本書の特徴とは? わかりやすく解説

本書の特徴

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 01:50 UTC 版)

アルファフリー」の記事における「本書の特徴」の解説

本書1869年ドイツ東洋学者アールヴァルト Wilhelm Ahlwardt (1828年1909年)の抄訳紹介によってヨーロッパで知られるようになり、1895年フランスのドランプール Hartwig Derenbourg による完本校訂本1910年同じくアマル M. Émil Amar によるフランス語完訳出版され1957年にはホワイティング Charles Edward Jewell Whitting が英訳した本書でイブン・アッティクタカーは当時流布していたハリーリーやバディーウッザマーン・ハマザーニーの『マカーマート』比較し、これらマカーマ文学智恵工夫経験などについて語っているものの有益な部分ありながら往々にして品性卑しくするような有害な部分ばかりが目立っていることを指摘して批判し本書アッバース朝時代詩人アブー・タンマームAbū Tammām(805年 - 845年)の『ハマーサ詩集』(al-Ḥamāsa)に比するような「政治原理統治の手立てとして有益なもの」であると唱っている。また、シーア派では特に主要文献として学ばれていたイマーム・アリー言行集めたハディース集『ナフジュル=バラーガ(Nahj al-Balāgha)』や、ウトビー Abū Nar al-ʿUtbī が著したガズナ朝のスルターン・マフムードの伝記『ヤミーニー史』(Ta'rīkh al-Yamīnī)とも比較しており、これらはいずれ正則アラビア語修辞技巧凝らした模範とすべき作品であること、加えて前者宗教上の規範神学学べ作品であり、後者面白智慧君主独創的な生涯記述した事で優れた特徴有している点を評価しつつも、時に文学的であるがゆえの誇張が過ぎる場合もまま見られるため、それらと比較した場合本書君主品行政治論について述べるという目的のための表現簡潔性にも配慮している点に優れていることもほのめかしている。 本書ヨーロッパ紹介されてから、ヨーロッパにおける「君主鑑」文学との比較や、ペルシア語文芸史上のアンダルズ文学アラビア語文芸のアダブ文学などイスラーム世界での「君主鑑」文学における位置づけになどが論じられて来た。イギリスイスラーム思想史研究者ローゼンタール Erwin Isak Jakob Rosenthal は、正確な歴史的記録公正な事実評価期待する事は出来ないものの、精彩変化に富んだ文体言葉遣いによって、支配者やその大臣達の言行当時物語作者詩人達にどのような生々しい印象与えたのか、今日の我々に提供していると述べ、「この作者支配者必要な資格支配者行動、し覇者進化の関係支配者対す臣下の諸義務に関してモラリストとして助言与えている」と評しており、イスラーム政治思想史上からも詳細な分析行っている。 また、注目すべき点として、第1章では公正で寛大な君主として古代諸王預言者カリフたちに混じってアイユーブ朝初代君主サラーフッディーンモンゴル帝国第2代皇帝オゴデイも「公正な君主」としてたびたび称讃されている。著者イブン・アッティクタカーは14世紀初頭代表するシーア派指導者ひとりであるが、第2章王朝各論」で見られるように、本書では正統カリフ4人やウマイヤ朝アッバース朝カリフたちについても自他宗派相違問題とせず、統治有様統治者としての品行資質についてのみを問題にしている点でユニークな作品である。日本においてもアラビアンナイト日本語訳出した前嶋信次は、イブン・ムカッファの『カリーラとディムナ』、カイ・カーウースの『カーブース・ナーマ』(Qābūs Nāma)、ガザーリーの『君主たちへの勧め』(Naṣīhat al-Mulūk)やマーワルディー Abū al-Ḥasan ʿAlī al-Māwardī (974?-1058年)の『統治の諸規則al-Aḥkām al-Sulṭānīyya wa al-Wilāyāt al-Dīnīyya)』、あるいは後代サアディーの『薔薇園』『果樹園』などのイスラーム学者文人たちが著して来た一連の政治論や「君主鑑」文学等の紹介のなかで本書取り上げており、日本歴代天皇徳川家康などの為政者達の間で読み継がれて来た『貞観政要』との比較研究必要性説いている。著された年代1302年という『集史』の編纂が始まるイルハン朝ガザン・ハン治世下であるイラク地方であり、モンゴル帝国研究上からも本書は内容加えてモンゴル時代という東西超えたこの時代の独特の雰囲気についても考えてみるべきではないか」との時代史的・文化史的にも注目すべき作品との指摘もされている。

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