榎本武揚 (小説)
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『榎本武揚』(えのもとたけあき)は、安部公房の長編小説。前衛的な作風の多い安部文学の中では異色の歴史小説である。北海道厚岸に住む元憲兵の旅館の主人から、ある古文書を送られた「私」が、徳川幕府海軍副総裁・榎本武揚の実像を追っていく物語。榎本暗殺を目論んだ元新撰組隊士の告発文を頼りに、榎本の「裏切り」と「変節」の過程の真相を、五稜郭の戦いの時期の動きから追求しつつ、世間が「勤皇」か「佐幕」かと騒ぐ中、そのどちらでもない立場があることを信じた榎本の姿を独自の視点で描いている[1]。戦時の忠誠を咎められることを拒否する元大日本帝国陸軍憲兵の心情と、幕末の榎本の「裏切り」の物語を入れ子構造の構成で関連させながら、時代と人間との関係性、「忠誠」「転向」とは何かを問いかけた作品である[2]。
- ^ a b c d e 安部公房「幕末・維新の人々」(東京新聞 1964年6月6日号に掲載)
- ^ a b c d e 安部公房(聞き手:石田健夫)「〈“戯曲が認められて…”〉「東京新聞」談話記事」(東京新聞夕刊 1967年9月23日号に掲載)
- ^ 「作品ノート18」(『安部公房全集 18 1964.01-1964.09』)(新潮社、1999年)
- ^ a b 安部公房(三島由紀夫との対談)「二十世紀の文学」(文藝 1966年2月号に掲載)。三島由紀夫対談集『源泉の感情』(河出書房新社、1970年)に所収。
- ^ 「作品ノート18」(『安部公房全集 21 1967.04-1968.02』)(新潮社、1999年)
- ^ a b 安部公房「『榎本武揚』について」(中央公論 1967年10月号に掲載)
- ^ a b c 河野基樹「戊辰 函館五稜郭の文学――佐幕・転向・プロレタリア リアリズムをめぐる物語――」(埼玉学園大学紀要、2006年)
- ^ a b 武井昭夫「危機意識の欠落」(新日本文学 1966年2月号に掲載)
- ^ a b c 安部公房(磯田光一との対談)「日常生活の発見」(東京出版販売「新刊ニュース」 1967年11月15日・No.134)
- ^ a b c d 安部公房(伊藤整との対談)「人間関係におけるアレルギー反応」(現代演劇協会「雲」1967年9月20日・14号に掲載)
- ^ 松原新一「安部公房と転向論――二つの『榎本武揚』」(國文學 1972年9月臨時増刊号に掲載)
- ^ a b 中野孝次「解説」(文庫版『友達・棒になった男』)(新潮文庫、1987年)
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- 2 榎本武揚 (小説)の概要
- 3 登場人物
- 4 おもな刊行本
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