演出・作画・3DCG
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 07:27 UTC 版)
「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」の記事における「演出・作画・3DCG」の解説
制作は早期の段階から進められており、テレビアニメ1期が放送終了した2019年10月時点で無限列車パートの三浦と猗窩座戦パートの外崎の絵コンテ作業はほぼ終了していた。そのため、テレビアニメ1期制作終了と同じくして作画作業はすぐに開始された。当初の予定では早い時期に制作は完了する予定であったが、完成したカットの修正など、出来上がった後も細かい部分のクオリティアップに時間を費やした結果、同社の他作品の制作と並行しながら最終的に公開直前までの約1年間作業は行われていた。また、監督の外崎は松島が原画に修正を入れやすいようにするため、自ら作画監督も担当した。 映像制作の手法に関してもテレビアニメ版と変更は無いが、スクリーンで綺麗な線を映すために重要なカットについては早期の段階で原画作業が進められている。テレビアニメ制作初期の課題であった着物の模様を全て手描きで描く工程については、ufotable作画監督陣が構築した描き方のマニュアルが既に完成していることや、ufotableのアニメーター陣がTVアニメ終了とともに、そのまま劇場版の制作に移行したこともあり、劇場版では少ない負担で模様の作画作業を進めることができた。 無限列車での戦いは絵コンテをufotable所属のアクション演出家で『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』監督の三浦貴博が描き、該当シーンの演出を同じくufotabe所属の演出家で『活撃 刀剣乱舞』監督やテレビアニメ第19話「ヒノカミ」の絵コンテ・演出・レイアウトを担当した白井俊行、同社所属で『月姫 -A piece of blue glass moon-』OP監督の竹内將が担当した。白井は無限列車内のアクションパート全般の演出を担当し、竹内は『夢』のシーンの演出を担当している。 煉獄の『炎の呼吸』の表現はテレビアニメ制作時からスタッフ陣の中で表現法について話し合われており、最終的に『鳥羽・伏見の戦い』の錦絵をモデルとして表現法が考えられた。また、外崎の提案で「ヒノカミ神楽」と違い、絵画的なシルエットを強調する方針がとられた。作画面では『水の呼吸』と同じく手描きのエフェクトは使いまわすことができない。そのため、煉獄のアクションの方向性も含め『炎の呼吸』の作画での表現については、本作の冒頭のアクション『壱ノ型 不知火』を元に決めている。原画を担当したのはufotable所属のアニメーター・中村誠。この表現を基盤に他の型が描かれた。なお、表現方法はufotableのアクションアニメーター陣に一任している。 本作では、これまでのufotable作品と同様に各所の工程に3Dレイアウトやプリビズ(3Dで作成したデモ映像)が多用されている。3DCGでは過去のufotable作品の中でも作業量の多い作品となり、3D監督の西脇一樹を中心にufotableデジタル映像部が無限列車関連や血鬼術などのCG制作を担当した。無限列車の外観モデルはテレビアニメ1期にて本作の制作を想定して作成された3Dモデルがそのまま使用されている。無限列車の外観モデリングはテレビアニメ1期で無限城の背景CGを制作したデジタル映像部の岩田宗一郎が担当。列車が走るシーンの外の森の風景に関しても大半がCGで制作されており、CGソフトウェアにはクオリティのほかにレンダリング時間の大幅な削減など作業効率を重視して、Unreal Engineが多用されている。岩田はこれまでUnreal Engineをufotable内で試していたスタッフでもあり、今回のソフトウェア起用にもつながっている。3DCGで制作された列車の走行シーンにおける森の風景は、列車の速度や風景の奥行きを再現するために多用され、劇中で数百カット起用されている。そのため、大量のCGカットを制作するための新たなシステムを一から構築している。 列車は客車が8両編成、各車両に乗客が大勢乗車しており炭治郎たちは列車内を何度も移動するため、作画作業の際に描き分けのミスが起きないように、演出の白井が中心となり各キャラクターの座席表やカットごとに登場人物が何車両目に居るのかを整理したエクセル表が作成された。これらの作業について白井は「作業の間違いがあればすぐに修正でき、質問にも答えられる社内スタッフ中心の制作体制の良さが出ている」と話している。列車内のアクション演出については、実際に空間をそのまま使用すると刀を振ればすぐに壁や座席に当たってしまうほど狭いため、内装のCGモデルを2パターン作成し、アクション用の拡張版内装モデルは通常のモデルよりも通路が広く設計されていた。拡張版内装モデルについては演出と3D監督の西脇で場面によって変わる内装の広さの違いに違和感を持たれないよう細かく調整をしている。戦闘に必要な車両の広さや肉塊がどのようについているかのイメージボードは白井が手掛けている。 夢のシーンはリアル寄りに描かれる炭治郎と煉獄の夢、コミカルに描かれる善逸と伊之助の夢でデザインの方向性を変えており、これらのシーンはufotable所属の若手アニメーターである石後夏奈、仲敷公美子、足立原美保子、出口亜紀、中澤健らがメインで担当している。 列車の屋根における炭治郎と魘夢の最初の戦いについては、作画監督をufotable所属の秋山幸児、原画を同じくufotable所属の木村豪と大曲健克が主に担当。また、機関室の屋根を破壊する伊之助や肉塊に全身を掴まれた伊之助を炭治郎が助けるアクションまでの原画は同じくufotable所属の山岡峻が担当した。 無限列車と融合した魘夢の肉塊に関しては作画・美術とCGによるハイブリッドな描写となっている。描写としては動かない肉塊は美術、動く肉塊はCGをベースに、刀に切られたり人物に触れたりする肉塊を作画で描いている。これらをひとつの画面で違和感なく共存させるために撮影監督の寺尾優一を中心にufotableデジタル映像部の撮影班が作画で描かれた肉塊とCGで描かれた肉塊を美術で描かれた肉塊と同じ見た目にして馴染むように質感を撮影処理で調整している。肉塊のCGはデジタル映像部の鉄炮塚大樹が中心となり作成。元作画部スタッフでもある鉄炮塚が作画を意識した肉塊の描写を制作している。中でも禰󠄀豆子の格闘シーンの肉塊は鉄炮塚自身が担当。以降のパートはufotableデジタル映像部の佐藤号宙と石田拓夢が担当しており、佐藤は炭治郎と伊之助の機関室での戦い全般の背景・肉塊のCG制作や同シーンにおける炭治郎と伊之助のアクションの3Dレイアウト、プリビズも全て担当。佐藤のレイアウトを元に魘夢戦の決着となる機関室の戦いの原画が描かれた。また、機関室の戦いで現れる肉塊の目は肉塊と目をいくつも自動的に生成するシステムを新たに作成。瞳のレタッチは演出の白井が担当している。 煉獄と猗窩座の戦闘以降は監督の外崎自身が絵コンテ・演出を担当。該当シーンのアクションについては絵コンテを描いている時点で各カットを担当するアクションアニメーターを決め、彼らの画風を想定して絵コンテを作成している。これらのシーンはufotable所属の國弘昌之、木村豪、阿部望が担当した。國弘はテレビアニメ1期にて第3話の錆󠄀兎との戦闘シーン、第14話の炭治郎と伊之助の戦闘シーン、第19話の水の呼吸『拾ノ型 生生流転』や累との戦いにおける『ヒノカミ神楽』の戦闘シーンなどを担当した経験があり、本作では煉獄と猗窩座の戦闘シーン全般のアクション原画を担当している。木村はテレビアニメ1期にて第26話の下弦の鬼の解体シーンにおけるアクションや多数のアクションカットを担当しており、本作では炎の呼吸『伍ノ型 炎虎』や破壊殺『乱式』等のアクションを担当。阿部はテレビアニメ1期では『雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃』のシーン全般や第19話の『爆血』以降のシーンを担当しており、本作では炎の呼吸『玖ノ型 煉󠄁獄』を担当した。これらのアクションについては各アニメーターに表現方法は一任されており、総作画監督の松島も顔の表情や着物の模様以外の修正をほぼ入れず、各アニメーターのレイアウトや作風に任せている。 煉獄と猗窩座の戦闘の決着以降の原画はサブキャラキターデザインを担当する佐藤美幸、梶山庸子、菊池美花やufotable演出家の滝口禎一が担当。なかでも佐藤に関しては松島の直接の弟子でもあるため、レイアウトの段階から松島と共同でレイアウト・原画を描いている。佐藤は煉獄の母との思い出の回想明けから猗窩座の頚に刀を押し込むまでのカットを担当。猗窩座が森に逃亡してから炭治郎が叫ぶカットまでは滝口が担当。以降の炭治郎の嗚咽や表情は声優の花江の演技に合わせて梶山と菊池が原画を描いている。終盤の作画の一部は松島がレイアウト・ラフ原画を総作画監督修正という形で直接原画にしている。これらのシーンの作画では、涙の描き方について原作を意識して描いており、玉のような丸い涙になるように意識的に大きく描かれている。
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