磁場を検出する。
- 電気な局所物性評価SPM
- 走査型ケルビンプローブフォース顕微鏡(KPFM)[1]
- 電圧を印加して表面電位を評価する。
- 走査型マクスウェル応力顕微鏡(SMM)
- プローブに交流電圧を印加し、表面電位を評価する。
- 静電気力顕微鏡
- パルス電圧を印加し、静電気力を評価する。
- 走査型圧電応答顕微鏡(PFM)
- 試料に交番電界を印加した時の微小な変形から圧電特性を評価する。
- 走査型非線形誘電率顕微鏡(SNDM)
- プローブに共振回路を接続し、試料に交番電界を印加した時の共振周波数の変化から非線形誘電率を評価する。
- 光学的な局所物性評価SPM
- 走査型近接場光顕微鏡(SNOM)
- プローブ先端から近接場光を印加して複素透過率を評価する。
出典
関連項目
外部リンク
- 特許庁標準技術集「表面構造の原子領域分析」[リンク切れ]
走査型プローブ顕微鏡
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/11/06 09:07 UTC 版)
「ナノトライボロジー」の記事における「走査型プローブ顕微鏡」の解説
詳細は「走査型プローブ顕微鏡」を参照 AFMやSTMなどの走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscoy、SPM)はナノトライボロジー研究に広く用いられている。STMは原子分解能が得られるため、清浄な導電性試料表面のモルフォロジーおよびトポロジーを測定する際にもっぱら用いられる。 原子間力顕微鏡(AFM)はトライボロジーを原理レベルで研究する上で強力な手段である。表面と探針との間の接触面が極めて微細である上、高度に洗練された運動制御機構と、原子レベルの位置測定精度を備えている。AFMの心臓部は鋭利な探針を備えたしなやかなカンチレバーである。探針は試料と接触する部分であるため、理想的には先端の断面が原子サイズでなければならないが、実際にはナノスケールである(半径10~100 nm)。ナノトライボロジーの分野では、AFMが垂直力と摩擦力をピコニュートンの分解能で測定するために広く使われている。 探針を試料表面に近づけると、先端の原子と試料とが力を及ぼし合い、相互作用の強さに比例するたわみをカンチレバーに与える。正または負の垂直力がはたらくと、カンチレバーは平衡位置から上または下に曲げられる。垂直力は以下の式で計算できる。 F normal = k Δ V / σ {\displaystyle F_{\text{normal}}=k\Delta V/\sigma } ここで k はカンチレバーのばね定数、ΔV はフォトディテクタが出力する電気信号で、カンチレバーの変位と直接比例している。σ はAFMの光てこ感度である。 水平力の測定にはFFMが用いられる。この装置は基本的にAFMと同様の構造を持っており、異なるのは探針先端が水平力(ここでは摩擦力)によって軸に対して横向きに動く点である。その結果カンチレバーにねじりが生まれる。変形しすぎて探針の先端以外の箇所が表面に触れることはないように制御されている。ねじれ量は常にフォトディテクタによって測定されており、以下の式で摩擦力に変換される。 F frictional = Δ V k ϕ 2 h eff δ {\displaystyle F_{\text{frictional}}={{\Delta Vk_{\phi }} \over {2h_{\text{eff}}\delta }}} ここで ΔV はフォトディテクタの出力電圧、kΦ はカンチレバーのねじりばね定数、heff は探針の長さとカンチレバーの厚さの和、δ は横たわみ感度である。 探針先端が受ける荷重はカンチレバーの変形によって特定可能であり、荷重を制御量とするモードで測定が行われる。しかしその場合、カンチレバーのスナップインやスナップアウトが起こる距離では安定な測定が行えない。このような不安定性を回避するには変位を制御量とする方式がある。界面力顕微鏡はその一つである。 測定中、探針が常に試料と接触している方式をコンタクトモード(スタティックモード)と呼び、それに対して探針を振動させる方式をタッピングモード(ダイナミックモード)と呼ぶ。探針によって変形や破損(摩耗)を受けない硬い試料に対しては、一般にコンタクトモードが用いられる。柔らかい材料では摩耗を最小限に抑えるためタッピングモードが用いられる。タッピングモードでは、探針はピエゾ素子によってカンチレバーの共振周波数(70-400 kHz程度)で加振され、周期的に試料表面を叩く(タップする)。その振幅はおよそ20-100 nmとなり、この範囲では探針先端が試料に凝着することはない。 原子間力顕微鏡は試料の硬さやヤング率を測定するためのナノ圧子として使用できる。この用途ではダイヤモンド製の探針が用いられる。探針は約2秒にわたって表面に押し付けられ、その後荷重を変更しながら同じ手順を繰り返す。最大荷重を圧痕の投影面積で割ると硬さが得られるが、盛り上がり(パイルアップ)や沈み込み(シンクイン)があると正確な圧子断面積が求められない場合がある。試料の剛性とヤング率、ポアソン比、および圧痕面積の関数の間の関係を与えるOliver-Pharr法を用いればヤング率が計算できる。
※この「走査型プローブ顕微鏡」の解説は、「ナノトライボロジー」の解説の一部です。
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走査型プローブ顕微鏡と同じ種類の言葉
顕微鏡に関連する言葉 | 岩石顕微鏡 走査型近接場光学顕微鏡 走査型プローブ顕微鏡 走査透過電子顕微鏡 限外顕微鏡(げんがいけんびきょう) |
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