祖父と父の死、勢力の拡大
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 06:48 UTC 版)
「ヌルハチ」の記事における「祖父と父の死、勢力の拡大」の解説
1583年、李成梁の大軍が建州右衛の古城を攻めた。城主アタイ (ᠠᡨᠠᡳᠵᠠᠩᡤᡳᠨ, atai janggin)がワンカオ殺害に憤慨して反旗を翻したからである。アタイの妻はヌルハチの祖父のギオチャンガの孫娘で、ヌルハチの従妹に当たる。ギオチャンガとタクシは古城に入り、アタイを説得した。しかしその時、ヌルハチと同じスクスフ部のニカンワイラン (ᠨᡳᡴᠠᠨᠸᠠᡳᠯᠠᠨ, nikan wailan)が明軍を手引きして、アタイを殺害した。ニカンワイランは勢力を伸ばしたいと思い、ギオチャンガとタクシも処刑した。怒ったヌルハチは李成梁に「祖父は孫娘を取り戻そうとしただけで、父は祖父の帰りが遅いから城に入っただけです。それをどうして殺したのですか」と詰め寄った。言葉に窮する李成梁に対し、ヌルハチはさらに「父と祖父は一度たりとも明に背いたことはありません。汚名を着せられて死んだのでは報われません」と言った。李成梁は処刑を悔やんだ。明朝はヌルハチを慰撫するため、20通の勅書と20頭の馬を授け、左衛指揮使に任命した。上述の通り、勅書とは交易許可書のことであり、これを所持する者に明と交易する権利がある。また勅書の数が多ければ多いほど交易で利益を得られる。この任命は李成梁の進言があったと言われる。またこの頃にヌルハチは一族の長となった。 李成梁はヌルハチを厚遇する一方で、ニカンワイランもスクスフ部 (ᠰᡠᡴᠰᡠᡥᡠ ᡳᠠᡳᠮᠠᠨ, suksuhu i aiman)の首長として重用した。ニカンワイランはこのはからいに気を良くして、ヌルハチにも服従を求めた。しかし父と祖父の仇であるニカンワイランにヌルハチが従うわけがなかった。一方、ヌルハチの従兄弟やその息子などの中にはヌルハチがギオチャンガの後を継いだことをよく思わない者がいて、ニカンワイランと手を結んだ。これに対し、サルフ城のノミナ (ᠨᠣᠮᡳᠨᠠ, nomina)、ギャムフ城のガハシャン(ᡤᠠᡥᠠᡧᠠᠨ, gahašan, ヌルハチの妹婿)などがヌルハチの味方となった。しかし同盟を結んでも軍勢は100人程度だったと言われている。 1583年2月、ヌルハチはトゥルン(ᡨᡠᡵᡠᠨ, turun, 図倫)城を攻めた。しかしニカンワイランはノミナと内通しており、攻撃前にギヤバン城に逃れた。同年8月にギヤバン城 (ᡤᡳᠶᠠᠪᠠᠨ, giyaban)を攻めたが、またもニカンワイランはノミナから密告を受け、オルホン城 (ᠣᠯᡥᠣᠨ, olhon)に逃げた。ノミナの内通に気が付いたヌルハチは、「バルダ城を攻撃するから甲冑や武器を貸して欲しい」とノミナに申し出た。同盟を結んでいる建前からノミナは武器を貸したが、ヌルハチは隙をみてノミナを殺害し、サルフ城を占領した。ところが、ジョーギヤ城のリダイとギオチャンガの息子の子孫がヌルハチ配下のフジサイを襲撃したため、ニカンワイランの追撃は中止した。 1584年1月、ジョーギャ城を襲いリダイを捕らえた。同族ということもあり命は助けた。同じ頃、ギャムフ城のガハシャンがサムジャン (ᠰᠠᠨᠵᠠᠨ, samjan)に殺された。サムジャンはマルドゥン城 (ᠮᠠᡵᡩᡠᠨ, mardun)に逃げ込んだがヌルハチは追い、サムジャンを殺して仇を討った。同姓同族の激しい骨肉の争いは1583年に終結し、ヌルハチの親族はヌルハチに屈服した。 ドンゴ部 (ᡩᠣᠩᡤᠣ ᡳᠠᡳᠮᠠᠨ, donggo i aiman)の族長のアハイ (ᠠᡥᠠᡳ, ahai)はスクスフ部をまとめたヌルハチを恐れ、攻撃しようとしたが、ヌルハチに気づかれた。ヌルハチはアハイの居城であるチギダ城を攻めたが、城が落とすことができずに引き返した。引き返す時にオンゴロ城を攻めたが、傷を負いヘトゥアラに戻った。傷が治ると再びオンゴロ城を攻撃して落とした。1585年2月、ジャイフィヤン(ᠵᠠᡳᡶᡳᠶᠠᠨ, jaifiyan, 界凡)城を攻撃してジャイフィヤン、サルフ、ドゥンギャ(棟佳)、バルダ城の連合軍を破り、4月にトモホ、ジャンギャ(ᠵᠠᠩᡤᡳᠶᠠ, janggiya, 張佳)、ジャイフィヤン、サルフ、バルダ城の連合軍を破った。また9月にフネヘ(渾河)部を攻略して急激に勢力を伸ばした。 1586年7月、いよいよニカンワイランの居城を攻めた。ニカンワイランは明軍に逃げ込んだので、ヌルハチは明軍に引き渡しを求めた。明軍はもはやニカンワイランには利用価値がないと判断してヌルハチを黙認し、ヌルハチはニカンワイランを捕らえて斬首した。
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