祖父・三八郎と川端康成とは? わかりやすく解説

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祖父・三八郎と川端康成

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 03:19 UTC 版)

十六歳の日記」の記事における「祖父・三八郎と川端康成」の解説

川端康成自身生涯節目節目に、繰り返し祖父三八郎について語っており、随筆故園』(未完)では、〈祖父は私が共に生きたと思へる、ただ一人肉親であつた〉と書いている。また処女作の『ちよ』では、〈十六の年に、祖父は、死んでもお前の身を護るとの言葉を残して死にましたと書いている。 川端家は代々大阪府三島郡豊川村庄屋大地主であったが、祖父三八郎は財産をほぼ無くし一時出ていた。しかし息子の嫁・ゲン(康成の母)の死をきっかけ戻り、昔の屋敷より小ぶりな家を建てて、孫の康成を養育した。康成の姉・芳子預けられた秋岡家(ゲンの妹の婚家)の主人義一当時衆議院議員)は、その時ゲンの遺した金3000円も預かり、康成と祖父母は、その仕送りお金で生活をしていた。 作中にもあるように、三八郎は若い頃八卦家相学を研究し、よく当たるという評判遠方から見てもらいに来る人もいたという。には先祖建てた尼寺があり(本尊黄檗宗虚空蔵菩薩)、山林田畑や寺は川端名義で、尼さん達も川端の籍に入っていたが、から一里離れた北の山寺から名高い聖僧が寺に移ることになり、それを有難がった三八郎は寺の財産名義を手離した。寺は、豊川という金持ちにより立派に改装されて名が変った豊川川端家の座敷にも新しい畳を入れてくれたという。三八郎は易学弟子・自楽に口述筆記させた家相論の草稿「講宅安危論」を出版するために豊川相談したこともあった。 三八郎は、茶の栽培寒天製造などもやった失敗し家相を気にして建物作り直したりするうちに、田や山を二束三文売ってしまい、次々と財産目減りていったという。また易学以外には、文人画描き、「万邦」と号していた。漢方薬研究では「川端青龍堂」の名で官許の新漢方薬調製施薬などをし、その薬包紙残っているが、広く販売するには至らなかった。なお、三八郎の借金には、孫・康成が田舎町本屋乕谷誠々堂で〈節季払ひ〉で買った文学書などの法外な本代もあったという。 祖父葬儀の日、康成は多く弔問受けている最中に突然鼻血出し裸足のまま庭に飛び出し人目のない木陰庭石の上仰向いて出血止まるのを待った。この時のことを川端は以下のように述懐している。また、翌日骨拾い時にも再び鼻血出てあわてて帯で鼻を押さえて山へ駆けたという。前日違い出血はなかなか止まらず草の葉ぽとぽと落ちて黒い帯と手が血だらけとなった鼻血出たのは生れ初めてと言つてよかつた。この鼻血祖父の死から受けた私の心の痛みを私に教へた。……鼻血が私の気を挫いた。殆ど無意識飛び出したのは自分の弱い姿を見せたくなかつたからだ。喪主の私が出棺近くにこの態では皆にすまないし一騒ぎになると思つたからだ。庭石の上祖父死後三日目初めて持つた自身静かな時間であつた。その時唯一人になつたといふ寄辺なさがぼんやり心に湧いた。 — 川端康成葬式の名人」 『十六歳の日記』を、〈文字通りの私の処女作である〉とする川端は、〈私は父母命日覚えず弔ふ気持もないけれども、この祖父の墓だけは私の胸にある。「十六歳の日記」は、その墓碑銘であらうか〉と語っている。

※この「祖父・三八郎と川端康成」の解説は、「十六歳の日記」の解説の一部です。
「祖父・三八郎と川端康成」を含む「十六歳の日記」の記事については、「十六歳の日記」の概要を参照ください。

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