菊の助座とその協力者
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/10 01:08 UTC 版)
「風の市兵衛シリーズの登場人物」の記事における「菊の助座とその協力者」の解説
植木屋 菊の助(うえきや きくのすけ) 渋井や信正が玄人と評した盗賊団「菊の助座」の頭で、本名は喜久治(きくじ)。45歳過ぎ。 7,8歳の頃に天明の大飢饉が起こり、上州沼田の発地村(ほっちむら)の神社の前に置き去りにされた。憐れんだ宮司に下男として引き取られたが、やがて宮司の娘で巫女であるあるお峰(後のお万)と懇ろになり、それが発覚して神社を追い出された。その後、桐生の盛り場で博徒となり、13年前にお万と共に村に帰ってきた。そして、宮司が死んで荒れていた神社をねぐらとし、一味と共に放火や殺人も厭わない荒っぽいやり口で、関八州で盗みを働いていた。 7年越しの計画で江戸の「佐賀屋」から数万両を強奪した。その際、陽動としてあちこちに放火し、「佐賀屋」でも主人以下多くの奉公人を死に至らしめた。 渋井の粘り強い探索で沼田の本拠地が判明し、捕り方の襲撃を受けた際、同行した市兵衛に斬られる。そして、お万に願ってとどめを刺された。現場に居合わせた市兵衛と弥陀ノ介はそれを止めなかった。 お万(おまん) 菊の助の女房で、本名はお峰。40歳過ぎ。 発地村にいた頃に菊の助と恋仲になって妊娠したが、子どもは流産、菊の助とも離ればなれになってしまう。その後、菊の助が桐生にいるという噂を聞いて、彼の元に走った。 身長6尺を越える大女。手下からは陰の頭と呼ばれ、勘平には菊の助以上に恐れられている。実際、菊の助以上に残忍で、盗みの現場で平気で人を殺める。 いつも占いを行なっており、故郷の発地村に戻った後はよく当たる占いだと評判になった。一味が仕事にかかる前には、ふさわしい決行日を占う。「佐賀屋」の際、最善の決行日は8月最終日だが、女が障りとなると占った。その通り、「佐賀屋」襲撃の日に歌が行方知れずになったことによって、市兵衛と目付衆が動くこととなり、最終的に「菊の助座」は瓦解することになる。 菊の助が市兵衛に斬られると、彼の願いを受けてとどめを刺し、童女のように泣きじゃくった。その後生き残った一味と共に沼田城下に拘留され、間もなく江戸に身柄を送られて、普通なら獄門か火あぶりになると渋井は語った。 惣十郎(そうじゅうろう) 江戸で盗みを行なうために下準備を進めていた菊の助の手下。30歳過ぎ。 5年前、奥州水沢の呉服太物問屋に勤めていたと偽って、音羽町5丁目にある古着屋「美濃屋」の手代として雇われた。そして、主人の信用を得て自由に接待費を使うことを許可されるようになると、佐川山城を金で釣って貸家を一味の宿として提供させたり、桜井長太夫とつながって利用したりした。 発地村の本拠地が手入れを受けた際、渋井とその手下に捕縛された。その際、本名が惣太(そうた)だと述べている。 勘平(かんぺい) 喜楽亭のおやじが35歳の時に妻に迎えたお滝(おたき)の連れ子で、当時3歳でおやじに引き取られたが、まもなくお滝が男を作って駆け落ちしたため、おやじに男手一つで育てられた。しかし、厳しくしつけようとするおやじに反発したか、15歳になって家出してしまう。 その後、一人働きの盗賊となり、菊の助の家に盗みに入って捕まるが、菊の助に江戸の地理に詳しいところを見込まれて一味に加わった。 家出して10年たって一味と共に江戸入りした際、懐かしさのあまり喜楽亭を訪問したが、またおやじとケンカになってしまい、たまたま入店した渋井に折檻されて飛び出してしまう。しかし、その際に手土産に持参した菓子を包んでいた手ぬぐいから、後に渋井は一味の本拠地が発地村だということを探り出すことになる。 「佐賀屋」襲撃前は、放火場所や逃走経路などを下見する役割に就いた。そして、決行日にはあちこちに放火する役目に就いたが、真達に現場を目撃され、長杖で頭蓋骨を割られた。倒れているところを渋井に発見され、その腕の中で何も語らぬまま息を引き取った。 桜井 長太夫(さくらい ちょうだゆう) 旗本2000石の当主で、御持筒組の組頭。屋敷は音羽町近くの鉄砲坂にある。40代半ば。横暴なため、音羽界隈での評判はすこぶる悪い。北町奉行榊原忠之とは懇意の仲。 梅里こと歌に執着して妾になることを求めているが、ずっと袖にされ続けている。ある時、「大清楼」で酔って梅里を追い回していたところ、藤蔵の指導のため滞在していた市兵衛にたしなめられ、怒って突き飛ばそうとするが、いなされて裏庭に転げ落ちてしまう。その後、市兵衛に配下を刺客として送ったが、それも簡単に撃退されてしまった。その件が市兵衛を通して信正の耳に入り、目付が桜井の行状を調べ始めるきっかけになった。 惣十郎が提案した、桜井から北町奉行の榊原に手を回して音羽の岡場所を手入れさせ、そのすきに梅里を拉致するという策を受け入れた。また、惣十郎が独立するため、桜井の家名を利用させて欲しいと願った依頼も受け入れてしまう(本当は、盗んだ金を発地村の本拠地に向かって運ぶ際、辻番らに見とがめられるのを避けるために桜井家御用の荷物であると偽るためだった)。そして、町方が音羽町に人員を取られている隙に、「菊の助座」があちこちで放火し、「佐賀屋」から金を強奪する事件に桜井が関与していることが、目付の調べにより明白となったため謹慎を申しつけられる。切腹は免れないだろうと弥陀ノ介は市兵衛に語った。 佐川 山城(さがわ やましろ) 関口臺町の裏通りにある一軒家を借りている陰陽師。これまでそこの納屋を旅の修験者、占い師、僧侶などに祈祷所兼宿泊所として又貸ししてきた。そして、惣十郎の甘言に惑わされ、そこを200両の報酬で菊の助座一統15名の宿泊所として貸してしまう。 事件発覚後に夫婦共々捕縛された。 重吉(じゅうきち) 牛込揚場町の貸船屋「菱川」で15年以上務めている40代の船頭。惣十郎に多額の報酬を餌に口説かれ、「佐賀屋」の主人と奪った金を運ぶ船を操った。また、惣十郎ともう一人の仲間が「佐賀屋」主人を絞殺して川に遺体が捨てた時、別の方を向いているように言われたためその時は何か分からなかったが、後に遺体が発見されたという話を聞いてそれと悟った。 後に事件に関わったことが発覚して捕縛され、知っていることを洗いざらい白状した。
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