核兵器の保有について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 23:15 UTC 版)
「イスラエル国防軍」の記事における「核兵器の保有について」の解説
「イスラエルの大量破壊兵器」も参照 国際的にはイスラエルが核兵器を保有していることは確実視されている。核兵器保有は建国直後から計画され、1960年代からフランスの協力を得て開発が始まり、最初の実戦配備は第三次中東戦争中に当時の首相レヴィ・エシュコルの命令により行われたとされている。1973年の第四次中東戦争においては、開戦当初の劣勢を懸念して13個の20キロトン級核爆弾が配備されたとされるが、この当時は投射手段が無く、核地雷として自国領土内で侵攻側機甲部隊を目標に使用される予定であったという。 イスラエルは核拡散防止条約(NPT)への加盟を拒否し続けているが、周囲のアラブ諸国全てが加盟しているNPT体制の崩壊は望んでいない。人口が圧倒的に少ないイスラエルにとって、核兵器はアラブ陣営との全面対決においては切り札となるが、その一方で保有を認めた場合にはアラブ諸国の核兵器開発、あるいはNPT脱退の理由となってしまう。そのために曖昧戦略と呼ばれる「保有を認めも否定もしない」方針を採っている。 イスラエル国防軍が保有する核兵器の種類およびその数については複数の説が存在する。全米科学者連盟(FAS)では100から200個の核弾頭が存在すると推定し、航空機(A-4スカイホーク、F-4ファントムII)および弾道ミサイル(ランス、ジェリコー・ミサイル)によって運用されるとしている。ジェリコーIIミサイルは1,500から4,000 kmの射程を有しており、ロシアの一部、イラン、リビアを射程におさめている。 更にイスラエル海軍の保有する3隻のドルフィン級潜水艦が、魚雷発射管から発射される方式の核装備巡航ミサイルを搭載しているとの憶測が飛び交った。このミサイルは1,500kmの射程を持つとされ、2000年5月にスリランカ沖で発射テストが行われたと言われている。これは同潜水艦が異常に大口径の魚雷発射管(既知の西側諸国のいかなる魚雷よりも大きい)を持つ事から生じた憶測であると思われるが、一部の軍事アナリストは潜水艦のロジックからしてそうした運用は不可能であると否定しており、前述の発射テストの具体的な証拠も示されていない。 前述の通り、イスラエル政府は公式に核兵器保有を認めたことは無い。しかし1986年、同国の元核技術者モルデハイ・ヴァヌヌにより、イスラエルの核開発計画の詳細が英国にて公にされた。ヴァヌヌはその後イスラエル諜報特務庁(モサド)に拘束され、イスラエルで反逆罪の有罪判決を受け服役、2004年に釈放された後イスラエルで監視下に置かれながら生活している。この暴露事件自体、非公式な形で核保有を公にして周辺アラブ諸国に対する核抑止力を発揮させる目的で、イスラエル当局が仕組んだ物であるとする意見もある。 2007年には、首相エフード・オルメルトがドイツのテレビ局とのインタビューにおいて核保有を一度認めたととれる発言をし、直後に撤回する椿事が起きている。また2008年5月、在任中にキャンプデービッド合意締結など同国とエジプトとの和平に尽力した元米大統領ジミー・カーターが、イギリスでの記者会見でイスラエルの150発以上の核保有を認める発言を行ったと報じられている。核兵器廃絶路線に舵を切った米国のバラク・オバマ政権は国務省のローズ・ゴットミューラー次官補を通して2009年5月にイスラエルへ核拡散防止条約加盟を呼びかけたが、この提案を拒否した。これは在職中の米国高官が公にイスラエルの核保有に言及した初めての例である。
※この「核兵器の保有について」の解説は、「イスラエル国防軍」の解説の一部です。
「核兵器の保有について」を含む「イスラエル国防軍」の記事については、「イスラエル国防軍」の概要を参照ください。
- 核兵器の保有についてのページへのリンク