祖父の薫陶とは? わかりやすく解説

祖父の薫陶

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/07 15:21 UTC 版)

西岡常一」の記事における「祖父の薫陶」の解説

祖父西岡常吉は、後継者たる男子恵まれず長男夭折)、次女ツギ婿養子二十四歳の松岡光を迎えて弟子仕込んだ。やがて両者の間に長男生まれると大い喜び自身の「常」の字をつけて「常一」と命名した祖父としては普通に接し菓子をすぐ与えたりいたずらをしても厳しく注意するともないなど、非常に甘いところもあったが、常一が四歳のころから法隆寺現場に連れて行って雰囲気慣れさせ、小学校上がる雑用をさせたが、その時祖父別人のように厳格になった。以降祖父は婿の光と常一とを将来棟梁として育成すべく尽力することになる。特に常一に徹底した英才教育行い、常一自身にとって貴重な財産となっていくのである見習いの時から祖父常吉に、厳しく仕込まれた。まず、大工としての基本である道具研ぎ方しこまれるが、常吉一切教えず、常一は覚えるまで毎晩のように研ぎ続けた後年常一は「頭でおぼえたものはすぐに忘れてしまう。身体におぼえこませようたんでしょう。」と述懐し、その大事さは「手がおぼえるー大事なことです。教えなければ子供必至考えます考え先に教えてしまうから身につかん。今の学校教育忘れていることやないですか。」と述べている。その他「…おじいさんが、ぴっちり仕込んでくれたんです。とにかく厳しかったです。…口笛吹いてはならんとか、半てんの帯はきちんと結べとか言いましただらしないはいかんのでしょうな。」などの生活態度や、法隆寺皇族初めとする賓客が来るという理由から礼儀作法なども教えられた。それでも、外部からは祖父温和になったと見え祖父弟子は「やっぱり孫にかかったらこわい親方も仏になった。」と言っていた。 祖父意見で、渋々農学校入った常一は学習意欲欠け農場果実無断食べたりして怠けていたが、実習重ねるうちに興味持ち成績上がっていった。「(肥料を)どのくらい分量を、いつ、どの時間に施すかは、自ら体験しながら、自分考える。種をおろす、が出る、やつるが育ち実りがある…。それがだんだん面白くなってきた。…『土の命』を知ることであった。そのためにこそ、祖父は私を農学校にやったのだが、それが本当にわかったのは、のちのことである。」と述懐するように、祖父生命尊さ土の性質によって生命変化することを学ばせようとしたのであり、農学校時代将来棟梁として必要な資質涵養する時期となった果たして、後年になって原木見極め方地質調査などで農学校時代知識大い役立ち、常一は「三年間の農業教育のおかげやと思います。今になって、はじめてじいさん真意わかってきたということですわ。」と晩年述べている。 農学校卒業した一に祖父一年間米作りをさせた。常一は学校教えられ通り行った祖父誉めるどころか他家農家よりも収穫が低いことを指摘し「本と相談して米作りするのではなく、稲と話し合いしないと稲は育たない大工その通りで、木と話し合いをしないと本当大工なれない。」と諭した祖父はまず見本示し、後は一切教えず、自身何回試行錯誤させて覚えさせる方法であった厳しく叱責することもあったが、評価するのも上手く「わたしに直接誉めないのです。母親に『常一は偉い奴や。わしが言わん先にこういうことをしおった。』といいます母親喜んで、わたしに話してくれます間接的に誉めるんです。」夜は、常一に身体マッサージさせながら大工としての多く知識教えた祖父は、幼い常一をよく奈良寺院を見に連れて行き基本を学ばせた。薬師寺東塔では西塔礎石跡の水たまりに映るのを示し「これはなあ。水鏡の塔というてな。五重塔がこの映ってゆらゆら揺れた姿を実際にくらなはったんや。ようおぼえとき。」と教えた後年、常一は薬師寺伽藍復元工事担当する際、「その塔がどういう因縁知らんけどこういうふうにさせてもらえるということになって、もうありがたいことやと思いましてな。」と深い感慨述べている。最晩年西岡祖父の域を越えたかとの問いに「いやあ、まだ越えたなんて思ってません。いまでも言われたことがいちいちその通りやったと思うことばっかりでっさかい、まだまだです。越えてません。」と述べている。

※この「祖父の薫陶」の解説は、「西岡常一」の解説の一部です。
「祖父の薫陶」を含む「西岡常一」の記事については、「西岡常一」の概要を参照ください。

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