深海探査船とは? わかりやすく解説

深海探査艇

(深海探査船 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/10 12:33 UTC 版)

しんかい6500
くろしお2号 - 青函トンネル建設時の海洋底の地質調査に活躍した
全周がアクリル樹脂製のJohnson Sealink
フランス海軍FNRS-3

深海探査艇(しんかいたんさてい、英語:Deep-submergence vehicle, DSV)とは、深海を探査する目的に供される潜水艇である。

構造

ここでは近年の艇の特徴を主として述べる。以前の類型などについてはバチスカーフの記事なども参照のこと。

球形の耐圧殻があり、蓄電池から電力が供給されるようになっている。乗組員の吐き出す二酸化炭素はアルカリ性の吸収剤で炭酸塩として吸収する。ビデオレコーダーカメラを備えている。

耐圧殻は以前は高張力鋼が用いられていたが、1980年代頃からはチタン製が主流となっている。また水深の浅い水域用には全周がアクリル樹脂でできているものもある。耐圧殻の安全基準に関して日本は他国よりも厳しいルールがあり、設計深度×1.5+300メートルという構造強度基準で、しんかい6500では水深10,050mの水圧に耐えられる耐圧殻の設計となっている一方、中国では国際標準化機構(ISO)部会に対し、6,000mの深度については適用圧力を設計潜水深度の1.1∼1.25倍でよいではないかと提案していて米国も設計潜水深度×1.25を適用圧力としている[1]。そのため、蛟竜の方が軽く、しかも大きな径の耐圧殻を装備しているにもかかわらず、潜航深度が大きい[1]

超音波で母船に画像や音声を送ることが出来るが、帯域が限られているので伝送容量に限界があり、動画を送る事は出来ない。デジタル圧縮技術の進展で以前に比べ、ある程度は改善されてはいるが、依然、この問題は解決されていない。そのため、使い捨ての光ファイバーを映像等の広帯域と必要とする伝送に使用する例があるが放棄された光ファイバーによる環境への悪影響が懸念される。

電動機無整流子電動機の技術確立後はこれが主流である。バッテリーは以前は銀亜鉛電池を用いており、充電時に亜鉛樹状結晶が成長し、セパレータに悪影響を与え、最悪の場合短絡するためサイクル寿命が短かったが、21世紀にはリチウムイオン電池が広まっている。高容量で低温でも放電特性が優れており、サイクル寿命が長い為、経費削減に寄与する。

浮力材には、バチスカーフではガソリンが用いられたが、現在ではシリカのマイクロバルーンをエポキシ樹脂で固めたシンタクチックフォームが用いられる。船体の傾斜を調整する為に従来は水銀が使用されていたが、近年ではシークリフやタートルのように水銀の代わりに数珠状につなげたタングステンのボールを移動させる事により重心を移動する機種もある。比重の重いタングステンのボールと半分は浮力材で出来たボールが連なっており片側にタングステンのボールが入り、同じ数だけ反対側のタンクに浮力材が入る事で移動した体積を補う。

運用中の潜水探査艇

1970年代までは各国で有人潜水調査艇が建造されたが、1980年代以降は遠隔操作無人探査機(ROV)の性能が向上し、有人潜水調査艇の建造数は一時期下火になっていたものの、近年、記録の樹立やレクリエーション用等、乗る事を目的として数々の新技術を投入した有人潜水艇の新たな建造例が散見される。遠隔操作無人探査機の支援母船等も含めた運用経費は同深度の潜水能力を持つ有人潜水艇と比較して1/10以下であるとされる。また、技術の進歩により、従来有人でなければ不可能だった分野でも無人機で可能になりつつある。また、タイタニック号の調査のように有人潜水艇から無人潜水艇を制御する運用も実施される。ケーブルでの操作を必要としない自律型無人潜水機も開発され、長距離の連続航行が可能となった。

過去の潜水探査艇

脚注

関連項目

外部リンク


深海探査船

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 09:39 UTC 版)

深海」の記事における「深海探査船」の解説

各国所有する主な深海探査船には次のようなものがある。 しんかい 6500 詳細は「しんかい6500」を参照 日本所有する有人深海探査船は「しんかい2000」と「しんかい6500」である。「しんかい2000」は 2003年引退し、現在は「しんかい6500」だけが稼動している。 「しんかい6500」はその名のとおり、水深6,500メートルまでの潜航が可能である。3名搭乗できるが、うち2名はパイロットで、オブザーバー呼ばれる深海調査を行う学者は1名だけ搭乗できる。およそ秒速0.7メートル潜水し水深6,500メートルまで2時間ほどで到達する一度潜航時間は9時間程度である。 かいこう 詳細は「かいこう」を参照 日本所有する直接搭乗員はおらず母船とはケーブルつながった状態で深海探査を行う無人深海探査機としては「かいこう」「UROV7K」「ディープ・トウ」「ハイパードルフィン」などがあり、もっとも深く潜航できるのが「かいこう」である。 「かいこう」はもともと、「ランチャー」という親機と「ビークル」という子機からなっていた。これら2つつながった状態で水深7,000メートルまで潜航し、さらにビークル分離することで、世界のどの探査機より深い水深11,000メートルまで潜航することができた。しかし2003年ケーブルが切れ、ビークルを失う事故発生したこのため現在は別の無人探査機「UROV7K」を改造してビークル代用充てている。なお「UROV7K」の潜航深度が7,000メートルであるため、現在は「かいこう7000」として運用中である。7,000メートルであっても潜航深度としては現存する世界のどの探査機よりも深い。「かいこうランチャー自体は現在も11,000メートルまで潜航可能であるが、ランチャーには探査機能がないゆめいるか 詳細は「ゆめいるか」を参照 日本所有する自立無線探査機である。ケーブル接続による操作を必要とせず、長時間航行し続けることができる。同じく自立型の「うらしま」は317キロ連続航行成功した。「ゆめいるか」はおもに海底資源調査行い、「じんべい」「おとひめ」はおもに地球環境調査を行う。 アルビン 詳細は「アルビン号」を参照 アメリカ合衆国所有するアルビン号は、水深 4,500メートルまで潜航できる有人深海探査船である。パイロットは1名のみでオブザーバーが2名の計3名が搭乗できる。 1964年完成の古い探査船だが、耐久性優れいまだに現役であり、これまで数々発見をしてきた。世界中の深海探査船の潜水時間をすべて合計してアルビン潜水時間及ばないミール 詳細は「ミール (深海探査艇)」を参照 ミールといえばロシアがかつて所有していた宇宙ステーション有名だが、ここで挙げるのは同名有人深海探査船である。6,000メートルまで潜航でき、深海に沈むタイタニック号撮影したことでも知られる。 バチスカーフ・トリエステ 詳細は「トリエステ (潜水艇)」を参照 スイス設計され1953年進水したバチスカーフ・トリエステは深度10,900メートルまで潜った有人潜水艇として知られている。しかし「安全に深く潜ること」に重点をおいた潜水艇だったため、のちに開発され潜水艇比べると、持続性汎用性の面では劣っていた。 ディープシーチャレンジャー 詳細は「ディープシーチャレンジャー」を参照 ディープシーチャレンジャー(英語:Deepsea ChallengerDCV 1) は、世界で最も深い海の底として知られるマリアナ海溝チャレンジャー海淵到達するために設計され有人深海探査艇である。2012年3月26日カナダ人映画監督であるジェームズ・キャメロン操縦により最深点に到達した

※この「深海探査船」の解説は、「深海」の解説の一部です。
「深海探査船」を含む「深海」の記事については、「深海」の概要を参照ください。

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