檀君陵の問題点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/27 00:59 UTC 版)
中国東北部の青銅器時代の典型的遺物である琵琶形銅剣とシャムシールと美松里式土器の使用開始年代は紀元前10世紀であり、朝鮮半島では紀元前8世紀から紀元前7世紀にかけて発展したとみるのが中国と韓国の考古学界の一般的な見解であり、韓国の講壇史学は「檀君朝鮮は歴史ではなく、神話にすぎない」と批判しており、発掘された檀君陵は5世紀の高句麗の典型的な石室封土墳であると疑義を呈しており、檀君陵から高句麗時代の遺物が出土した理由を回答しない限りは、檀君陵は史実とはみなせないと批判している。 李基白(朝鮮語版)(朝鮮語: 이기백、西江大学)は、「紀元前31世紀に古朝鮮を建国したという主張は成立しません。国家が形成されるには青銅器時代が必要です。朝鮮の青銅器時代は遡っても紀元前12世紀です。古朝鮮領域で発見された琵琶形銅剣がその時代のものです。それ以前は新石器時代であり、世界の歴史において、新石器時代に国家を形成した事例はありません」「電子スピン共鳴測定法は、約10万年以前の旧石器時代の遺物の測定に使用しており、5000年以前程度の試料では、正確な年代測定が期待できません。李鮮馥(朝鮮語: 이선복、英語: Yi Seon-bok、ソウル大学)氏は、5000年以前程度の遺骨なら放射性炭素年代測定による測定がより正確な結果を期待できるのに、電子スピン共鳴測定法を使用したことに疑義を呈しています。放射性炭素年代測定による測定で高句麗時代の『幼い遺骨』であることが判明したので、開発段階にあり、測定結果の操作を比較的容易にできる電子スピン共鳴測定法を使用したのではないかと疑っています」と述べている。 北朝鮮は、檀君陵のなかから金銅冠の破片が発掘されたと発表している。これについて李基白(朝鮮語版)(朝鮮語: 이기백、西江大学)は、「紀元前30世紀に平壌一帯で青銅器を製作していただけでなく、めっきという驚愕すべき技術を有していたことになる。事実なら中国が黄河流域で青銅器を製作したときよりも、1000年以前に朝鮮半島で高度な金属文明が存在したことになり、人類の歴史を新たに書き直す大発見です。李鮮馥(朝鮮語: 이선복、英語: Yi Seon-bok、ソウル大学)氏は、事実である可能性はないとして、発掘された金銅冠は5世紀の高句麗式金銅冠と推定しています」「青銅器時代以降であることが国家の成立条件であり、古朝鮮の建国年代は紀元前10世紀とみるしかありません」「朝鮮人の先祖が新石器時代に国家を建国したと主張するのは、子供が生まれてすぐに走り回り、学校に行き、結婚したという主張と同様です。そんな主張をすると、世界の笑いものです。それは韓国が学問未開国になるということです」と述べている。 李鮮馥(朝鮮語: 이선복、英語: Yi Seon-bok、ソウル大学)は、檀君陵の問題点を以下指摘している。 発掘された遺骨が仮に5000年以前の人物の遺骨だとしても、その遺骨が檀君の遺骨であることが立証できていない。 檀君陵に関する最も古い史料は16世紀に編纂された『新増東国輿地勝覧』であるが、それを含む全ての史料は「伝承によると檀君陵であるという」という形態で伝承を引用しており、5000年の歳月をかけて古人の墳墓の位置が正確に伝承される可能性はない。 「檀君骨」の年齢は6ヶ月にわたり電子スピン共鳴測定法により測定した結果、5,011±267年以前という結果が得られたというが、電子スピン共鳴測定法は1980年代以後研究された方法であるため開発の初期段階にとどまり、理論上の制約と技術的限界から概ね10万年以前の旧石器時代の遺物に応用されており、5000年以前程度の「幼い史料」の分析では正確な年代測定が期待できない。 墳墓から発掘された金銅冠の破片が檀君時代のものであるという主張は、紀元前30世紀に平壌一帯で青銅器を製作していただけでなく、めっきという驚愕すべき技術を有していたことを意味し、人類の歴史を新たに書き直さざるを得ない大発見である。 檀君陵の築造様式は5世紀の高句麗の典型的な石室封土墳であるという批判に対して北朝鮮学界は、「高句麗人が427年に首都を集安から平壌に移したが、そのとき檀君の墳墓を高句麗式に改築した。その根拠として5世紀の高句麗の国内城地域の古墳壁画を挙げることができ、この古墳壁画にはクマとトラが登場する。猟師が矢を射るクマとトラの姿は檀君神話を象徴したものであり、既に高句麗時代に檀君崇拝の儀式があった」と反論している。一方、이도학(韓国伝統文化大学(英語版))は「高句麗人は天孫思想があり、高句麗の始祖である東明聖王を崇拝したが、檀君や古朝鮮に対する認識は有しておらず、高句麗時代に作り直したという根拠をみつけるのは難しい」と再反論している。 盧泰敦(朝鮮語版)(朝鮮語: 노태돈、ソウル大学)は、北朝鮮が発掘した檀君陵は、高句麗時代の古墳であり、墓様式からみると早くとも4世紀以後のものであり、北朝鮮は復元した檀君陵を歴史的事実として歴史を再構築しており、合理性と客観性が欠如した論理で学問体系を歪めており望ましくない、と述べている。
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