画家 Gとは? わかりやすく解説

画家 G

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/06 19:45 UTC 版)

トリノ=ミラノ時祷書」の記事における「画家 G」の解説

「画家 G」がヤン・ファン・エイクかどうかについては、前述したように研究者によって意見分かれている。「画家 G」がヤン・ファン・エイクであるとする研究家たちの主張として、ヤン・ファン・エイク板絵において成し遂げた成果革新が『トリノ=ミラノ時祷書』のミニアチュールにも見られることが挙げられるそれまでテンペラ画からは隔絶した詳細繊細な絵画技術光沢表現幻惑的な写実主義などで、とくに洗礼者ヨハネ描かれページの、室内内装風景描写にこれらの特徴顕著に見られるとしている。 「作者 G」の手によるとされているミニアチュール描かれページで、現存しているのは3枚しかない。「洗礼者ヨハネ誕生」、「聖十字架発見」(異論もあり、シャトレは「作者 H」が主制作者だとしている)、「死者のためのミサ」のミニアチュール描かれページで、それぞれのページ下部には細長い挿絵があり、テキスト最初最後文字には装飾施されている。その他に1904年焼失した4ページがあり、それらは「海辺祈り」などとも呼ばれる海辺バイエルン公ヴィルヘルム」、夜の光景として描かれている「キリストへの背信」、「聖母戴冠」とそのページ下部挿絵海洋光景描かれている「聖ユリウス聖マルタ」だった。赤外線による解析で、「洗礼者ヨハネ誕生」には完成品とは異な構成下絵存在していたことが分かっている。紋章から、描かれている人物ヨハン3世だと同定されており、この独特で謎めいた海辺の光景表現されミニアチュールは、一族間の紛争表しているという説がある。シャトレは、ヨハン3世自身の姪ジャクリーヌから領土簒奪したことと関連があるとしている。また、洗礼者ヨハネバイエルン公ヨハン3世守護聖人でもあった。ページ下部挿絵にはネーデルラント田園風景描かれており、17世紀オランダ絵画へと続く風景画先駆といえるシャトレは、『トリノ時祷書』のミニアチュールと、『ベリー公のいとも豪華なる時祷書』などの装飾写本画家として有名なリンブルク兄弟ミニアチュールとを比較しリンブルク兄弟作品には、人物肖像横向きの顔が多いこと、衣服三次元的な立体表現見られないこと、ミニアチュール全体としてみると人物肖像浮いていることなどを指摘した。これに対し「画家 G」が描いた人物肖像衣服には完全な立体表現なされており、様々な方向向いている人物作品溶け込んで描かれているとしている。さらに、「画家 G」が採用している明暗表現手法キアロスクーロ立体表現深み与え人物肖像、そして作品全体写実性与えているとした。フリートレンダーは、「言葉にするのが難しいほどの確実な技法用いられ作品すべての色調調和している。滑らかな陰影水面さざ波反射雲の層などのあらゆる表現が、つかの間瞬間切り取って描いた繊細なもので、この画家が持つ高い絵画技術容易に見てとれる。100年かけても絵画界に写実主義浸透し切ったとはいえいとしても、この装飾写本がその最初きっかけとなったことは間違いない」としている。 著名なイギリス人美術史家で、ロンドンナショナル・ギャラリー館長勤めたケネス・クラークは、「画家 G」はヤン・ファン・エイクではなくフーベルト・ファン・エイクだと考えていた人物で、「フーベルト・ファン・エイクは、保守的な美術史家考えだと数世紀はかかるとする美術史上の変革を、一人成し遂げた芸術家である。風景描写繊細に塗り分けられており、これ以上絵画表現19世紀になるまで、ほとんど望むべくもなかった」とした。海辺描いたミニアチュールについても、「前景描かれ騎士肖像リンブルク兄弟同様の作風描かれている。しかしながら背景描かれ海岸15世紀絵画作品遥かに超えており、これに匹敵する作品は、17世紀半ばオランダ人風景画家ヤーコプ・ファン・ロイスダールが得意とした海洋画描かれている海岸まで出てこなかった」としている。 海洋画専門とする美術史家マルガリータ・ラッセルは、「画家 G」が描いた海辺場面を「海辺忠実に描き出した最初作品」と述べている。しかしながらリンブルク兄弟の『ベリー公のいとも豪華なる時祷書』のミニアチュールにも、水面の反射表現革新的な要素見せるものがあり、この点では「画家 G」が描いたミニアチュールより優れている作品存在するとしている。トーマス・クランが指摘したように、「画家 G」が描いたファン・エイク風の作品制作時期は、板絵分野ファン・エイク風の作品見られるようになった時期よりも早い。「装飾写本ミニアチュールが、真実味溢れていると賞賛されているファン・エイク風の油彩画発展に対してどのような役割果たしたのかは興味深い問題である」

※この「画家 G」の解説は、「トリノ=ミラノ時祷書」の解説の一部です。
「画家 G」を含む「トリノ=ミラノ時祷書」の記事については、「トリノ=ミラノ時祷書」の概要を参照ください。

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